FC2ブログ

Patti Smith 『M Train』

「Please stay forever, I say to the things I know. Don't go. Don't grow.」
(Patti Smith 『M Train』 より)


Patti Smith 
『M Train』


Bloomsbury Publishing, London, 2015
8+259pp, 20.5x13.8cm, paperback
Designed by Cassandra J. Pappas
Front jacket photograph: Claire Alexandra Hatfield
Back jacket photograph: Patti Smith
Jacket design by Carol Devine Carson



並装(フランス表紙)。本文中写真図版(モノクロ)54点。
本書はアマゾン(マケプレじゃないほう)で新品が479円に値下がりしていたので注文しておいたのが届いたのでよんでみました(今みたら2,539円になってました。アマゾンの洋書はたまにすごく安くなるのでカートに入れておいて頻繁にチェックするとよいです)。


patti smith - m train 01


patti smith - m train 02


Stations:

Café 'Ino
Changing Channels
Animal Crackers
The Flea Draws Blood
Hill of Beans
Clock with No Hands
The Well
Wheel of Fortune
How I Lost the Wind-Up Bird
Her Name Was Sandy
Vecchia Zimarra
Mu
Tempest Air Demons
A Dream of Alfred Wegener
Road to Larache
Covered Ground
How Linden Kills the Thing She Loves
Valley of the Lost
The Hour of Noon



patti smith - m train 03



◆本書より◆


「Clock with No Hands」より:

「Not all dreams need to be realized. That was what Fred used to say. We accomplished things that no one would ever know.」


「Wheel of Fortune」より:

「The air was perfect, like milk from the breast of the great mother. Milk that could be suckled by all her children (...).」


「Mu (Nothingness)」より:

「Then I opened a small jar of sake.
 - I salute you, Akutagawa, I salute you, Dazai, I said, draining my cup.
 - Don't waste your time on us, they seemed to say, we are only bums.
 I refilled the small cup and drank.
 - All writers are bums, I murmured. May I be counted among you one day.」



「Tempest Air Demons」より:

「We want things we cannot have. We seek to reclaim a certain moment, sound, sensation. I want to hear my mother's voice. I want to see my children as children. Hands small, feet swift. Everything changes. Boy grown, father dead, daughter taller than me, weeping from a bad dream. Please stay forever, I say to the things I know. Don't go. Don't grow.」



◆本書について◆


本書は、写真(そのほとんどは著者が撮影したポラロイド写真)入りの紀行/徘徊エッセイで、ゼーバルトやアンドレ・ブルトンみたいな感じです(ゼーバルトについては本書でも言及されています)。

タイトルの「M Train」については、「Wheel of Fortune」の章に、眠れない夜などに例えば「M」で始まる語を思いつくままに言い続ける一人遊び(「uttering an uninterrupted stream of words beginning with a chosen letter, say, the letter M.」)について書かれていますが、本書には「M」ではじまるキーワードがたくさんでてきます。そのなかには例えば「Mu」(「無」、小津安二郎の墓に刻まれている文字)や「Murakami」(村上春樹)の小説『ねじまき鳥クロニクル』(著者は本好きなので本書にはさまざまな書名があげられていますが、そのなかで最も多く言及されているのが『ねじまき鳥』です。とはいうもののわたしはじつをいうと村上さんの本はよんだことがないので、それについてはなんともいえないです)に登場する「Miyawaki place」(宮脇邸)などもありますが、ようするに「Memory」(記憶)の「Train」(連続、列車)でしょう。
頭文字ということでいえば、本書にはもう一方で「L」で始まるキーワード群があって、それは「Lost」「Linden」(著者がはまっている犯罪ドラマ「The Killing」の女性捜査官)「Life」「Love」等です。
内容的には、『Just Kids』のあと、フレッド・ソニック・スミスに会ってからの過去の記憶と、現在進行形の旅の記憶とが、自分の居場所(具体的にいうと若い頃の夢だった「カフェ」&海辺の家と、旅先で訪れる詩人や作家のお墓)を求める人生の旅のトラベローグとして織り成されています。
そこで「カフェ」とはなにかというと、それは著者が若い頃によんだシュルレアリストやビート族の本にでてくるアウトサイダー芸術家が集まる場所であって、著者が自分で開きたいと思ったカフェの名前が「カフェ・ネルヴァル」であったというのも暗示的です。ネルヴァルは引きこもり的な性格なのにドイツや東方などさまざまな場所を旅していますが、著者もドイツや日本などさまざまな場所を旅しつつも、毎日通うカフェの自分の場所に他の人が座っていると気分を害して心のなかで悪態をついたり、海辺の家での静かな生活を夢見たり、モノと会話したり、石ころをひろったり、本の世界に没頭したりと、本来は引きこもり的傾向のある人なのではないでしょうか。そしてネルヴァルといえば自殺ですが、著者は本書の後半で芥川龍之介や太宰治、シルヴィア・プラスといった自殺した文学者の墓にお参りして写真を撮っています。写真というのは記憶の物質化であって、写真を撮ることによって現実を相対化する効果もあるのではないでしょうか。著者は自分は自殺せずにこれからも生き続けるだろう、なぜなら自分には生得の楽天性(a natural optimism)があるからだ、と述べています。
著者の楽天性がどのようなものかは、ヴェーゲナーの「大陸移動説」への関心からもうかがえるのではないでしょうか。今は分裂してしまった大陸も、元は一つでした。グノーシス的な「一者」への回帰。
針のない時計(the clock with no hands)――原初の楽園の「永遠の今」。
孤独の認識とアウトサイダー意識に裏打ちされた楽天性です。

「I was in my own lucky hand of solitaire. The desert landscape unchanging: a long, unwinding scroll that I would one day amuse myself by filling. I'm going to remember everything and then I'm going to write it all down. (...) That's what I was thinking, in my dream, looking down at my hands.」

眠れない夜のアナムネーシス。夢はもうひとつの人生であるといったのはネルヴァルですが、夢にでてくるカウボーイの言葉「It's not so easy writing about nothing」(無について書くのはそう簡単なことじゃない)で始まった本書は、生=エクリチュールの、夢のなかでの自己確認によって終わるのでした。















































































































関連記事
スポンサーサイト



プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

最近の記事
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
フリーエリア
netakiri nekotaroの最近読んだ本