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『稲垣足穂の世界  タルホスコープ』 (コロナ・ブックス)

「星の子が行方知れず
と月なげく
天上界の夕まぐれ時
――イナガキタルホ」

(『稲垣足穂の世界』 より)


『稲垣足穂の世界 
タルホスコープ』
 
コロナ・ブックス
編集: 清水壽明 


平凡社 
2007年3月23日 初版第1刷発行
126p 
B5変形判(16.6×21.7cm)
並装 カバー
定価1,600円(税別)
装丁・レイアウト: 中村香織


「本書は、『太陽』(1991年12月号)「稲垣足穂の世界」をもとに加筆し、新原稿・図版を追加して再構成したものです。」



本書は、足穂作品の42のキーワードを主題にしたエッセイと、桑原弘明・勝本みつる・建石修志ら美術家による足穂へのオマージュ作品、関連図版、「タルホ座流星群50」(足穂関連人物辞典)によって構成されています。
本書はもっていなかったので、ヤフオクで798円(3,000円以上で送料無料)で出品されていたのを落札しておいたのが届いたのでよんでみました。
浅川マキさんが「シガレット」の項目を執筆しているのが購入の動機でしたが、主にレコーディング・エンジニアの吉野金次さんの話で、足穂については一言も触れられていなかったのでびっくりしました。


稲垣足穂の世界 タルホスコープ 01


目次:

はじめに からっぽの箱から

TARUHO SCOPE
1 箱 (種村季弘)
2 郷愁 (あがた森魚)
3 ヒコーキ (堀切直人)
4 弥勒 (松山俊太郎)
5 天上 (高橋睦郎)
6 模型 (茂田眞理子)
7 シネマトグラフ (巖谷國士)
8 星 (野中ユリ)
9 天体 (楠田枝里子)
10 月 (竹宮恵子)
11 美少女 (加藤郁乎)
12 水晶 (片山令子)
13 ヒップ (谷川晃一)
14 かものはし (荒俣宏)
15 髑髏 (養老孟司)
16 科学 (寮美千子)
17 ポン彗星 (大崎啓造)
18 セイント (安藤礼二)
19 天狗 (須永朝彦)
20 少年 (川本三郎)
21 物の怪 (東雅夫)
22 イソギンチャク (蜂飼耳)
23 サドル (渡辺一考)
24 数学 (森毅)
25 三角形 (高橋宏輔)
26 菫色 (松岡正剛)
27 色鉛筆 (矢川澄子)
28 におい (村田喜代子)
29 壜 (谷川渥)
30 シガレット (浅川マキ)
31 チョコレット (白石かずこ)
32 未来派 (田之倉稔)
33 パル・シティ (中村宏)
34 人形 (山田せつ子)
35 キネオラマ (久世光彦)
36 ヴァリアント (高橋孝次)
37 電飾 (椿實)
38 童話 (高原英理)
39 薄板界 (寺村摩耶子)
40 ゼンマイ (大辻清司)
41 放浪 (龍膽寺雄)
42 桃山御陵 (萩原幸子)

タルホの鞄
1 ヒコーキ
2 フィルム
3 A感覚
4 レッテル&マーク

タルホ・ピクチュア展
TARUHO BOOKS COSMOGRAPHY
同人誌 (高橋信行)
TARUHO HISTORY

タルホ座流星群50 (大崎啓造、高橋孝次、安藤礼二、寺村摩耶子)




◆本書より◆


「星」(野中ユリ)より:

「星はなぜ美しいのか。超絶的に遠く、遥かな夜空に煌めく星。その光をみることは、逃れる術もなく、途方もない過去(の光)をみることである。そんな理屈を知るはるかに以前から、星族は、かつて我々があったところの或るものへの思い、あの「宇宙的郷愁」のみなもとだったのではないだろうか。」


「水晶」(片山令子)より:

「結晶と光沢と粗面を持った鉱物たち。それが小函に入れられて机から机へ回覧される時、少年だった彼は、いち早く接吻しないではいられなかったという。足穂はそんな少年だった。」
「こんな少年が成人し、そして親しい友人がこの世から立去るところに立ち合うことになった。水晶ときいて、すぐこの作品を思った。「幼きイエズスの春に」だ。そこには、哲学、科学、宗教学、あらゆる学問と、あの独特のダンディズムをもみんな後ろへ置いて、身ひとつで立っている足穂がいた。」
「「水晶物語」では、鉱物たちが、「人間という奴は一分くらいしか生きられないくせに……」と言うところがある。ほんとうに! でも、そのはかなさが、それゆえに結晶化していく様子を、わたしは「幼きイエズスの春に」の中に見るのだ。
 水晶とは掬(すく)っても掬っても指の間から零(こぼ)れていく水というはかなさが、きらきらと硬く永遠の形に結ばれたもの、という意味なのだから。
 少し前にそこにいた人が、ちょっと目を離したすきに、きえてしまう。これはいったい、どういうことなのだろうか。と、ふらふら考えていると、彼はふたたびダンディズムを纏(まと)って、それよりも問題なのは、「いつから此処に居るのか」なのだ、と言ってくる。
 足穂のダンディズムには、少年時代の知的快活さと幸福感がいつも向うに透けて見える。(中略)「俗人論」にあるように、足穂はすなわち、「人間性における宝石族」だったのだ。」



「セイント」(安藤礼二)より:

「身辺無一物、無所有という極限の地平で、あたかも電光に貫かれたようにはじめて脳裏に閃いた Saint 「聖者(セイント)」という五文字の言葉。どうしてもこの社会とうまく折り合うことができず、絶対の寂寥をたった一人で生きざるを得ない、寄る辺のない者たち。そのような「不思議な、世間法とは逆行しているかのような存在」こそまさに、「聖なる種族」を形づくるのである。現実の事物の彼方に、永遠を垣間見る者たち。「一瞬を永劫に」むすびつけ、「死」という概念さえ乗り越えることを可能にする「永遠の種族」、ダイアモンドとしての人間。彼らが生きるのはただ「心の国」のみである。物質世界を離れ、精神世界の「王」となった不滅の聖者たち。「弥勒」や「白昼見」に記された、場末の銭湯での、文字通り足穂的な「覚醒」の瞬間である。」


「チョコレット」(白石かずこ)より:

「はっきりいえることは足穂には他者がいないのだ。天知る、地知る、我知る、妖精知るなのだ。妖精は、ホントは、いないのだし、だがいるという仮説をたてた事により存在しているのだから仮説の作者、発案者である足穂が自分の創造、想像上の妖精の世話を最後までみなければならなくなる。」


「桃山御陵」(萩原幸子)より:

「いつだったか奥様と三人で話していた時、
 「僕は友だちのお布施で生きてきた」
 と先生が言った。
 「ようそうしてこられた」
 と、奥様は私に笑いかけながら、
 「やはり徳があるんですな」
 と、感心したように言った。」

「話しながら歩いた記憶はあまりなくて、先生がふいに口をひらかれるのだ。
 「僕の母は御飯の支度をしてくれなかった。『食べるのか』と言われれば、男は『いらない』と言う。そして地上を離れた架空にトーイランドを造ろうとした。僕は父だけの子」」

「改まった挨拶はしなくてもよいのであった。お部屋に入ると、先生はこちらを見て頷く、それだけなのだ。言っても言わなくてもよいことは、じゃまくさいし、そらぞらしいのではないだろうか。」

「先生はあいまいがきらいである。」
「そしてできるだけ正確にものを言うべきだ、と先生は思っている。
 歯医者へ行った時、
 「ちょうど一年ですね」
 と言われたら、
 「違います。一年と二日です」
 と答えて、笑われたそうである。」



稲垣足穂の世界 タルホスコープ 03


稲垣足穂の世界 タルホスコープ 02


稲垣足穂の世界 タルホスコープ 04


「新橋芸者小清」。この図版はたぶん足穂とは関係ないですが、ひょんなところでピンク・フロイドの海賊盤「Crackers」のジャケ写真の身元がわかったのは収穫でした。




こちらもご参照ください:

『タルホ事典』
萩原幸子 『星の声 ― 回想の足穂先生』
伊達得夫 『詩人たち ユリイカ抄』 (平凡社ライブラリー)
稲垣足穂/たむらしげる 『一千一秒物語』












































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Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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