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上村勝彦 『インド神話 ― マハーバーラタの神々』 (ちくま学芸文庫)

上村勝彦 
『インド神話
― マハーバーラタ
の神々』
 
ちくま学芸文庫 マ-14-14 

筑摩書房
2003年1月8日 第1刷発行
2010年3月30日 第8刷発行
350p 付記1p
文庫判 並装 カバー
定価1,200円+税
装幀: 安野光雅
カバーデザイン: 神田昇和
装画: シヴァとパールヴァティー


「本書は一九八一年三月、東京書籍より刊行された。」



本書「文庫版あとがき」より:

「文庫版においては、二十年間で情況が変化した場合、及び若干の不適切な表現や誤植のある場合を除いて、原則として旧版の記述をそのまま再録した。注や参考文献もほぼそのままにした。」


本文中図版(モノクロ)45点。


上村勝彦 インド神話


カバー裏文:

「悠久の時間と広大な自然に育まれたインド神話の世界を原典から平易に再現した紹介書。ヴェーダ聖典中の神々と神話から始まり、大叙事詩『マハーバーラタ』を中心として重要な神話を選び出し、他の伝承と比較することにより、有名なインド神話を可能な限り網羅した。不死の霊水アムリタ(甘露)を手に入れるため、神々と悪魔たちとが協力し、マンダラ山を棒にして大海を攪拌する「乳海攪拌」の神話、雨を降らせるため天女が仙人を誘惑する「一角仙人伝説」、猪・人獅子・朱儒・ラーマ・クリシュナなどに化身して、悪魔と闘うものたちを助ける「ヴィシュヌの十化身」、最も崇拝を集めるクリシュナの偉業に関する伝説などを含む。」


目次:

まえがき

第一章 ヴェーダの神話
 一 ヴェーダ文献について
 二 リグ・ヴェーダの神々
 三 リグ・ヴェーダの創造神話
 四 ブラーフマナの創造神話
 五 ブラーフマナの神話
  (一) 洪水伝説
  (二) 天女ウルヴァシー
  (三) 山の翼を切ったインドラ
  (四) 三都を破壊するシヴァ
第二章 叙事詩の神話
 第一話 大海の攪拌(かくはん)と甘露
 第二話 竜を食うガルダ鳥
 第三話 金剛杵(ヴァジュラ)の由来
 第四話 海水を飲みほしたアガスティヤ仙
 第五話 ガンガー(ガンジス)の降下
 第六話 インドラの復権
 第七話 ヴァシシタとヴィシュヴァーミトラ
 第八話 南十字星になった王
 第九話 シャクンタラー物語
 第一〇話 天女ランバー
 第一一話 天女ティローッタマー
 第一二話 一角仙人の伝説
 第一三話 チヤヴァナの回春
 第一四話 生命を妻に与えたルル
 第一五話 海中火の伝説
 第一六話 シビ王の捨身
 第一七話 長寿の亀
 第一八話 蛙の奥方
 第一九話 毘沙門天と羅刹王
 第二〇話 スカンダ(韋駄天)の誕生
 第二一話 シヴァとパールヴァティー
第三章 ヴィシュヌ神話
 一 梵天がヴィシュヌの臍から生じたこと
 二 北極星となったドゥルヴァ
 三 ヴィシュヌの化身(アヴァターラ)
  (一) 猪となったヴィシュヌ
  (二) 人獅子となったヴィシュヌ
  (三) 亀となったヴィシュヌ
  (四) 朱儒となったヴィシュヌ
  (五) 魚となったヴィシュヌ
  (六) ラーマとなったヴィシュヌ
  (七) パラシュラーマとなったヴィシュヌ
  (八) クリシュナとなったヴィシュヌ
  (九) ブッダとなったヴィシュヌ
  (十) カルキとなったヴィシュヌ
第四章 クリシュナ伝説
  (一) ヴィシュヌ神の降臨
  (二) クリシュナの誕生
  (三) 幼児クリシュナ
  (四) クリシュナの少年時代
  (五) カーリヤ竜を退治する
  (六) 牧女たちの衣服を奪う
  (七) ゴーヴァルダナ山を持ち上げる
  (八) カンサの誅殺
  (九) クリシュナの結婚
  (十) プラデュムナ

参考文献
文庫版あとがき
事項索引
神名・人名索引




◆本書より◆


第一章より:

「インドラの悪竜退治は一回きりの「歴史的な」出来事ではなく、周期的に繰り返される。インドラの悪竜退治の神話の根底をなすものは、周期的に繰り返される天地創造神話であると思われる。エリアーデによれば、悪竜ヴリトラは、あらわでないもの、形なきものの象徴であり、天地創造以前に存在するカオスを表すという。インドラは悪竜を殺すことにより、天地開闢のわざを繰り返しているのである。この意味で、インドラはバビロニアの主神マルドゥクに比較され得る。マルドゥクはカオスの海竜ティアーマトを殺して、天地を創造した。かくて、インドラ神話の背後には、しばしば大宇宙の創造・維持に関する意義が潜んでいるとされる。」

「『リグ・ヴェーダ』(四・一八)に、インドラの出生と不遇な青年時代に関する詩が見られる。インドラは母の脇腹から生じたが、母は彼を捨てて去った。彼はトゥヴァシュトリ(工巧神、おそらく彼の祖父、あるいは父)の家で、百頭の牝牛に値する神酒ソーマを飲んでその怒りを買い、また自分の父を殺した。彼はまたヴィシュヌ神の援助を得てヴリトラを殺す。父を殺した彼は神々の同情を失い、不遇のうちに放浪する(後代の神話では水中に隠れる)。彼の妻もつらい経験をする。しかし、その時、鷲がソーマ酒をもたらして、それを飲んで活力をとりもどした彼に黄金時代がおとずれる。」
「『リグ・ヴェーダ』において最高神であったインドラの地位は、後代になるにつれて下落する。」

「ヤマ(Yama)は最初の人間で、ヴィヴァスヴァット(Vivasvat, 太陽神)の息子とされ、『アヴェスター』におけるウィーウァフウァント(Vivahvant)の子イマ(Yima)に相当する。しかし、『リグ・ヴェーダ』においては、最初に死んで死者の道を発見した点が強調され、死者の王として最高天にある楽園を支配するとみなされる。注目すべきは、ヤマの王国が歓楽に満ちた理想境とされた点である。死者の霊はヤマの使者である二匹の犬に導かれてこの楽土に赴き、祖霊(ピトリ)たちとともに楽しく暮らす。後代ではヤマの領土は南方の地下に移り、死の神、死者の審判者となり、仏教にとり入れられて閻魔と音写された。」

「『リグ・ヴェーダ』のうちで比較的後期に成立したとみられる若干の讃歌において、宇宙創造に関する見解が説かれている。」
「創造神が黄金の胎児(ヒラニヤ・ガルバ)として太初の原水の中に孕まれて出現したとする説がある。しかし、その神の名は伏せられたままで、「誰?」という疑問詞で呼ばれている(一〇・一二一・一―九)。この讃歌の最後に、創造神としてプラジャーパティの名が挙げられるが(一〇・一二一・一〇)、その詩節はプラジャーパティが根本神格となったブラーフマナ時代以後に付け加えられたものとみなされる。黄金の胎児はブラーフマナ文献の黄金の卵の先駆とみられ、またその原型は諸民族の創造神話に現れる宇宙卵に対応する。」

「ウパニシャッド文献には多種多様の創造神話があり、それらにここで言及する余裕はないが、非常に興味ある一神話のみをとり上げて紹介することにする。

 この一切はプルシャ(原人)の姿をとったアートマンのみであった。彼はあたりを見まわしたが、自分以外のものを何も見出さなかった。彼は最初に、「ここに私がいる」と言った。それゆえ、彼は「私」という名になった。だから今日でも、たずねられたら人は「私は……」と最初に言ってから他の名前を告げるのである。
 彼は恐怖した。だからして、独りでいる者は恐怖するのである。しかし、誰も他にいないのだから恐れる必要はないと考え、彼の恐怖はおさまった。
 しかし彼は楽しくなかった。だからして、独りでいるものは楽しくないのである。彼は第二のものを欲した。彼は男女をあわせただけの大きさであった。そこで彼は自己を二等分した。それから夫と妻が生じた。かくて空虚は妻によって満たされた。彼は彼女を抱き、それから人類が生まれた。
 彼女は考えた。――彼は自身から私を生んだのに、どうして私を抱くのか? よし、私は隠れよう。
 そこで彼女は牝牛になった。しかし彼は牡牛になって彼女を抱き、それから牛たちが生まれた。
 同様にして彼らは家畜たちを作り、更に神々をはじめとする一切のものを創造する。(『ブリハド・アーラニヤカ・ウパニシャッド』一・四)」



第二章より:

「アシュヴァメーダは馬を犠牲獣とする祭式で、国王の絶大な権力を示すために催される国家的祭典である。」
「犠牲用の馬は宇宙や自然現象の象徴とみなされている。ブラーフマナの時代の人々は、この祭式を正しく実行することによって宇宙の諸現象を支配することができると考えたのである。」
「まず馬が選ばれて浄(きよ)められる。それからその馬を北東の方角(神々にいたる道)に放ち、一年の間、自由に歩きまわらせる。王子たちが軍隊をひきつれてその後を追う。(中略)一年後に馬をつれ帰り、それを殺し、第一王妃がその死骸とともに寝る。その後、馬は切断され分配される。儀式は沐浴と、祭官たちへ報酬を給付することで完了する。」





















































































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◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

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尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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