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リュック・ブノワ 『秘儀伝授』 有田忠郎 訳 (文庫クセジュ)

リュック・ブノワ 
『秘儀伝授
― エゾテリスムの世界』 
有田忠郎 訳
 
文庫クセジュ 592

白水社
1976年2月5日 第1刷発行
2003年9月10日 第7刷発行
147p 主要参考文献iii
新書判 並装 カバー
定価951円+税
装丁: 田淵裕一
欧文デザイン: 牧かほり



本書「訳者まえがき」より:

「翻訳ははじめ一九六三年の初版によったが、訳了後一九七五年出版の改訂四版が送られてきたので、それに従って修正を施した。別に著者から(中略)若干の訂正が指示されていたので、これもすべて取り入れた。」
「エゾテリスム(ésotérisme)という語は、ギリシア語の esôterikos (内側の)を語源とし、(中略)門外不出の教理の総体をさすもので、一般に「秘教」という訳語があてられるが、かならずしも熟していないため、表題としては、密儀的典礼を伴う知識の授受をあらわす initiation の訳語の一つ「秘儀伝授」を用い、副題中に「エゾテリスム」の語を入れた。」
「内容は御覧のとおり、エゾテリスムの一般概念と個々の歴史的形態を述べたもので、通論として行きとどいた書物と言えよう。」



Luc Benoist, L'ésotérisme (Collection QUE SAIS-JE? No1031)


ブノワ 秘儀伝授


カバー裏文:

「エゾテリスムとは、ごく限られた人びとにのみ伝授される門外不出の教理の総体をさす。それは仏教、原始キリスト教、ヒンズー教、老荘思想、さらにはユダヤ神秘学、ヘルメス学、錬金術のなかに、暗黙の象徴大系として秘められている。本書は、その一般概念と個々の歴史的形態を述べ、未知の世界を探索する。」


目次:

訳者まえがき

序論
第一部 概観
  一 公教と秘教
  二 三つの世界
  三 直観、理性、知性
  四 伝統
  五 象徴主義
  六 儀礼、律動、身振り
  七 秘儀伝授
  八 中心と心臓
  九 大密儀と小密儀
  一〇 三つの道、カーストと職業
  一一 民話
  一二 中間的な世界
  一三 神秘主義と呪術
  一四 行為、愛、美
  一五 大いなる平安、心の祈り
  一六 場所と状態
  一七 特性を帯びた時間、循環期
  一八 至高の同一者、永遠の《化身》
第二部 歴史的形態
 第一章 東洋
  一 ヒンズー教の伝統
  二 仏教
  三 中国の老荘思想
  四 禅宗
  五 ヘブライの伝統
  六 イスラムの伝統
 第二章 西洋
  一 キリスト教の秘教
  二 ギリシア正教の神秘的静寂派
  三 神殿騎士団、愛の信徒団、薔薇十字団
  四 ヘルメス学の宇宙論
  五 同業組合、フリーメーソン
  六 マイスター・エックハルトとニコラウス・クサヌス
  七 神智学者たち
  八 ロマン派の伝統重視
  九 東方ルネサンス
結論

主要参考文献




◆本書より◆


「序論」より:

「宇宙的均衡の法則からすれば、現在一般化しているような唯物論の埋め合わせとして、同等の自由が精神の極点にあたえられなければならない。秘教は、この均衡の働きを最もよく満たすことのできる学問の基礎となるものである。その役割は、第一に、洋の東西を問わず古代文明の聖典を理解させることにある。これらの聖典は、従来不可解な秘密とみられがちであったが、じつはある不滅の実在世界に照応するもので、ただその表現が古風にみえ、現実味を覆い隠しがちだったにすぎない。秘教の力を借りて、われわれは自分の固有の伝承の本質と、それがいかなる内的憧憬にこたえるものであるかを悟るのである。」
「本書の第一部では、ルネ・ゲノンの著書を手引きとした。」
「ゲノンの思想的見地は、いっさいの体系や教義から解放され、種族や言語の偏見から免れた論理的普遍性をそなえているので、私はこれを採用するのが至当と考えたわけである。」



「第一部」より:

「精神・魂・肉体というこの三分法は、今の習慣には合わないが、伝統的教説にはすべてつきものであった。(中略)インドの伝統にも中国の伝統にも、この三分法は等しく見られるのである。(中略)プラトンも同じ三分法を採用し、その後ローマの哲学者たちは、ヌース(noûs)、プシュケー(psyché)、ソーマ(soma)というギリシア語を、それに対応する三つのラテン語、スピリトゥス(spiritus=精神)、アニマ(anima=魂)、コルプス(corpus=肉体)であらわしている。」
「聖イレナエウスは『復活論』の中で同じ区分法をはっきりと認めた。「完全な人間には三つの構成要素がある。すなわち肉体と魂と精神である。人間を救い形成するもの、それが精神である。統一をあたえられ形成されるもの、それが肉体である。そしてこの両者の間にあって仲介となるもの、それが魂である。魂は、ときとして精神に従い、精神によって高められる。またそれは、ときとして肉体の声に耳を貸し、地上の欲望に身を委ねる。」ただキリスト教神学者たちは、プラトンの轍を踏んで魂に微妙な肉体的要素をあたえる危険を避けようと、魂を精神に近づけすぎたため、ついには両者を混同してしまった。かくてこれが、一方では魂と肉体をめぐるかの有名なデカルト式二元論となり、他方では心魂的なものと精神的なものとの現代風な混同になった。」

「秘儀伝授には異なったいくつかの段階的階層があり、それに関しては古代密儀宗教の用語を借用するのが便利である。(中略)かくてわれわれは、「小密儀」「大密儀」「奥儀」(エポプテイア)の三つを区別できる。」
「小密儀の目的は、それに通暁した者に、宇宙論を貫く万物生成の法則を示し、太初の状態を再現してみせることにあった。(中略)小密儀を受けた者は、子供のそれにも比せられる単純さ、錬金術でいう第一質料のような純粋さに戻るのだった。(中略)最初の試煉によって、小密儀を受けた入門者は感覚界を脱することができたが、だからといって自然そのものを離脱したわけではない。イスラムから借りた幾何学的象徴体系によれば、この第一段階の解放は、人間を《広さ》という水平的方向で解き放つもので、その結果、「原初人間」の状態が回復されるが、これは老荘の道でいう「真人」と同じものである。個人は依然として一人の人間のままだが、精神的にはすでに時間と多様性のくびきから解放されているのである。
 本来の意味での霊的な目標に到達し、形を越えた、被制約的および無制約的な高度の状態を実現するのは大密儀の役割で、それは、この世からの解脱と、「根源」との合一にまでいたるものであった。(中略)この第二段階は《高揚》という垂直的方向で進展し、回教で《普遍的人間》、老荘の道で《超越的人間》と呼ばれるものの状態にまで達する。」

「秘儀志願者はまず厳しい断食の行に耐え、しかるのち、自然の諸元素による浄化の過程に入って、裸で、沈黙のうちにこの試煉を受けねばならなかった。これは、地下、水上、最後に天上登高による大気という具合に、さまざまな元素の中をつぎつぎとくぐりぬける旅の形をとっていた。地下の探求は、「冥府」くだり、すなわち存在の下位の状態への下降をかたどるものであった。この下降(引用者注: 「下降」に傍点)(katabasis)の意味は周知のとおりで、それは人間の状態に先立つ諸状態を要約し、小密儀入門者がなお高い境地へ近づいて行く前に、自分の中に残っている低次元の可能性を絶やすことを目的としていた。秘儀伝授は第二の誕生とみなされたから、この地獄くだりは、俗界でひとたび死ぬことを意味していた。状態の変化は、あらゆる変容(メタモルフォーズ)がそうであるように、暗黒の中で行なわれ、同時に入門者は彼の新たな本質をあらわす新しい名前を授かるのだった。死と再生とは、同じ一つの状態変化を相反する二つの側から見たもので、相互補完的な関係にあった。
 第二の誕生はすなわち心的な意味での再生であるから、秘儀伝授の初期段階は心的次元で行なわれた。この心的次元から霊的次元への移行を実現するのが大密儀だが、この移行の時期に当たるのが、最も重要な段階たる連接点の状態であった。これがつまり宇宙(コスモス)の外への解放をあらわす第三の誕生で、洞窟から外界へ出る行為によって象徴された。」

「ルネ・ゲノンは、人間存在の悟達の中に二つの局面というか、二つの段階を区別している。一は右にその様相をたどってきた上昇過程で、これは原則として、この段階を実現しうる人びとすべてに開かれた道である。他は下降過程で、これはきわめて例外的なものである。非=現象界にとどまる人間は、おのれの道を自己自身のために実現したのに対し、《ふたたび下降する》人は、遣わされし者、化身(アヴァタラ)として予定された務めを果たす。」
「下降の道は世界顕現そのものと同じであり、この観点よりすれば、秘儀伝授は、循環過程の中で永遠の化身(引用者注: 「化身」に傍点)となって出現する同一原理が人間の中で実現されることとみなしうる。」



「第二部」より:

「エゾテリスムこそまさしくあらゆる宗教の心であり、精神なのである。それは、宗教がすべて同一の伝統から生まれた子であることを証明する。(中略)違った名前のもとに同じ一つの真理が存在することが、誰にも認められる。」












































































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◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

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尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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