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料治熊太 著 『谷中安規 版画天国』 (双書 美術の泉)

「彼の失われた現世の愛は、幽界に入って妖しい育ち方をした。幽界には親切な鬼がいたが、鬼は幼童にとってよき遊び仲間であり、よき愛護者であった。幽界にいる幼童の魂は、空を飛ぶことも出来れば、水を泳ぐことも出来た。自由奔放であった。」
(料治熊太 「谷中安規の人とその芸術」 より)


料治熊太 著 
『谷中安規 
版画天国』
 
双書 美術の泉 30

岩崎美術社 
1976年12月5日 印刷
1976年12月10日 発行
図版80p 本文31p 
B5判 並装(フランス表紙) カバー 
定価1,600円



図版(モノクロ)105点。本文中に写真図版(モノクロ)3点。
本書は日本の古本屋サイトで1,000円(+送料300円)でうられていたのを注文しておいたのが届いたのでよんでみました。


谷中安規 版画天国 01


谷中安規 版画天国 02


カバーを外してみた。


谷中安規 版画天国 03


内容:

1 自画像(レコードによる独唱)
2 男女像
3 火中の童子像
4 稲荷国の王様
5 ムッテル・ショウス
6 青春の蝶
7 魔神
8 真昼の街上
9 兎狩
10 ひまわりの精
11 飛ぶ首
12 ビルによる女
13 実験室(人造人間)
14 刀をふるえる半獣人
15 月の誘い
16 菩薩
17 瞑想
18 影絵の鬼たち
19 供養者
20 祖先
21 火の輪くぐり
22 影絵芝居〈扉〉
23 影絵芝居〈第一景〉
24 影絵芝居〈第二景〉
25 影絵芝居〈第三景〉
26 影絵芝居〈第四景〉
27 影絵芝居〈第五景〉
28 影絵芝居〈第六景〉
29 影絵芝居〈第七景〉
30 影絵芝居〈第八景〉
31 影絵芝居〈第九景〉
32 影絵芝居〈第十景〉
33 影絵芝居〈第十一景〉
34 影絵芝居〈第十二景〉
35 影絵芝居〈第十三景〉
36 髪模様
37 赤い人魚
38 海の詩神
39 活け花(千葉五井の竜善院回顧1)
40 おさらい(千葉五井の竜善院回顧2)
41 わかれの宴(千葉五井の竜善院回顧3)
42 描く描く描く
43 月
44 アトリエ
45 自画像の蔵書票
46 像
47 半鳥人
48 射手騎虎
49 少年の日(少年時代その1)
50 夢の国の駅(少年時代その2)
51 祭――九段坂(少年時代その3)
52 祭――浅草の見世物(少年時代その4)
53 運動会(少年時代その5)
54 浅草慕情(少年時代その6)
55 水あそび(少年時代その7)
56 盆おどり(少年時代その8)
57 雪と泥と(江戸の幻想1)
58 城の印象(江戸の幻想2)
59 浅草寺(江戸の幻想3)
60 遠き明治よ
61 忘却の譜 幽界への通信
62 夜
63 花鳥(詩画集の1)
64 うすむらさき(詩画集の2)
65 一族の長(詩画集の3)
66 観覧車(詩画集の4)
67 花は花(詩画集の5)
68 虎ねむる(詩画集の6)
69 ロケーション(詩画集の7)
70 鍵(詩画集の8)
71 瞑想氏(詩画集の9)
72 蝶を吐く人(詩画集の10)
73 金魚と花(詩画集の11)
74 可愛いい竜(詩画集の12)
75 月に吐える
76 怪鳥(空襲下の難民)
77 朝鮮の夜(その1)
78 朝鮮の夜(その2)
79 朝鮮
80 家族
81 幻想集〈扉〉
82 幻想集―僕
83 幻想集―灯
84 幻想集―旅
85 幻想集―夜
86 幻想集―空
87 幻想集―力
88 幻想集―刀
89 幻想集―火
90 幻想集―雲
91 幻想集―酒
92 汽車空を翔ぶ
93 自動車空を翔ぶ
94 無題
95 人間の花
96 詩巻(こころの花1)
97 春(こころの花2)
98 詩想(こころの花3)
99 過去(こころの花4)
100 哲学(こころの花5)
101 天駈ける詩神
102 眼(求むるものの群)
103 現世
104 闘牛(日米決戦の夢)
105 孤剣中天に寒し
〔表紙〕 鷲の子
〔扉〕 ブランコ

谷中安規の人とその芸術 (料治熊太)
 純粋版画の生れるまで
 「白と黒」時代の棟方志功と谷中安規
 極貧時代の谷中安規
 幻の恋に生きた谷中安規
 自由奔放なある一面
 餓死のかげにあった一人の愛護者
 谷中安規終焉の纏末

谷中安規 年譜
所蔵図版一覧



谷中安規 版画天国 06



◆本書より◆


「谷中安規の人とその芸術」(料治熊太)より:

「彼は五十年の歳月をこの世に生きたが、彼がこの世を去った最期の姿は、「餓死」であった。
 餓死して果てたということは、彼がどれほどこの世を純粋に生きたかを示すもので、小成に甘んずる輩のうかがい知ることの出来ない境地である。
 谷中安規は、版画家として、至高の芸術境に生きた人であったが、それ以上に人間として素晴らしい生き方をした人であった。」

「谷中安規は、生前、自分の素姓を他人に話したがらなかった。(中略)自ら風来坊を自称し、内田百閒をして「風船画伯」の仇名を与えられるほど放浪性をもった画家であった。
 私の家へ初めて彼が訪れたのは、昭和七年のことで、それこそ風船のように、ふんわりころげこんだという形であった。」

「その頃の彼は、貧乏のドン底にあった。」
「堀口大学や、佐藤春夫は小日向の高級住宅地に住んでいて、谷中安規を友人扱いしていたが、谷中安規が、それほど窮乏しているとは知らなかったであろう。」

「彼は愛情の深い人だったが、多くの場合、一方的で、相手に通ぜぬ愛情だった。
 彼は五十年の生涯、いつも誰かを一方的に愛していた。」

「彼は、私の家の無花果をとるため、枝という枝に足をかけて、みんな枝を折ってしまったことがある。彼は無花果が、そこにあれば、それをとるということに気持が集中して、取る手段など考えぬ男である。
 青年時代、彼は房州方面へ無銭旅行に出かけた時、夜ごと、樹上に体を縄で縛りつけて睡眠したという。それは、一度、崖上の祠を、仮寝の宿に選んだことがあった。夜中に、石段の下から夜詣りの人のあがって来る足音が聞えて来た。そこに自分が寝ていることを知ったら登ってくる人は、どんなに驚くであろうと思った彼は、闇の中にスックと立ちあがって、「私は怪しいものではありません」といった。驚かすまいとした彼の配慮が却って参詣者を驚かしてしまって思わぬ大怪我をさせてしまったというのである。それからは以後、彼は平地に眠ることをやめ、樹上に眠るようになった。
 いかなる人も、常識で考えて樹上に眠る人はない。しかし、谷中の場合は、誰もしないことを極めてあたりまえのことのように実行するところに、彼らしい真骨頂があったのである。」

「彼は奇行の生活者として、たぐいない稀れな人であるが、芸術家としても、たぐいない稀れな人であった。豊山中学時代から彼の仇名は「幽霊」であったが、彼の風貌に接すると、この世の人とも思えぬ無気味なところがあった。ただなんとなく町を散歩していても、道行く人に異様な感じを与え、交番の前などではお巡りに「誰何(すいか)」されることが度々あった。これは自然に彼から発散する異様な雰囲気のさせるわざで、この世の人というより、霊界からやって来た神秘な人という感じであった。
 仲間であるわれわれは、つとめて普通人としてつき合い、いつも同列的感覚で彼と接するようにつとめていたが、彼は、凡俗のわれわれの圏外にあって、聖者のように生きていた。
 聖者という物のいい方はあたっていないが、何ごとにも現世のことにこだわらず、俗世を無視して、彼ひとりの世界に生きていた。彼はつねに貧乏で、いつも飢えているような生活者であったが、ふとまとまった稿料が新聞社などから入ってくると、急に大尽のように、出るにも、入るにも、円タクをつかって外出した。(中略)彼に金をもたせると、王者も及ばないような鷹揚(おうよう)な振舞を平気でやってのける。明日は無一文になることがわかっていても、明日のために、ゼニを貯えるというようなことはしなかった。」

「すこし親切にすると、いつまでも部屋へはいり込んで、帰らない。他意があるわけでないが、一人者で淋しがり屋の彼は、ひとの迷惑など考えぬ男であった。」



谷中安規 版画天国 04


谷中安規 版画天国 05




















































































































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ねたきり読書日記。

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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