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『マハーバーラタ ナラ王物語』 鎧淳 訳 (岩波文庫)

『マハーバーラタ 
ナラ王物語
― ダマヤンティー姫の
数奇な生涯』 
鎧淳 訳
 
岩波文庫 赤/32-067-1

岩波書店 
1989年11月16日 第1刷発行
1993年1月8日 第5刷発行
197p
文庫判 並装 カバー
定価410円(本体398円)


本書「まえがき」より:

「本邦訳の底本としたのは、W. Caland: Sāvitrī und Nala, zwei Episoden aus dem Mahābhārata. Text [Roman] mit kurzen erklärenden Noten und Glossar. Utrecht 1917、二十四―八十五頁所収の Nalopākhyānam サンスクリット原文である。」


ナラ王物語


カバー文:

「絶世の美女ダマヤンティー姫は婿選びの式でかねて恋いこがれていた美貌の貴公子ナラ王を夫に選ぶが、嫉妬に狂うカリ王にとりつかれたナラ王は狂気のように賭けつづけ、ついには王国までも失ってしまうのであtる。――古代インドの長篇叙事詩『マハーバーラタ』中もっとも美しい愛の物語の原典訳。」


目次:

まえがき 

ナラ王物語

訳註
解説 
 一 『マハーバーラタ』とは何か
 二 『ナラ王物語』について




◆本書より◆


「話かわって、ビーマ王の姫君がニシァダ国王を夫に選んでから、大通力をもつ四方の守護神たちは、天上界に赴く道すがら、カリ魔王とともにやって来るドヴァーバラに出会いました。そこで、魔神ヴァラ、ヴリトラを討ち平らげた剛勇のインドラ神は二人を見て、カリ王に尋ねました。
 「カリ王よ。ドヴァーバラをともに、そちはいずれに赴こうというのか、申すがよい。」
 すると、カリ王はインドラ神に答えました。
 「ダマヤンティー姫の婿選びの式にまいりまして、必ずや姫を妻に申し受けようと存じます。と申しますのも、わたくしは姫に首ったけだからです。」
 インドラ神は笑いながら、カリ王に申しました。
 「婿選びの式はとうに終わった。われらが目の前で、姫はナラ王を夫として選んだのじゃ。」
 こうインドラ神に言われて、片やカリ王は憤りに満ち、神々一同を呼び集めて、そこでこのように訴えました。
 「神々の中から、姫が夫として人の子を選んだことについて、姫に重罰を課するのがふさわしいかと存じます。」
 カリ王にこう言われて、片や神々は答えました。
 「ダマヤンティー姫がナラ王を選んだのも、われらが承知の上でのこと。およそ、十善の徳を具えたナラ王に、身を任せぬ乙女などあろうものか。
 古来の掟一切に通じ、正しく誓戒を保ち、四つのヴェーダ聖典全部と、それに五番目として古譚(こたん)とを修め、その館で古来の掟通り営まれる供犠祭を神々常に嘉(よみ)し、また生類への慈しみを好しとし、不快虚飾の言を語らず、誓固く、練達、堅固心、寛仁大度、苦行、廉潔、克己、心の静安は必定で、虎のごとく雄々しい武士、四方の守護神たちにも並ぶ国王――かかる姿のナラ王を、万一呪わんと思うものあれば、カリ王よ、そは己れを呪う愚か者、己が手で己れを損(そこな)うであろう。かかる美徳のナラ王を、万一呪わんと思うものあれば、カリ王よ、そは悲惨な地獄に落ち、測り知れぬ深淵に沈むであろう。」
 こうカリ王とドヴァーバラとに言った後、神々は天に上ったのでした。
 さて、神々が行ってしまうと、カリ王はドヴァーバラに申しました。
 「わしは我慢がならぬ。ドヴァーバラよ。わしはナラ王の身に取(と)り憑(つ)いてやる。奴を王位から追い落してやる。奴がビーマ王の姫君と戯れることはなくなるだろう。君としても、賽子(さい)の目に入り込み、助っ人をしてくれたまえ。」」
「このようにカリ王はドヴァーバラと約束を取り決めた後、直ちに、ナラ王の治める国にやってまいりました。カリ王は始終ナラ王の隙(すき)をうかがって、長い間ニシァダ国に留まっておりました。すると十二年目にして、ナラ王に取り憑く隙を見つけたのです。ニシァダ国王が小用をたした後、手、口をすすいだまま、両足の浄めをせず、朝夕のお勤めをしたのです。そこで、カリ王はナラ王の身体に取り憑きました。
 カリ王はナラ王の身体に取り憑いた後、姿を変え、プシュカラ王子の許に出かけて行って、プシュカラ王子にこのように申しました。
 「さあ、ナラ王と賭(かけ)をするんだ。賽子賭博(さいとばく)で御身はナラ王に勝を占めよう。というのは、御身にはわしが付いているからだ。ナラ王から王権を勝ち取り、ニシァダ国を我が物にするがよい。」
 プシュカラ王子はといえば、カリ王にこう言われたのでナラ王の許に赴き、カリ王もまた、役牌(やくはい)に姿を変えて、プシュカラ王子につき従いました。
 敵将を仕留める兵との異名をもつ弟プシュカラ王子はといえば、偉丈夫ナラ王の許に着くと、「二人で賭をしよう。この役牌で」と、繰り返し、繰り返し促しました。すると誇り高いナラ王は、ダマヤンティー妃が目でじっと見詰め、合図しているにも関わらず、その挑戦を堪え切れなくなりました。王は、今が賭どきだと思ったのです。
 カリ王に取り憑かれたナラ王は、そこで黄金、貴金属や、乗物、馬、衣服をかけて、負けてしまいました。しかし、戦では常勝の王が賽子の熱に浮かされて、かけ続けるとあっては、友人たちの誰も王を止めることはできなかったのです。
 そこで、(中略)国民が皆、賭に狂った王を諫(いさ)め止めるため、大臣たちとともに会いにやってまいりました。すると側近の召使がダマヤンティー妃の許にまいって、注進いたしました。「お妃様。只今、町のものが子細あって、ご門の所にまいっております。ニシァダ国王様にご上奏ください。臣下一同が、ものの道理も人生の目的も、よくお弁(わきま)えの王様のご乱心に我慢があんらず、まいっております」と。
 そこで、苦悩にやつれ、憂いに心消え果てんばかりのダマヤンティー妃は、涙に湿った声でニシァダ国王に申しました。
 「王様。国民が国王様を思う気持から、大臣の方がた、御皆様を連れ、あなた様にご拝謁(はいえつ)を願ってご門の所を動きません。そのものに、どうぞご拝謁を賜わってやってくださいませ」と重ね重ね訴えました。
 このような憂き目に会って、こうも涙ながらにかき口説く眉目麗しい妃に、カリ王に取り憑かれた王は一言も答えませんでした。そこで大臣たち一同も町に住む人々も、「これでお仕舞いだ」と悲しみに胸も潰れる思いで、鼻白(はなじろ)み、住処(すみか)に帰ってしまいました。
 そこで、(中略)プシュカラ王子とナラ王の例の賭が始まり、何ヵ月も続きました。しかし誉れ高き王ナラは勝てませんでした。」


























































































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Author:ひとでなしの猫
 
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なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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