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『谷中安規の夢 シネマとカフェと怪奇のまぼろし』 (2003年)

「さながらにお伽ばなしの旅のごとき一生をおくるわれを描かむ」
(谷中安規)


『谷中安規の夢 
シネマとカフェと
怪奇のまぼろし』


編集: 渋谷区立松濤美術館
制作: 野崎印刷紙業株式会社
発行: 渋谷区立松濤美術館/須坂版画美術館/宇都宮美術館/アルティス
2003年
284p+84p
B5判 並装(フランス表紙)
デザイン: 薬師神デザイン研究所+原田裕子


渋谷区立松濤美術館
2003年12月9日―2004年2月1日
須坂版画美術館
2004年4月28日―5月23日
宇都宮美術館
2004年6月6日―7月4日



図録。本書は図版の数からいうと谷中安規関連書のなかで最も多いです。
左側から開くと横組で展覧会カタログ、右側から開くと縦組(表紙の文字も縦になっています)で谷中安規文集です(雑誌や書籍などに掲載された文章の殆んどを集成しているようですが、未刊行のノート類は含まれていません)。
本文中に参考図版(モノクロ)12点、「年譜」に図版(モノクロ)19点。
本書はネット古書店で最安値(5,000円+送料無料)のを注文しておいたのが届いたのでよんでみました。チラシと半券がついていましたが「正誤表」欠でした。


谷中安規の夢 11


谷中安規の夢 12


内容:

ごあいさつ (主催者)

動坂にショーウィンドーの剥製はあったのか――「谷中安規の夢」展にあたって (瀬尾典昭)
谷中安規と都市のゴースト (中沢弥)
谷中安規のロボット画について (伊藤伸子)
谷中安規における神話的創造力――龍・蛇・虎・異類のものたち (及川智早)
谷中安規さんの技法 (大野隆司)
谷中安規と愛書趣味の時代 (山田俊幸)

図版
 Ⅰ 禁断の夢
 Ⅱ 光と影、あるいは『白と黒』
 Ⅲ 都市の胎内へ
 Ⅳ 物語/本
 Ⅴ 天使と子供
 Ⅵ 版木、書簡など

資料
 年譜
 足跡関連地図
 文献目録
 出品目録

谷中安規文集




◆本書より◆


谷中安規の夢 02


谷中安規の夢 03


谷中安規の夢 04


谷中安規の夢 13


「谷中安規と都市のゴースト」(中沢弥)より:

「しかし、当然のことながら「カリガリ博士」に魂を抜かれたように熱中した青年は、谷中安規だけではなかった。佐藤春夫の知遇を得て作家としてデビューを果たしながら、二五歳で病死した富ノ澤麟太郎もその一人である。タバコと映画を愛した富ノ澤麟太郎のお気に入りは、ゴールデンバットと「カリガリ博士」であった。富ノ澤は山形から上京して早稲田大学高等予科に入学したが、授業にはほとんど出席せずに街をさまよい、あるいは下宿の部屋にこもって幻想的な小説を熱心に書きつづっていたという。谷中同様、生活には無頓着な性格だったらしく、そんな富ノ澤が曲がりなりにも生きていけたのは春夫をはじめとする知人・友人のおかげであった。」
「日本の一九二〇年代は、こうした都市のなかの幻想を描く作家・作品を多く輩出した。」



「谷中安規のロボット画について」(伊藤伸子)より:

「ちなみに高層建築からの飛び降り自殺は、1926(大正15)年の銀座松屋の屋上、地上百尺からのダイブが最初とされる。後頭部挫滅と骨折で即死したのは、職を失い家庭での居場所をなくした38歳の失業職工であった。高層ビルが作り出す深い谷間は、工業社会から「下り」ざるをえなかった人間をのみこむ場所としても機能し始めたと言えよう。」


「谷中安規文集」より:

「夜
闇の中、まなこみひらく、これ慈憐の為とこそ、されば真昼なか、まなこ閉ざしぬ。」

「なんでもよい、馳けていつてつきあたれ。そんな生き方がしたいと思ふ。この世ではのれんと腕おしするやうなことはない。無駄なことはひとつだつてない、自分を放下して考へればみんな無駄なことでなかつたはづだ。
 書籍店がある。黒い書籍店と言ふ。なかへはいつて棚を見ると黒皮表紙と赤皮表紙の本がならんでゐて、なかをあけると、白い紙、なんにもかいてない。表題だけがかいてある。知足論とか、さかさまの世界とか、直覚の体系とか、荒唐ムケイ史だとか、意義なき意義とか、陽物と陰の象徴とか、凹凸の支配とか、摂理はだれの頭上にあるかとか、星辰の存在理由とか、とかとか論とか、あるでもないでもとか、火星年代記とか、休墓論とか。」




◆感想◆


唐突ですが、クロムヘトロジャンの「へろ」という本がありまして、それは吾妻ひでおのまんがにでてくる存在しない本ですが、のちに実際に出版(?)されて存在する本になったようです。谷中安規の「黒い書籍店」にならんでいる本も、この世に存在しない本で、「火星年代記」というのも、のちにぶらっとバニー、じゃなかった、ブラッドベリによって書かれて出版されたので、実際に存在する本になりましたが、谷中安規がこの文章を書いていたころには、まだこの世に存在しない本でした。
なにをいいたいのかというと、1920~1930年代の東京という限定された時間と空間に谷中安規を閉じ込めるのもよいですが、時代だの社会だのを度外視して、谷中安規とブラッドベリと吾妻ひでおを同列に並べて論じる本が存在してもよいのではなかろうか、ということであります。









































































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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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