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『書物の宇宙誌 澁澤龍彦蔵書目録』

松山: それに、澁澤さんにとっては、森羅万象ってのは自分のものなんですよ(笑)。」
(対談 「澁澤龍彦の書物」 より)


『書物の宇宙誌 
澁澤龍彦
蔵書目録』

COSMOGRAPHIA LIBRARIA

編者: 国書刊行会編集部
編集協力: 石黒敦彦
写真撮影: 鈴木秀ヲ/石黒健治

国書刊行会 
2006年10月15日 初版第1刷印刷
2006年10月20日 初版第1刷発行
6p+カラー図版32p+473p
B5判 角背バクラム装上製本 貼函
定価9,500円+税
装釘・本文設計: 柳川貴代



栞ひも(白)付。
本書はヤフオクで3,610円+送料400円で出品されていたのを落札しておいたのが届いたのでよんでみました。


書物の宇宙誌 澁澤龍彦蔵書目録 01


帯文:

「没後二十年、澁澤龍彦が遺したミクロコスモス、
蔵書一万余冊の全データと多数の写真が織りなす夢と驚異の蔵書目録。
貴重な《創作ノート》も初めて完全公開。
ドラコニア王国創造の秘密は、すべてここにある。

澁澤龍彦の書斎が
一冊の書物となった」



帯背:

「本棚のミクロコスモス」


書物の宇宙誌 澁澤龍彦蔵書目録 02


目次:

蔵書目録
Ⅰ 書斎[一階]
Ⅱ 書庫[二階]
 補遺: 和雑誌
Ⅲ 書庫[一階]
 補遺: パンフレット/プログラム
Ⅳ 納戸[一階]
Ⅴ 寝室[二階]

創作ノート影印
 ノート本体
 挟み込みメモ

インタビュー
 澁澤龍彦と本 (澁澤龍子)

対談
 澁澤龍彦の書物 (松山俊太郎×巖谷國士)

対談
 書物の宇宙誌・解題 (東雅夫×礒崎純一)

索引
 和書著者索引
 洋書著者索引
 棚小見出し目次
 部屋見取り図



書物の宇宙誌 澁澤龍彦蔵書目録 03



◆本書より◆


「創作ノート影印」より:

「不能願望
谷崎は間違って(引用者注: 「間違って」に傍点)子供をつくったが、本来は子供をつくる人ではない。父意識の欠如。」

「イニシエーション 中心にたどりつく。」

「大人にならねばならないイニシエーション
   鏡花は幼時のまま、
   つまり死んだまま、夢のまま、
   出口なき迷宮

退行
   カフカの迷宮と同じ意味」

「幸福な幼時、一度知った人は迷宮から出なくても」

「時間の廃棄 円環的時間」

「時間性の廃棄 あるいは退行」

「夢の現実=退行の幼時、不可能な退行を求める
水=退行 羊水」

「化物の試練。一種のイニシエーション=ミノタウロス 動物性(人間性、天使性)」



「澁澤龍彦と本」(澁澤龍子)より:

「ただ、あの人は、必要なものしか買わなかったんじゃないかな。いろんなものを全部買っちゃうっていう人もいるでしょう。「まあ、もしかしたらあとでなにか役にたつかもしれない」みたいに。彼は、そうではなくて、特に店頭では頁めくって、けっこう丁寧に選んでいくんです。そういうわけで、本の数だけでいえば、意外に少ないんじゃないかしら。ただし、買った本は全部読んでいるんです。」

「――図書館は使われなかったのですか?」
「まったく使わない。一回も行ったことがないです。編集者の方に、図書館から特殊な本を借りてきてもらったことはあります。だけど、自分で図書館に行ったっていうことはない。(中略)鎌倉の図書館にあるような本を借りる気は全然ないんです。自分で買いますよ、そういう本が必要なら。自分で必要と思う本は、一生懸命に探して買っていました。よほど特殊で、どこにもないような本を編集者の方に頼むことはあっても、普通に図書館に行くことはなかったんです。ほんとにこの家にある本だけで、彼は全てを書いていたんですよ。」

「――本の処分はどうされていましたか?」
「自分で買った本は、ほとんど売ることはありませんでしたね。でも、出版社から送られてきたりした本なんかは、すごくたまっちゃうわけなんですよね。だから、そういう本はやっぱり、ずいぶん処分はしました。」

「なにしろ、彼は本をほんとによく読んでいましたね。死ぬまで、膨大な本を読んだと思います。ごく若いころの本は、読んでは売っちゃって、また新しい本を買うっていうかんじだったでしょうから、その頃の本は今では残っていないのもずいぶん多いと思います。(中略)だけど、それ以後は、必要な本は自分で買って、それを読んでいるでしょう。(中略)あんなに速く読んで、忘れないっていうのにいつも驚きました。(中略)彼は、昔のことは覚えているっていうんじゃなくて、歳を取ってからも、どんどん読んで忘れない。それで、日常生活がまるでだめだったのかしら。地上の生活のことは、ほんとにだめ。(中略)普通のことはまるでだめね。本にあることは、不思議なほどよく覚えているくせにね。」



「澁澤龍彦の書物」(松山俊太郎×巖谷國士)より:

巖谷: ビブリオフィルっていうのもいろいろあって、ひとつは稀覯書とか、珍しい本を大事に集めているタイプで、澁澤さんはそれでは全然ない。それからもうひとつは、個人の全集であれば全巻揃えるとか、ある作家については全部買うとか、そういうタイプの愛書家っているでしょう。それでもないんですね。」

巖谷: たとえば一人の画家について系統的に画集を集めるとか、そういうことは一切ない。それが澁澤さんらしいなと思います。エルンストなんかは澁澤さんは大好きだったけれども、今回の蔵書目録を見ると、エルンストの重要な画集や展覧会カタログなんかを、ずらっと揃えてはいない。洋書はたった四冊ですが、必要な分だけがあるんですね。」

巖谷: 本をとても大事にする、オブジェとしても。触り方もこう、優しくやわらかくさわるような持ち方をしていたのをよく憶えています。」

巖谷: 澁澤さんの蔵書には、雑学的な本ってないですね。ほんとに必要なものしかない。たとえば、漫画の本もないよね。つげ義春が一冊だけあったはずだけど。『ねじ式』が出たとき、彼は大喜びしてね。「これはいいんだー」って、大騒ぎしていた。だけど、あとの作品は読まないんで、それが特徴です。」

巖谷: やっぱりこの蔵書は一生かけてのものだから。ほんとに長い時間がかかっていますよ、澁澤さんがこれだけ読むのに。」



「書物の宇宙誌・解題」(東雅夫×礒崎純一)より:

礒崎: 今回あれと思ったのは、やっぱり塚本邦雄が相当初期から澁澤龍彦に献本をしていた。この第二歌集からしてるんですよね。澁澤龍彦自身も結構、塚本邦雄には注目していたようで、それがあの『血と薔薇』で、塚本邦雄に初めて散文を書かせるという、あそこまでつながってるのかな。」


書物の宇宙誌 澁澤龍彦蔵書目録 04



◆感想◆


本書は澁澤家に残された澁澤龍彦のすべての本棚の写真と、それぞれの本棚に並べられている本のリスト(自著は除く)でできていて、普通の蔵書目録のように著者別とかジャンル別とかではく本棚別なので、澁澤龍彦の書斎に入り込んだような臨場感があってよいです。
「必要な本しかない」ということですが、書評で酷評した本(ブランショ『ロートレアモンとサド』邦訳とか中公新書『死の舞踏』など)も捨てずにちゃんととってあります。寺山修司の本がわりとたくさんありました。高橋英夫の本も多いです。山口昌男や海野弘の本も献呈本かもしれないですが多いです。吉田健一の本が『書架記』(中公文庫)と『未知の世界』(ネッシーや古生物についての本)の二冊だけだったのはやや意外です。森銑三を愛読していたらしいのは、まあ、『異端の肖像』とか『悪魔のいる文学史』なんていうのは、『新橋の狸先生』とか『おらんだ正月』みたいなものなので、納得です。
推理(探偵)小説では小栗虫太郎と江戸川乱歩が多いですが、松本清張は三冊だけ、横溝正史に至っては二冊だけなのは、社会派とか本家と分家の骨肉の争いとかに興味がなかったからでしょう。
まんがは田河水泡とつげ義春だけで、手塚治虫(澁澤と同年)は一冊もないです。巌谷さんや種村さんは手塚と対談もしているのだから、せめて『ブラック・ジャック』だけでもよませればよかったのに。
『逃げろツチノコ』や『ニンフェット 12歳の神話』などもあります。それと、なぜか『王選手のひみつ』という本がでてきたそうで、画竜点睛、そう思いました。

ところで自分にとっては、澁澤龍彦というのは、いわば自閉症の守護聖者でありまして、たとえば自閉症児はある種の手触りなどにたいへん執着するので、ストッキングをひたすら撫で続ける子どもがいたりして、そうすると良識ある人々からは何かいかがわしいものとして非難されてしまうわけですが、本人はひたすら手触りのうちに宇宙の神秘を体感しているだけなので、いわゆる「中身」などには全く関心がないわけです。澁澤龍彦がたとえば『快楽主義の哲学』で説いたのは、世間の目など気にせずにストッキングを撫で続けろ、石ころを並べ続けろ、それが自閉症児にとっては世界との唯一のつながりなのだから、そういうことだったのではなかろうか、そうおもいます。


書物の宇宙誌 澁澤龍彦蔵書目録 05




この本をよんだ人は、こんな本もよんでいます:

富士川義之 『ある文人学者の肖像 ― 評伝・富士川英郎』














































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将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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