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『鬼才の画人 谷中安規 展 1930年代の夢と現実』 (2014年)

「目的なんてあってたまるものか。」
「未来も過去もない、たゞこの一瞬にすぎてゆく/この現在のなかだけでだ。/夢見てゐると云ふのはどうしてわるいのだ。/大人が子供であってはならないとはどなた様のごたく/宣だ。」

(谷中安規)


『鬼才の画人 
谷中安規 展 
1930年代の
夢と現実』

Taninaka Yasunori Retrospective


編集: 滝沢恭司・松岡まり江・根本亮子
デザイン: 馬面俊之
制作: コギト
発行: 東京新聞
2014年10月4日
215p
A5判 丸背紙装上製本


2014年10月4日―11月24日
町田市立国際版画美術館
2015年4月11日―5月17日
岩手県立美術館



本書「ごあいさつ」より:

「本展覧会は、(中略)谷中の作品を制作年順に整理し、刻々と変わる政治的・社会的動向とイメージの変化や表現の関係について再考するものです。」


本書「凡例」より:

「本カタログは、谷中の活動の時代に沿って、7章で構成されており、各章には小タイトルを付した。章解説は滝沢恭司が執筆した。」


図録。出品作品247点、特別出品として佐藤春夫による油彩「谷中安規像」1点。
巻頭に谷中安規肖像写真(モノクロ)1点、本文中参考図版(モノクロ)4点、「年譜」に写真図版5点。「正誤表」1葉。

本書は図録としては小型ですが堅牢な造本で、よみやすいし、同じ版画の色違いや刷違いが併載されているので興味深いです。
また、出品資料中、伯母の死に際して書かれた書簡は「作品目録・解説」に全文が翻刻されていて、これは谷中安規の対人関係におけるスタンスや世界観、死生観(「死ぬと言ふことは、もしこの世が夢ならば、あちらの世界へさめることだ。」)がうかがえて興味深いです。
ネット古書店で3,000円(+送料300円)で売られていたのを購入しました。もともとの売価は2,500円だったようです。


鬼才の画人 谷中安規 01


内容:

ごあいさつ (主催者)
謝辞

谷中安規の見た夢と現実 (滝沢恭司)
表現することが、それ自体でうれしい (原田光)

図版
Ⅰ 1920年代中頃 「腐ったはらわた」
Ⅱ 1928―31年 サロメからロボットまで
Ⅲ 1932年 光と影の空間演出
Ⅳ 1933年 土着と幻想のモダニズム
Ⅴ 1934年 内なる心の世界へ
Ⅵ 1935―39年 「夢の実体」を探して
Ⅶ 1940―46年 虚空にあそぶ

作品目録・解説 (滝沢恭司・根本亮子)
年譜 (根本亮子・滝沢恭司 編)
主要文献目録



鬼才の画人 谷中安規 02



◆本書より◆


「谷中安規の見た夢と現実」(滝沢恭司)より:

「谷中安規は少なくとも数えで37歳(1933年)になるまで、中学時代の友人や知人の家で居候生活をし、喧嘩などして追い出されると浅草の木賃宿で寝泊りしたという、およそ生活力のない人だった。その後三畳一間のアパートに住んでからも、眠くなれば眠り、腹がへれば伯夷・叔斉を手本として生米や生にんにくを齧り、味噌をなめて空腹をしのぐという、常人とはかけ離れた生活を送った。おどろと乱れた髪、よれよれの着物で幽霊のように街中を歩き回り、しばしば警官に誰何された。」
「当の谷中本人の人生観は、『谷中安規草稿(ノート)』に書かれた、二幕の「こまりもの」という自作の戯曲の登場人物に語らせた、次の言葉に窺い知ることができる(中略)。「目的なんてあってたまるものか。機械のやうにみんなは/うごいてゆく機かいのやうに、同じことをくりかえす/たゞそれだけぢゃないか。/機械の方則にしたかはねは人間はひあがってしまふのだ。/そんなキカイの方則はごめんだ。/僕はてうてうでまってゐたいのだ。/未来も過去もない、たゞこの一瞬にすぎてゆく/この現在のなかだけでだ。/夢見てゐると云ふのはどうしてわるいのだ。/大人が子供であってはならないとはどなた様のごたく/宣だ。/就職口、ぼくはこの字がきらひだ。灰いろじみた、陰きな/屋たい骨の下でうめいてゐるやうな不快さだ」。こうした人生哲学を貫き通した末路は、「餓死」だった。」
「谷中は、それなりの画料が入っても使い道に困り、衝動的にタクシーに乗ってレストランやカフェ、映画館や銭湯、麦畑のある郊外へと出かけ、お金を全部使ってしまうような行き当たりばったりの人だった。(中略)とにかく、谷中安規はよほど変わり者だったらしい。しかし、実業の商売を継ぐことを拒否して選んだ、美術作品の制作という仕事には一心不乱に取り組んだ。(中略)当時谷中の才能を評価した人も多かった。日夏耿之介や佐藤春夫、堀口大學、内田百閒、高橋新吉、石川道雄、萩原朔太郎、西川満、坪野哲久、野田宇太郎ら文芸作家、永瀬義郎や前川千帆、恩地孝四郎、平塚運一、料治熊太、棟方志功、小林朝治、関野準一郎ら版画家たちである。」
「また、普通は敬遠されがちな奇人谷中に親近感をもつ人も多かった。」




鬼才の画人 谷中安規 03


鬼才の画人 谷中安規 04


鬼才の画人 谷中安規 05


鬼才の画人 谷中安規 06


鬼才の画人 谷中安規 07



◆感想◆


「餓死」というのは、ひとごとではないですが、しかしなぜ谷中安規は餓死して、熊谷守一は餓死しなかったのかというと、熊谷守一は結婚していたので、ごはんを作ってくれる人がいたからではなかろうか。なにかに集中すると、ごはんを食べることなどわすれてしまうし、もともとごはんを食べることに執着がなければ、ごはんを食べわすれたままうっかり餓死してしまうというのは、よくあることなのではないでしょうか。
餓死するのはいいですが、うっかり家の中で餓死すると、発見がおくれると悲惨なことになってしまうので、やはり野垂れ死にがよいです。
しかしさいきんはなんでもカースト制の世の中なので、不幸にもカーストがあるので、メジャーな不幸なら大いに同情されたり救援されたりしますが、マイナーな不幸だと逆にバッシングされたりするので、都会でひとりで野垂れ死にしていても誰も同情しないどころか白い目で見られるのではないでしょうか。



鬼才の画人 谷中安規 08


見返し。




こちらもご参照ください:

中村元 『現代語訳 大乗仏典 5 『華厳経』『楞伽経』』
片山健 『わたしの遠足日記』
内田百閒 『百鬼園座談』 全二冊







































































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