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A・ビアス 『悪魔の辞典』 奥田俊介・倉本護・猪狩博 訳 (角川文庫)

「LEARNING, n. 【博識】 学問に励む者に特有な一種の無知。」
(A・ビアス 『悪魔の辞典』 より)


A・ビアス 
『悪魔の辞典』
 
奥田俊介・倉本護・猪狩博 訳 
角川文庫 3139/赤 364-1


角川書店
昭和50年4月10日 初版発行
昭和53年4月20日 10版発行
442p
文庫判 並装 カバー
定価420円



本書「解説」より:

「本書は全集版『悪魔の辞典』の全貌を伝えてはいるが、一部省略があり、完訳とはいいがたい。より深く『悪魔の辞典』を探りたい方は、是非とも増補版の数多い定義までのせてある創土社版をお手に取っていただきたい。」
「定義は「A」から「E」までは奥田が、「F」から「M」までは倉本が、「N」から「Z」までは猪狩が分担して翻訳した。」



ビアス 悪魔の辞典


カバーそで文:

「この本に集められた警句を読めば、読者は思わずニンマリするに違いない。ポーの再来といわれ、芥川龍之介の「侏儒の言葉」にも大きな影響を与えた短編の名手ビアスが、“インク代りにニガヨモギの汁を使用した”といわれた筆致で、現代文明と人間性を、鋭い風刺と痛烈な皮肉で描く。現代人必読の書。」


内容:

凡例


悪魔の辞典
 A~Z

解説 (奥田俊介)
参考文献
年表
 



◆本書より◆


「ACCIDENT, n. 【偶然】 永遠に変わらざる自然法則の作用により生じた不可避の事件。」

「BIGOT, n. 【偏屈もの】 君の受け入れぬ意見を執拗(しつよう)にしかも熱狂的に信奉する奴。」

「DICTIONARY, n. 【辞典】 一つの言語の成長を阻止し、その言語を固定した融通の効かぬものにするため工夫された邪念のこもった文筆にかかわる装置。ただし本辞典はきわめて有益な作品である。」

「HIBERNATE, v. 【冬ごもりする】 家庭に引きこもって冬を過ごすこと。さまざまな動物の冬眠については、多くの驚くべき俗説が伝えられている。熊は冬の間ずっと冬眠し、機械的に自分の足をなめては生きてゆく、と多くの人は信じている。そして熊は、春になると隠れ家からすっかり痩(や)せ細った姿を見せ、地上に影が映るようになるまでには、二倍も食べねばならない事実が認められている。三、四世紀前、イギリスでは燕たちが、冬の間小川の底の泥の中に球のように固まり、くっつき合って過ごしたという事実ほどよく立証されたものはなかった。だが燕たちは、小川の汚染のためにこの習慣を明らかに断念しなければならなくなったのだった。ソッス・エスコビウスは中央アジアで一国民全部が冬ごもりするのを発見した。ある研究者たちによれば、四旬節の断食行為は本来冬眠の修正された形だったと考えられている。それに対して教会は宗教的意義を付加したのだ。」

「IGNORAMUS, n. 【無学な人】 あなたが良く知っているある種の知識には暗いのに、あなたが何も知らないある他の種類の知識に明るい人間。」

「IMAGINATION, n. 【想像力】 詩人と嘘つきとで共有して、事実を納めておく倉庫。」

「IMMORAL, adj. 【不道徳な】 不適当な。結局のところ、大多数の場合について、人々が通常不適当であると考えるものはすべて、誤った、邪悪な、不道徳なものと見なされることになる。」

「INFANCY, n. 【幼年期】 ワーズワース(イギリスのロマン派詩人。1770―1850)によれば、「われわれの周囲を天国が囲んでいる」人生の一時期。だがその時期を過ぎれば早くも世界はわれわれに嘘をつき始めるのだ。」

「IRRELIGION, n. 【無宗教】 世界のもろもろの偉大な信仰の中でももっとも重要な信仰。」

「LEARNING, n. 【博識】 学問に励む者に特有な一種の無知。」

「LOCK-AND-KEY, n. 【錠と鍵】 文明開化を特色づける装置。」

「MAD, adj. 【狂気の】 高度に知的独立という病気に冒された。(中略)大多数の者と反目する。(中略)ある人々を気違いだと宣告するのが、自分自身正気である証拠が何一つない役人たちであるということは、注目に価する。たとえば、このように言っている本辞典の(有名な)編集者は、この国の精神病院の入院患者と同様、自分が正気であるという固い信念を持っている。しかしながら、自分では高尚な仕事を全力を尽くしてやっているつもりでも、実際は精神病院の鉄窓を両手でたたきつづけつつ、おれはノア・ウェブスター(有名な辞書編集者、著述家。1758―1843)だとわめきたて、多くの思慮のない見物人たちを無邪気に喜ばせているのかもしれない。」

「MAGNITUDE, n. 【大きさ】 寸法。大きさというものは純粋に相関的なものであるから、何一つ大きなものもなければ、何一つ小さなものもないわけである。もし仮にこの宇宙のすべての物が千倍もの大きさに拡大されたとすれば、何一つとして、それが以前あったより大きくなったものはない。だがもし一つの物だけ変わらずにあったものがあれば、その他の物は、それが元あったよりも大きくなったことになろう。大きさと距離との関係をよく理解すれば、天文学者の宇宙と大きさは、顕微鏡使用者のそれらと同様感動を与えるものではないであろう。おそらく、その目に見える宇宙というものは原子の小部分で、その構成要素であるイオンと共に、ある動物の生命流動体(ライフ・フルイド)(発光性のエーテル)のなかに浮かんでいるのかもしれない。もしかしたら、われわれ自身の血液の多くのリンパ球に住んでいる微生物たちも、その自分のいる世界から別の世界までの想像を絶する距離を思う時、それ相応の感動に打たれるのであろう。」

「MAN, n. 【人間】 これが自分の姿だと思う姿に、ひとり恍惚(こうこつ)として思いふけり、当然あるべき自分の姿を見落とす動物。その主要な仕事は、他の動物たちと、自分の属する種族を絶滅することである。しかし、人間は注目に価する早さで増加し、地球の住める場所ならどこでも、カナダにまで、はびこる始末である。」





Devil's Dictionary by Ambrose Bierce







































































































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