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レーモン・ルーセル 『額の星/無数の太陽』 國分俊宏・新島進 訳 (平凡社ライブラリー)

「あいつはそのときどきで支離滅裂なたわごとを言ったり、しっかりしたまともなことを言ったりするんだけど、イカレてるときには幸福を、イカレてないときには不幸を、代わる代わるにもたらすんだ。」
(レーモン・ルーセル 「無数の太陽」 より)


レーモン・ルーセル 
『額の星/
無数の太陽』 
國分俊宏・
新島進 訳
 
平凡社ライブラリー る-3-3 

平凡社
2018年3月9日 初版第1刷
427p 著者・訳者紹介1p
B6変型判(16.0cm)
並装 カバー
定価1,600円(税別)
装幀: 中垣信夫
カバー・マーブル制作: 製本工房リーブル
カバー図版: 「透明な宝石箱」。カミーユ・フラマリオンの天文台での昼食会で供された星形のビスケットが入っている。ルーセルの死後、蚤の市で発見され、ジョルジュ・バタイユが一時所有していたという。


「本著作は二〇〇一年八月、人文書院より刊行された。」



本書「「星と太陽、双子の戯曲」より:

「本書はレーモン・ルーセルの独立した二作品の合本である。訳出に際しては Lemerre版を底本とし(Raymond Roussel, *L'Étoile au Front, 1925; La Poussière de Soleils*, 1927)、Pauvert 版(1963, 64)を適宜参照した。『額の星』は新島、『無数の太陽』は國分が訳出をおこなっている。(中略)解説は、「額の星」までを新島、「無数の太陽」を國分が担当した。」


本書「「額の星/無数の太陽」小事典」より:

「本書では通常の訳註に代えて、事典形式の用語集を付することにした。ベースとなった資料は主に、ルーセルが用いたとされる辞書『ベシュレル』や『十九世紀ラルース大百科事典』であり、これに随時、訳者の解説を加えた。」


「平凡社ライブラリー版 訳者あとがき」より:

「今回、平凡社ライブラリーに収められるにあたり、訳文に若干の修正を施し、また、人文書院版に付されていた「「額の星/無数の太陽」小事典」、解題にあたる「星と太陽、双子の戯曲」も最小限の加筆をしたうえで再録した。」


「無数の太陽」に図版(モノクロ)17点。「「額の星/無数の太陽」小事典」は二段組。
本書は単行本が出たときに買おうとおもって忘れていたのですがライブラリー版が出ていることに気づいたのでアマゾンで注文しておいたのが届いたのでよんでみました。


ルーセル 額の星 01


帯文:

「博覧狂記!
ルーセル宇宙
独自の〈手法(プロセデ)〉が生み出す
言葉と物の奇想天外なスペクタクル」



帯背:

「双子の戯曲」


カバー裏文:

「『ロクス・ソルス』『アフリカの印象』と同じように、
〈手法〉を用いて書かれた星と太陽の双子の戯曲。
言葉が言葉をつむぎ事実の方程式が解かれたとき、
そこに奇想天外な物語が生まれる。
ルーセルにあって散文と戯曲の区別はない。
生前あれほど欲して得られなかった栄光だが、
文学を超えて詩語の開花はめざましく、
いま確実にその道を進んでいるといえるだろう。
「「額の星/無数の太陽」小事典」を付す。」



目次:

額の星
無数の太陽

「「額の星/無数の太陽」小事典
星と太陽、双子の戯曲――訳者あとがきに代えて
平凡社ライブラリー版 訳者あとがき



ルーセル 額の星 02



◆本書より◆


「額の星」より:

トレゼル あのジュサックという男は、古物漁りで名を知られていて、また、大変な読書家でもある……
ジュヌヴィエーヴ 特に、若い頃のミルトンには本当に造詣が深いのよ。
クロード じゃあ、その手に入れたものが関係するのも?……
ジュヌヴィエーヴ ……若い頃にミルトンがした、初恋に関するものなの。
トレゼル なんと!……あの厳格(ピューリタン)なミルトンが……
ジュヌヴィエーヴ ……確かに秘めやかな思いではありましたが、十六の冬に、窓向かいの隣人だったモード・ド・パーレーに夢中になったのです。
クロード 秘めやかな?……
ジュヌヴィエーヴ 臆病で、厳しくしつけられた青年だったから、カーテンの陰からじっと見張るだけにしていたの。ほんの少し姿が見えるだけで幸せだった。
クロード それ以上は望まなかったのかい?……
ジュヌヴィエーヴ 何を計画しても無駄なことだったわ。モードは肺病が進んでいて、あと僅かしか生きられなかったの。四月になって太陽が初めて顔を出すと、あまりにいとおしい窓が――庭の離れの中二階にあったのだけど――大きく開け放たれて、そこに死を待つ少女が長椅子ごと連れてこられた。」
「そばに運ばれてきたテーブルに、本と針仕事、それに生卵が一個入った病人用のおやつがあるのに気づきました。」
「モードはナイフの先で殻の端に小さな穴を開けると、卵を飲みこもうとがんばった……」
「このつらい務めを終えると、ゴミになった殻の処分に一瞬困ってしまった。残りのおやつと一緒に置いたら、嫌悪感から、ただでさえない食欲がなくなってしまうかもしれない。
クロード かといって、横になって弱っている体を動かすのは大変なことだし。
ジュヌヴィエーヴ だから結局、窓越しに投げてしまったのよ。場所ふさぎな卵殻は花壇の茂みに消えていった。
クロード ミルトンは落ちた場所を、それは念入りに見定めただろうね!
トレゼル 愛する者が何度も何度も唇をつけるのを見たのだから、その殻は彼にとってなによりの宝だろう!
ジュヌヴィエーヴ ですので夜になると、結び目つきの紐を即席で作り、窓から下げて庭に降りたのです――そして大切な空の卵を持って上がってきました。」
「どうしたものか考えた末、モードを想って作った情熱的な詩を、殻の表面に書いて捧げることにしました。」
「詩句の両端をつなげて、散文の、統合文(ペリオド)のようにすると、それで上から下へと、とてもゆるく傾斜する螺旋を描いていったのです。」
「病気の少女にその品をことづけてもらう方法を検討していると、彼女が危ないという噂が流れてね。次の日、その命の灯は消えてしまったの。ミルトンは殻に愛着を寄せ、信者のごとく、ずっと大切にしたのよ。
クロード でも、その後は?……
ジュヌヴィエーヴ 彼の娘たちがひき続き崇めたわ。(中略)ただ、娘たちが殻を敬う気持ちは、父の思いとは違っていた。
トレゼル 確かに。ミルトンにしてみれば愛する者の唇が触れたことで、かけがえのない卵の殻であっても、娘たちにとっては、父であり、また偉大な人物のインクで黒ずんでいるからこそ貴重だったのだな。
ジュヌヴィエーヴ 娘たちは卵の殻を小箱にしまい、それについてミルトンが語ってくれたことを漏らさず要約したメモを一緒に入れておきました。」


ジュサック (中略)これはある初版本の、僅かに残っている一冊でして……
トレゼル ……題は?……
ジュサック ……『選ばれし者』です。心理学研究家ボワスナンの主著です。
クロード 彼の説はどんなものですか?
ジュサック まえがきでも述べられていますが、ある詩的な印(ポエティック・イマージュ)のことを取りあげていましてね。その額の星(引用者注: 「額の星」に傍点)の印は――生まれつき持つ者はいても、後天的に獲得することは決してないもので――美をめぐるさまざまな分野において、その者が偉大な創作者であることを示す究極の刻印なのだそうです。これは抗しがたい魅力を持つ天からの贈り物でして、偶然によって先天的に授かるものなのです。」



「無数の太陽」より:

「あなたもご存知のように、私は文芸の愛好家であり、さまざまなコレクションのなかに、あのルネサンスのイタリア詩人、アンブロージの頭蓋骨なるものを所有しております。若くして肺病を病み、栄光の輝きに包まれる前に死にとらわれてしまうであろうことを確信していたこの詩人は、死後の名声の開花には期待せず、自身の代表作である一篇のソネットだけは忘却の淵から救おうと、遺言して、その詩を将来、自分の頭蓋骨の、まさにその詩を生み出した額の真ん中に刻み込んでくれるよう言い残したのです。」





















































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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

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