アンドルー・ラング 『書斎』 生田耕作訳 (新装版)

「到るところに私は平安を探し求めた、しかしどこにもそれを見出せなかった」とは聖トマス・ア・ケンピスの言葉です。しかし、すぐそのあとでこう言い直しております。「書物のある片隅を除いては」と。」
(アンドルー・ラング 『書斎』 より)


アンドルー・ラング 
『書斎』 《新装復刊》
生田耕作 訳


白水社 名著リクエスト復刊 
1996年6月10日 印刷
1996年6月25日 発行
189p 口絵1葉 図版10葉 
菊判 丸背紙装上製本 カバー 
定価3,000円(本体2,913円)
装幀: 菊地信義



本書「訳者後記」より:
 
「アンドルー・ラングの『書斎』 The Library, 1881 は、読書人にとって、この上なく楽しい読み物である。『書物と書物人』 Books and Bookman, 1886 と並んで、著者の書物随筆中の代表作とされ、読書と書物に真面目な関心を有する人間なら、一度は必ず繙(ひもと)くべき、「書籍学(ビブリオグラフィ)」の古典的名著として知られている。」
「第一章「猟書家の弁」では、古本漁りの楽しみと効用、コレクターの生態、英仏の古書店風景、掘出し物にまつわる数々の挿話が、一方ではすぐれた作家でもあるラングならではの生彩に富んだ筆致で語られている。」
「第二章は、いよいよ「書斎」。人それぞれの資力に応じた理想的書斎の設計、室内の調度品、環境、書棚の作り方、書籍の保存法、それに付随した蔵書票の様々などについて、本格的な「書斎論」が展開されるくだりとなる。」
「つづいて第三章「珍しい本・美しい本」では、ヨーロッパの長い造本技術の伝統を振り返り、中世の彩飾写本、揺籃期本、アルドゥス版、エルゼヴィル版など、代表的実例に即して、美しい本、貴重な本を成立させる諸条件が具体的に述べられる。」
「終章、「挿画入り本」では、(中略)従来軽視され、なおざりにされてきたブック・コレクティングの新発見領域に読者を誘う。
 ただしこの第四章のみは、(中略)ラング自身の執筆ではなく、(中略)邦訳では、第二章に挟入された、その分野の専門学者の執筆になる「手写本の校合法」及び「初期刊本」の項目(中略)ともども割愛し、代わりにラングの別著『文学を語る手紙』 Letters on Literature, 1889 から、本書の内容によりふさわしい一篇を選んで巻末に添えることにした。」



生田耕作訳『書斎』の初版は1982年、『愛書狂』『書痴談義』と共に、生田耕作編訳による白水社の愛書三部作の一冊で、初版は他の二冊同様、貼函入り仮フランス装の瀟洒な装幀でした。

別丁口絵・図版計11点(うちカラー1点)。


ラング 書斎 01


帯文:

「■白水社■
名著リクエスト復刊
19世紀の古書蒐集趣味の奨励者として名高い著者が記す、読書人たる資格を得るためには必ず一度はひもとくべき「書籍学(ビブリオグラフィ)」の名著。」



目次:

第一章 猟書家の弁
第二章 書斎
第三章 珍しい本・美しい本

若き愛書家への手紙

訳者後記

口絵
 ウォルター・クレーン筆
図版
 ロンドンの古書店(ゲオルグ・シャーフ筆)
 クルックシャンク作木版画(ディケンズ『オリヴァー・トウィスト』挿絵)
 セーヌ河岸の露天古本屋(絵葉書)
 Three-decker 本 コレクション(エリック・キール氏蔵) (カラー)
 掘出し物(カヴァルニ筆)
 初期「華麗様式(ア・ラ・ファンファル)」装幀 淡黄褐色仔牛皮装 1550年頃
 アルドゥス版『ヒュプンエロトマキア』1499年刊、挿絵入り頁
 ドラ作『接吻』1770年刊 エーザン挿絵
 アルドゥスの工房を訪れたグロリエ フランソワ・フラマン筆
 アンリ二世とディアーヌ・ド・ポアティエの頭文字をあしらった黒モロッコ皮装幀、1550年頃



ラング 書斎 03



◆本書より◆


「第一章 猟書家の弁」より:

「蒐書の楽しみは狩猟の楽しみに似ているとつくづく思う。「猟書」と言うし、ラテン語の古い格言にも「人はこの森での狩りに倦むことを知らない」とある。しかしなんといってもいちばん近いのは魚釣りだろう。釣り師がツイード川やスペイ川の岸辺を行くように、蒐集家はロンドンやパリの街路を行く。」
「古書店の授けてくれる楽しみは変化と魅力に満ちている。ロンドンでなら大英博物館とストランド街の間に薄汚れた網の目のように広がる横丁のほとんどで、この楽しみが味わえる。それ以外にも滅多に人通りのないひっそりとした密猟地を愛好家が自分で見つけ出せる余地もまだまだ残されている。パリでならセーヌ河の築堤の上に八十人からの露店古本屋(ブキニスト)が箱を並べる、河岸(ケエ)の長いつらなり。どんな小さな田舎町でも、たまに値打ちのある珍本が、古道具屋などに潜んでいるのにぶつかることがあるものだ。」
「猟場は古本屋の店頭だけに限られない。(中略)古書目録が、自宅に居ながらにして猟の楽しみを味わせてくれる。蒐集家は目録を熱心に読み、望みの獲物が見つかれば鉛筆で印をつけ、折り返し売り手に宛てて手紙を書くか、あるいは電報を打つ。不幸にして大抵の場合は、たぶんどこかの書店の代理人あたりに先を越されてしまっている。」



「第二章 書斎」より:

「埃という代物は本を汚すだけに止まらず、スペンサー氏なら蠧(しみ)の適性環境とでも名づけそうなものを作り出すように思われる。蠧(しみ)の仕事は一目瞭然、誰の目にも明らかである。表紙と頁を貫いて器用に穿たれた丸い穴のおかげでどれだけ多くの珍しい貴重な書物が台無しにされたことか! だが問題の虫の性質については、識者の意見が大きく岐れる。この天災はギリシア・ローマ時代から知られていたらしく、ルキアノスも話題に取り上げている。ブレイズ氏はオックスフォード大学図書館員の手で仕射められた、白い蠧のことを書いている。ビザンチンでは黒い種類がはびこっていた。文法学者のエヴェナスは、黒い蠧を詰(なじ)った警句詩を残している。」
「博識なメンツェリウスは連れ合いを呼ぶ雄鶏のような声で蠧が鳴くのを聞いたことがあると言っている。「どこかの鶏の叫び声だったのだろうか、それともわたしの耳鳴りに過ぎなかったのか。その瞬間でさえ、まったく自信は持てなかった、ところがこの目で私は、ペンを走らせていた紙の上に、まさしく雄鶏そっくりにさえずりつづけている一匹の小さな虫の姿を見つけたのである。私が拡大鏡を近づけ、目を凝らして観察を始めると、やっと鳴き止んだが。おおよそだに(引用者注: 「だに」に傍点)くらいの大きさで、灰色のとさかがあり、頭は低く、胸に垂れ下がっている。雄鶏めいたひびきは、両方の羽をかち合わせてたてる物音だったのだ」。こんなふうなことをメンツェリウスは、また他にも同じ主旨のことを、『諸国学会の想い出』(ディジョン刊、一七五五―五九、四ツ折判十三巻)の中で記している。ところが、われわれの時代になると、その途の権威ブレイズ氏が「カクストン記念会」でカクストン礼賛者たちの前に生きた蠧の実物を展示したいと思っても、蠧を見たことがあるという人すら稀な有様で、ましてその囀りを耳にした人にいたってはさらに寥々(りょうりょう)たるものであろう。」
「蠧は製本屋の使う糊が好物だが、ダランベールの付記によればアブサン酒が苦手らしい。ブレイズ氏はまた今出来の悪質紙は紙魚すら見向きもしないことを発見している。」



ラング 書斎 04



原文はこちら:

The Project Gutenberg Etext of The Library, by Andrew Lang
The Project Gutenberg Etext of Books and Bookmen, by Andrew Lang































































































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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