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フランク・ディレイニー 『ケルトの神話・伝説』 鶴岡真弓 訳

「癩病者として物乞いをしながら、トリスタンはさまざまな人間に出会うことになった。棒で彼の頭を手ひどく叩く旅人たちがいた。罵声も浴びせられた。しかし気前よく施しをしてくれる人もいた。」
(フランク・ディレイニー 『ケルトの神話・伝説』 「トリスタンとイゾルデ」 より)


フランク・ディレイニー 
『ケルトの神話・伝説』 
鶴岡真弓 訳


創元社
2000年9月20日 第1版第1刷発行
390p
四六判 丸背紙装上製本 カバー
定価2,800円+税
装幀: 上野かおる
カバー画: 妖精の騎士たち(ジョン・ダンカン)



本書「〈ケルト〉の読み方」(鶴岡真弓)より:

「本書は、フランク・ディレイニー Frank Delaney の著作 Legends of the Celts (Hodder & Stoughton, London, 1989)の全訳です。」
「本書にはアイルランドからウェールズまでの重要な神話と伝説が語られているわけですが、まさに本書の特色とは、ディレイニーというひとりの人物が、(中略)すべてのストーリーを、そらんじているごとく、全編を「語って」いることです。つまり本書は単に既存のケルトの神話や伝説のテキストを再編した性質の書物とは違い、著者ディレイニー自身が、ひとつの螺旋的な動力となって、私たちの目の前で語っているというところにあります。」
「ですから話の細部には、いきいきと「語る」使命感をもつディレイニーによって演出されたところもありますし、皆さんが知っていたテキストとは異なるヴァージョンが採られている物語もあるのです。」
「神話や伝説がその土着のものを唯一純粋に伝えている、という信念は、じつは近代的な産物でありました。」
「彼の驚くべき記憶力と表現力は膨大な「物語」を前にして疾走し、「語り」のゆらぎや冒険こそを体現しています。」



本書は日本の古本屋サイトで800円で売られていたので注文しておいたのが届いたのでよんでみました(4,000円以上購入で送料無料)。使用感のないきれいな古本でしたがカバーにやや背焼け(色褪せ)がみられました。


ディレイニー ケルトの神話と伝説


帯文:

「螺旋(らせん)的再生の構造が映しだす
ケルトの世界と夢と愛のかたち」



帯背:

「現代の語り部が贈る
ケルト伝説の決定版」



目次:

ケルト伝説への誘い

第1部 アイルランドの伝説
 アイルランド国造りの神話――『来寇(らいこう)の書』
 勝者の分け前――ブリクリウの宴
 コルマクの黄金の杯
 マク・ダトーの豚
 エーダインへの求婚
 デルドレとウシュネの息子たち
 ディアルミドとグラーネの恋物語
 オシーンの常若(とこわか)の国

第2部 〈牛捕り(トイン・ボー)伝説〉の白眉
 クアルンゲの牛捕(と)り

第3部 ウェールズの伝説
 ダヴェドの領主
 シールの娘ブラヌウェン
 シールの息子マナウアザン
 グウィネズの領主マース、マソヌイの息子
 マクセン帝の夢
 シーズとセヴェリスの物語
 キルフフとオルウェンの物語
 フロナブイの夢
 泉の貴婦人

第4部 〈アーサー王伝説〉の系譜
 トリスタンとイゾルデ

〈ケルト〉の読み方 (鶴岡真弓)




◆本書より◆


「ケルト伝説への誘い」より:

「アイルランドのP・マッカーナ教授の言うように「古代のケルト人は、民族集団というよりもむしろ文化集団のひとつ」であった。」


「アイルランド国造りの神話」より:

「パルトローンの治世の間、フォウォレ族という邪悪で姿の見えぬ者たちが、時が始まって以来ずっと空を漂い、この国を苦しめていた。パルトローンは来る日も来る日もこの者たちと戦って追い払おうとした。この敵を抑えるためにパルトローンたちは武器を取って勇猛果敢に戦った。ところが最後には、フォウォレ族ではなく疫病が猛威をふるってパルトローンや従者たちの命を奪い、生き残ったのはパルトローンの従兄弟のトゥアンという男ただ一人だった。トゥアンは、同胞が疫病に倒れ、死体が大平原を埋め尽くしていくのを見て、山奥へ逃げ込んだ。洞窟の奥に隠れて、狼や熊から逃れ、冬の寒さから身を守り、二〇年もの間岩場にこもっていた。この隠れ家から、耕されることのなくなった田畑が自然の草原に戻っていく様子を見ていた。」

「そしてついに、フォウォレ族最強の悪者、〈邪悪な目〉とあだ名される片目のバロルがやって来た。獰猛きわまりないバロルの名を口に出すだけで、どんな者でも震え上がった。その大きく湿った瞳のまぶたは四人がかりの手でやっと開き、その瞳でにらまれた者は死んで粉々になってしまうのであった。」



「勝者の分け前」より:

「またこの部屋には、館の他のどの場所にも見あたらないものがあった。ガラス窓である。窓の一つはある角度で壁にはめ込んであり、そこからのぞき込むと、ブリクリウは寝椅子に寝ころんだままで、館の中で起こっているあらゆる出来事をつぶさに見ることができた。」


「オシーンと常若の国」より:

「オシーンは尋ねた。「この国にはこのような果樹園がいくつあるのですか。」
 「必要なだけあります。果物は枯れることがなく、病気にかからず、摘むとすぐに枝に新しいものがなるのです。」
 オシーンは次に東を指して言った。「向こうには何があるのですか、あの山の向こうには。」
 ニアヴは答えた。「この国の農場があり、そこに民が住んでいます。」
 「何を作っているのですか。」
 「夢です。」
 「あそこには何があるのですか、あの山脈の向こうには」と、何本もの川が激しく流れ下ってくる、西方の紫の峰の連なりを指して尋ねた。
 「静寂の国です。人々はそこへ出かけて、存在の神秘について瞑想するのです。」
 「どういう人が静寂の国へ出かけるのですか。」
 「静寂が大切であると思う人なら、誰でも行けます。もちろん、そう思うからといって、王国の他の土地には楽しみがない、好きでないということではありません。」
 「静寂の国では何が起こるのですか。いったいどんな所なのですか。」
 「なにも起こりません。あらゆるものが静かで快いのです。その中で、目を伏せて座ります。そうすると大地の表面に、輝きと影、鮮やかな色彩と暗黒が散りばめられているのが見えます。自分の生命が目の前を流れ、やすらかな気持ちで世界を瞑想することができるのです。瞑想を妨げるものはなにもなく、彼らの魂は、自らが選んだ静寂を反映するように皆から愛されるようになります。上を見れば色と模様が満ち満ちていて、目に心地よく、心は生き生きしてくるのです。」
 オシーンは尋ねた。「静寂の国にはどのくらいいられるのですか。」
 ニアヴは答えた。「ここには時間というものはありません。このことをよく理解してください。時の感覚がないのです。全くないのです。もしもあなたが、朝の颯爽として温かくなり初める空気や澄んだ光とともに、一日が始まってほしいと思えば、その時があなたの一日の始まりです。もしも、小さな生き物が薮の中でカサコソと動く暑い昼下がりの静けさが欲しいと思えば、そのようになります。もしも、ビロードのような暗闇と銀の星々の夜を過ごしたいと思えば、日が暮れます。この地では一人一人にそれぞれ自分だけの時間があり、それ以外の時間はないのです。すべての人にとって時間とはそのようなものなのです。」
 「常若の国は、どのくらいの大きさですか。」
 「あなたのお望みしだいです。海よりも広くなり、森の空地よりも小さくなります。大空よりも大きくなり、石の下の蟻の巣に入るくらい小さくもなります。」」



「マクセン帝の夢」より:

「マクセンは夢を見たのだ。あたかも彼が実際に旅をしているかのような夢を。」
「マクセンは金の椅子に座る少女を見た。少女の美しさは、まるで太陽のようにマクセンの眼を眩ませた。」
「夢から覚めたマクセンは心穏やかではなかった。片時たりとも少女を忘れることができなかったのだ。何事にも関心をもてなくなり、以前ならば心から楽しんだワインにも音楽にも興味を示さなくなってしまった。廷臣たちは、彼が四六時中眠りを求めているようにみえた。まことに、眠りの中では妨げられることなくマクセンは夢見ることができるのだ、漆黒の錦織(ブロケード)を着た少年たちや、鷲の彫刻がほどこされた象牙の椅子に座っている白髪の老人とともにホールにいる少女を。
 ついに最長老の家臣が皇帝を諫めた。
 「陛下、王たちはひどく動揺している様子でございます。このままでは謀反を起こしかねません。」
 「なぜだ」マクセンは物憂げに尋ねた。
 「陛下が統治をなさらないからでございましょう。陛下は諸王に対する皇帝としての職務を果たしておられませぬ。(中略)彼らは陛下になにも申し上げない代わりに、陛下のお言葉も聞きますまい。」
 「ローマじゅうの賢者を集めるのだ。彼らに我が憂いを包み隠さず話そう。」
 マクセンはかつてのような気魄で賢者たちに夢の話をした。いかに彼の魂が夢の中の少女に捕えられてしまったかを告白した。そしてそれぞれが知恵を出し合うよう求めた。その結果、夢の中の少女の消息をたしかに得られるはずの三つの地方に、三年の間使者を送ることになった。
 しかしこれはうまくいかず、それから一年後マクセンはもっと深い絶望の淵に沈んでいる。そこで長老格の王の一人が、マクセン自ら少女探索の旅を始めるように勧めた。」



「トリスタンとイゾルデ」より:

「癩病者として物乞いをしながら、トリスタンはさまざまな人間に出会うことになった。棒で彼の頭を手ひどく叩く旅人たちがいた。罵声も浴びせられた。しかし気前よく施しをしてくれる人もいた。」




この本をよんだ人はこんな本もよんでいます:

内田善美 『星の時計の Liddell ①』 (全三冊)
高橋富雄 『もう一つの日本史 ― ベールをぬいだ縄文の国』
































































































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Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
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Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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