生田耕作 編訳 『愛書狂』

「きみはビブリオマニア(愛書狂)というのを知っていますかね?」
「愛書狂とは(語源的には、ビブリヨン、つまり書物と、熱狂(マニア)との合成語で)、人類、すなわち両足動物、つまり人間の一変種です」
「二本足の、羽のない、この生物は、普通はセーヌの河岸や並木通りを彷徨し、古書店の陳列棚があれば必ず立ち止まり、そこにあるすべての本に手を触れる。」

(アレクサンドル・デュマ 「稀購本余話」 より)


生田耕作 編訳 
『愛書狂』


白水社 
1980年11月20日 印刷
1980年12月5日 発行
245p 図版4葉
菊判 仮フランス装 貼函 
定価2,800円
装幀: 野中ユリ



本書「あとがき」より:

「古今東西を通じて恋愛が小説の中心的主題であるとすれば、さらに狂的な情熱「本気ちがい」が作家たちの関心を引かぬ理屈はない。しかるに、案に相違して、ビブリオマニアを主人公に取り上げた作品の数たるや、それほど多くはない。(中略)その理由たるやいとも簡単。(中略)恋愛はごくありふれた、万人のあいだに行き渡った病であるのに反して、「愛書病」のほうはよほど悪い星の下に生まれ合わせた不運者だけが背負わされる業病のたぐい、一般読者にとってはとんと実感の湧かない例外的現象であるところに、もっぱらその原因は求められよう。」
「ここに、古本道楽の黄金時代、十九世紀フランスの名だたる書物狂いが遺した「愛書小説」の名篇を拾い集め、ささやかな一本を編み、この高貴な業病に斃れた不幸なる少数者の鎮魂に捧げたい。」



本文中図版22点。


生田耕作 愛書狂 01

函。


生田耕作 愛書狂 02

本体表紙。


生田耕作 愛書狂 03


目次:

愛書狂 (ギュスターヴ・フローベール)
稀購本余話 (アレクサンドル・デュマ)
ビブリオマニア (シャルル・ノディエ)
愛書家地獄 (シャルル・アスリノー)
愛書家煉獄 (アンドルー・ラング)

フランスの愛書家たち――アンドルー・ラング著『書物と書物人』に拠る
作者紹介
訳註
あとがき

本文挿絵: O・ユザンヌ『巴里の猟書家』から
別丁図版: 『仏蘭西風菓子製法』エルゼヴィル版(1655年刊)題扉・口絵/ポンパドール夫人旧蔵本家紋入表紙/グロリエ旧蔵アルドウス版表紙(1559年)



生田耕作 愛書狂 05



◆本書より◆


「フランスの愛書家たち」より:

「文学への関心とは別個に、書物をそれ自体独立したものとして鑑賞する、すなわちその外的形態、用紙、印刷、装幀などを愛(め)で、もっぱらその造形的美しさ、稀少性、保存程度などに書物の価値基準を置く伝統は、他のいかなるヨーロッパ諸国よりもフランスにおいて特に顕著であり、根強く行き渡っている。(中略)イギリス人は読みたい本を図書館から借り出し、どのようなけばけばしい布装本をあてがわれても平気なものだ。フランスでは然(さ)にあらず、自分で本を買い、お気に入りの製本師にモロッコ革の表紙で装わせ、雅趣豊かな美しい図案を施し心ゆくまで造本の贅をつくすのである。彼の国では書物は終生の友。英国では一、二週間の客人にしかすぎない。フランスの文豪のうちには古書蒐集家として知られる人も少なくなく、書物への愛に関するまとまった文章を物している。フランスの文学と歴史は愛書家の運・不運、彼らの掘り出し物、発見、落胆にまつわる逸話であふれている。現時点でも、ちょっとした図書館くらい造れそうなほどの本にかんする本が私たちの眼前に横たわっている。」

「並みの資産に生まれ合わせた蒐集家は、猟書のやり方までが〈狩り出し〉に似ている金持ち連中とはもともとしっくりいきようがない。「河岸」の均一本の棚を覗き込み、文学的真珠を求めて埃まみれの箱の中に潜り込む、野性の獲物をねらう見すぼらしい狩人こそ我らの仲間である。」



生田耕作 愛書狂 04



◆本書収録作品概要◆


・愛書狂
ギュスターヴ・フローベール十代半ばの作。バルセロナで起った愛書家連続殺人事件。本盗人ドン・ヴィンセンテ事件の実話が下敷きになっている。

・稀購本余話
アレクサンドル・デュマの『回想録』より。劇場で出会った男(シャルル・ノディエ)から「エルゼヴィル版」稀購本についての講義を受ける。

・ビブリオマニア
シャルル・ノディエ作。死に至る病「愛書狂(ビブリオマニア)チフス」に罹患した男の話。

・愛書家地獄
シャルル・アスリノーはボードレールの最初の伝記作者。悪魔のいたずらで無価値な本を法外な高値で競り落としてしまい、代金を支払う為に大事な蔵書を二束三文で手放すはめになる……という悪夢を見た愛書家の話。

・愛書家煉獄
アンドルー・ラングはスコットランド生まれ。本篇はアスリノー「愛書家地獄」の英語圏読者向けの翻案ダイジェスト版。



こちらもご参照下さい:

アンドルー・ラング 『書斎』 生田耕作 訳




































































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ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

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難破した人々の為に。

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将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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