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ギヨオム・アポリネール 『贋救世主アンフィオン』 辰野隆・鈴木信太郎・堀辰雄 共訳

ギヨオム・アポリネール 
『贋救世主アンフィオン
― 一名ドルムザン男爵の
冒険物語』 
辰野隆・
鈴木信太郎・
堀辰雄 共訳


沖積舎 
2005年9月12日 発行
96p 「おことわり」1p
21×15cm 角背紙装上製本 カバー
定価2,500円+税
装釘: 藤林省三
挿画: 北川健次



「正誤表」より:

「カバー (正)Yutaka Tatsuno (誤)Takashi Tatsuno」
「本書は野田書房版(昭和11年刊)を新装版として新字体にし、再刊したものである。」



新字・旧かな。新たに北川健次氏によるコラージュ挿画6点が付されています。


アポリネール 贋救世主アンフィオン 01


帯文:

「幻想詩人アポリネールの物語
描き下ろし挿画/北川健次
アポリネールの夢のスケッチ〈異端教祖株式会社〉の束から最も幻夢的な
黒い笑いに満ちた一編を名共訳で贈る。」



目次:

贋救世主アンフィオン
 案内人
 美しい映画
 ロマネスクな葉巻
 癩病
 コックス市
 遠距離触覚



アポリネール 贋救世主アンフィオン 02



◆本書より◆


「案内人」より:

「――あらゆる芸術の教育を受けて、俺はそのいづれにも長じてゐる。しかし、あらゆる芸術の前途はすでに行詰まつてゐる。画家として名を成すことに絶望して、俺は全部画を焼いた。詩人の栄光を断念して、約十五万行の詩を引き裂いた。かくて美学における自由を獲得して、俺はアリストテレスの逍遥学派に基づいた新しい芸術を発明したのだ。その芸術をアンフィオニイと名づけた。」

「さて、これでもつて、アンフィオニイ芸術の歴史的起原とその神話的与件とは、はつきり示されたことと思ふ。更に俺はアンフィオニイ芸術そのものを説明して行かう。
 この芸術の楽器とその素材は、都会だ。つまり、アンフィオン作家乃至その愛好者(ディレッタント)の魂の中に、詩、音楽、其他と同じやうに、美と崇高とに属する感情を喚起するやうな方法でもつて、都市の一部を歩きまはることにあるのだ。
 アンフィオン作家によつて構成された作品を保存して、再び演奏し得るためには、都会の地図の上に辿るべき道筋を、非常に正確に指示する線によつて、書き留めておけばいいのだ。」



「遠距離感覚」より:

「その奔放な想像力や没常識なやり口は、不安な点が無いでもないが、何はともあれ、私は強い興味をこの男に感じたのであつた。中学校の同級生で、ただ簡単にドルムザンと呼ばれてゐた頃、二人を結びつけた友情や、その後幾度となく邂逅して、その奇怪至極な性格を批判する機会が与へられたことや、その心配や懸念を振り落したやうな気持や、一種の無秩序きはまる博学振りや、非常に心持のよい柔和な手だてや、全てが、もう一度会ひたいものだといふやうな感を、時々、いだかせる原因となつたのである。」



◆感想◆


「贋救世主アンフィオン」は、短篇集『異端教祖株式会社』所収の、ドルムザン男爵を主人公にした連作短篇です。
第一話「案内人」は散歩芸術宣言です。アポリネールの詩「地帯」なども一種のアンフィオニイ芸術の記録であるといえます。後半はプラクティカル・ジョークというか、ガイド役を務めるドルムザン男爵が観光客にウソの説明をしてパリ見物の時間を短縮する話です。
第二話「美しい映画」は、実際の殺人を撮影した映画(スナッフ・フィルム)で大儲けする話で、その犯人として無実の罪で死刑宣告された「近東人」の処刑シーンを追加上映してさらに大儲けします。
第三話「ロマネスクな葉巻」は、葉巻の中から手紙が出てくる話で、乱歩の「二銭銅貨」に通じるものがあります。
第四話「癩病」は、言葉を聞き間違える話ですが、このあたりも探偵小説テイストです。
第五話「コックス市」は、カナダに新都市を建設する話ですが、冬の寒さで食べるものがなくなって市民全員が集団自殺するものの、自殺し損なった主人公は恋人の死体を食べて生き延びます。
最終話「遠距離触覚」は、「オノレ・シュブラックの失踪」のヴァリエーションというか、同時に異なった場所に出現する機械を発明する話で、「贋救世主」のタイトルは本篇に由来しています。




こちらもご参照ください:

アポリネール 『異端教祖株式会社』 窪田般彌 訳








































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分野: パタフィジック。

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