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池内紀 編訳 『リヒテンベルク先生の控え帖』 (平凡社ライブラリー)

「彼はいつもの怠けぐせで、長いこと窓ぎわで眠っていた。気がつくと燕が耳のうしろに巣をつくっていた。」
(池内紀 編訳 『リヒテンベルク先生の控え帖』 より)


池内紀 編訳 
『リヒテンベルク先生の
控え帖』
 
平凡社ライブラリー い-2-2 

平凡社
1996年7月15日 初版第1刷
221p
B6変型判(16.0cm) 並装 カバー
定価780円(本体757円)
カバー・マーブル制作: 製本工房リーブル
カバー画: 18世紀後半ドイツの風俗画


「本書は平凡社ライブラリー・オリジナル版です。」

「各章扉のイラストは十八世紀の風俗誌
“Journal des Luxus und der Moden”より採録した。」



本書「あとがき」より:

「当書は平凡社ライブラリーのために新しく編訳したもので、テクストは左記による。
 Georg Christoph Lichtenberg: Aphorismen, Schriften, Briefe; hrsg. von Barbara Promies, Carl Hanser Verlag, München 1974
 Lichtenberg: Sudelbücher; hrsg. von Franz H. Mautner, Insel Verlag, Frankfurt am Main 1983
 選択にあたっては、一、当時の具体的な事柄にかかわっていて、それを知らないとわからないもの、二、古典ギリシアやローマの知識を前提にしているもの、三、引用にあたるもの、四、ドイツ語やラテン語のことば遊びによるもの、五、物理学の専門分野にわたるもの、などは省いた。それ以外から編者の好みによって選んだ。原書はいずれも年代順に収録しているが、ここではそれによらなかった。大きく十章に分けているが、読者の便宜をはかったまでで、さして意味はない。」



リヒテンベルク肖像1点。本文中図版7点。章扉カット10点。
各章冒頭に編訳者による短いエッセイが付されています。


池内紀 リヒテンベルク先生の控え帖 01


カバー文:

「池内紀が選りすぐった、18世紀ドイツの物理学者の不思議な警句集。
軽妙、皮肉、気のきいた人物スケッチとほのかなユーモア……
最良の散文のエッセンス、きわめつきの人間観察の一冊。」



目次:

はじめに

Ⅰ ゲッティンゲンのこと
Ⅱ ゴータ暦の神々たち
Ⅲ 元日の賀
Ⅳ 酔っぱらいの言い方
Ⅴ 花売り娘
Ⅵ 尻尾について
Ⅶ ホーガースの銅版画
Ⅷ 家具調度リスト
Ⅸ 8の演説
Ⅹ 妻への手紙

あとがき



池内紀 リヒテンベルク先生の控え帖 02



◆本書より◆


「Ⅱ」より:

「人間はこの世のすべての動物のうちでもっとも猿に近い。」

「すべてを少なくとも一度は疑うこと。2×2=4ですらも。」



「Ⅲ」より:

「まっ黒に覆った部屋、天井に黒い布、床の敷物も黒、黒い椅子、黒いソファー、そこにまっ黒な服を着て、ローソクのそばにすわり、黒服ずくめの召使の世話を受けるとすると、はたしてそれは私にどんな効果を及ぼすだろう?」

「カンパー氏によると、グリーンランドのある村で、伝道師が地獄の炎についてつぶさに語り、その熱で焼かれる人々のことを話したところ、全員が地獄へ行きたいといいだした。」



「Ⅴ」より:

「子供を「籠」に閉じこめるのがいい。ただし籠そのものは、なるたけ快適にしてやること。ヴァイオリンの名手になりたければ、手にヴァイオリンが握れる齢になると直ちに、日に八時間はヴァイオリンを弾かせる。これがつまり籠であって、その中でのみ、すべてが快適になるだろう。」

「この考えはいつも彼の良心のなかで死の時計のように機能していた。昼間は仕事や人との交わりにまぎれて、ろくに聞こえない。だが夜のしじまのなかでは魂をふるわすように聞こえていた。」

「性格というもの。彼について、だれもがまちがったイメージをもち、それによって憎み、迫害する。」

「誓いを立てるのは誓いを破るよりも罪が深い。」

「もし天使が自分の哲学を語るとしたら、その語りの節ぶしは、2×2=13といったふうに響くのではあるまいか。」



「Ⅵ」より:

「無党派とはナンセンスである。人間はいつも党派的であって、それ以外にはありえない。無党派ですら党派的であって、無党派の党をなしている。」

「「水を飲むのが罪でないのは残念だ」と、あるイタリア人がいった。「もしそうだと、ずっと甘い味がするだろうに」」

「最初の人間アダムとイヴについては、実にさまざまなことが語られてきた。とすれば最後の二人についても、もっと語られていいはずだ。」

「あの人の家に重なりあっている珍品のうち、とびきりの珍品はあの人だ。」



「Ⅶ」より:

「いつも暇のない人は、何もしない。」

「われとわが身との三十年戦争ののち、ついに和平がきた。しかし、失われた時はもどらない。」

「われわれは同時代の独創的な頭脳を、多くの場合、少なくともそれと同等のレベルになるまでは、イカレた頭と思うものだ。」



「Ⅷ」より:

「いとこの天使といとこの猿とが、あそこで人間を笑っている。」

「人は夢の中で、目覚めているときと同じように生きているし、感じている。なんら劣らない。夢をみて、しかもそれを夢だと知っている(引用者注: 「知っている」に傍点)ことは、人間の特徴の一つである。まだ夢の利用の仕方を知らないだけだ。夢は一つの生であって、目覚めと組み合わされ、人間の生とよべるものになる。夢が日常に忍び入り、どこで目覚めがはじまるのかわからない。」

「人は(少なくとも私は)よく夢をみる。おりおり死者と、当の死者について、まさしく死者として話している。(中略)これもよくみる夢であるが、私は料理された人肉を食べている。」

「夢はしばしば思ってもみなかった状態に導くし、目覚めているときなら、まずもって立ち入らない状況に巻き込んでいく。夢が感じさせる独特の不快感は、子供のころ、かすかに感じながら無視してきたものであって、それが時とともに顕(あら)わにったのではあるまいか。だから夢はしばしば、決断に影響を及ぼすし、廻り道してたどりつく教義よりも、はるかに強くわれわれの道徳心を支えている。」

「一七九九年二月九日から十日にかけての夜にみた夢。私は旅の途中で、とある食堂にいた。いたってあやしげな店で、外で食べていた。奥では、さいころ賭博をしている。向かいに若い男がすわっていた。きちんとした身なりだが、どこか少しだらしがない。まわりにすわったり、立ったりしている人に頓着なく、スプーンですくってスープを飲んでいる。二匙か三匙ごとにポンとスープを放りあげ、またスプーンで受けとめて、それから悠然と口に運ぶ。(中略)さいころ台のそばに、背の高い、痩せた女がすわっていた。編物をしている。勝つと何がもらえるのかとたずねると、女は「なんにも」と答えた。負けると何かとられるのかと訊くと、「とんでもない!」といった。どうやら、もっと真剣な勝負らしかった。」



「Ⅸ」より:

「ほかに何ができたか、あれこれ思案するのは、いまできるうちの最悪のことだ。」

「彼はいつもの怠けぐせで、長いこと窓ぎわで眠っていた。気がつくと燕が耳のうしろに巣をつくっていた。」

「私にはこの考えを捨てることができないのだが、自分は生まれる前は死んでいたのであり、死によって再びあの状態にもどるのではなかろうか。(中略)死人で、その前の記憶をもってよみがえるのを失神という。あらためて形成しなくてはならない別の組織でよみがえるのを生まれるという。」



「Ⅹ」より:

「今後、何も約束しないと、ここにかたく約束しよう(中略)。」

「想像は、いま一つの人生であり、いま一つの世界である。」





こちらもご参照ください:

池内紀 編訳 『象は世界最大の昆虫である ― ガレッティ先生失言録』  (白水uブックス)















































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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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