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斎部広成 撰/西宮一民 校注 『古語拾遺』 (岩波文庫)

斎部広成 撰 
『古語拾遺』 
西宮一民 校注
 
岩波文庫 黄/30-035-1 


岩波書店 
1985年3月18日 第1刷発行
1991年9月5日 第8刷発行
231p 
文庫判 並装 カバー
定価460円(本体447円)


本書「凡例」より:

「本書は、天理図書館蔵、嘉禄本古語拾遺(天理図書館善本叢書『古代史籍集』所収。原本の第二紙及び第十・十一・十二紙の錯簡を訂したもの)を底本とした。」
「原文の構築に当っては、できる限り、斎部広成撰の当時にせまることを試みた。」
「本書は、まず訓読文を掲げ、脚注を付し、補注を施し、次に構築された原文(中略)を掲げ、脚注を付し、補注を施し、最後に解説を置く。」



本書「解説」より:

「古語拾遺は、平城天皇の朝儀についての召問に対し、祭祀関係氏族の斎部広成が忌部氏の歴史と職掌から、その変遷の現状を憤懣として捉え、その根源を闡明しその由縁を探索し、それを「古語の遺(も)りたるを拾ふ」と題し、大同二年(八〇七)二月十三日に撰上した書である。」


「補注」は二段組。新字。


古語拾遺


カバー文:

「老翁広成には何としても言い残さなくては死ねぬと思い定めたことがあった。斎部氏と中臣氏の携わってきた祭祀がいつしか中臣氏に集中している憤懣である。幸い平城天皇の召問を機に、国史・氏族伝承に基づきそれを「古語の遺りたるを拾ふ」と題して撰上した。時に大同2(807)年。記紀にない記載も含み研究史上多くの示唆に富む。」


目次:

凡例

古語拾遺(訓読文)
 序
 天地開闢
 天中の三神と氏祖系譜
 日神と素神の約誓
 素神の天罪
 日神の石窟幽居
 日神の出現
 素神の追放
 素神の霊剣献上
 大己貴神
 吾勝尊
 天祖の神勅
 天孫の降臨
 彦火尊と彦瀲尊
 神武天皇の東征
 造殿の斎部
 造祭祀具の斎部
 神籬を建て神々を祭る
 即位大嘗祭
 斎蔵と斎部
 国家祭祀と氏族
 崇神天皇
 垂仁天皇
 景行天皇
 神功皇后
 応神天皇
 履中天皇
 雄略天皇
 推古天皇
 孝徳天皇
 天武天皇
 大宝年中
 天平年中
 歴史の回顧
 遺りたる一
 遺りたる二
 遺りたる三
 遺りたる四
 遺りたる五
 遺りたる六
 遺りたる七
 遺りたる八
 遺りたる九
 遺りたる十
 遺りたる十一
 御歳神
 跋
訓読文補注

古語拾遺(原文)
原文補注

解説




◆本書より◆


「御歳神」「訓読文」:

「一(ある)いは、昔在(むかし)神代(かみよ)に、大地主神(おほなぬしのかみ)(脚注:「偉大な、その土地の主(支配者)たる神。」)、田を営(つく)る日に、牛(うし)の宍(しし)を以て田人(たひと)(脚注:「農夫」)に食はしめき。時に、御歳神(みとしのかみ)(脚注:「年穀(稲)の神。すなわち田の神。」)の子(こ)、其の田に至りて、饗(あへ)に唾(つは)きて還り、状(さま)を以て父に告(まを)しき。御歳神怒(いかり)を発(おこ)して、蝗(おほねむし)(脚注:「和名抄による。稲の害虫の総称。」)を以て其の田に放ちき。苗(なへ)の葉忽(たちまち)に枯(か)れ損(そこな)はれて篠竹(しの)に似たり。是(ここ)に、大地主神、片巫(かたかむなぎ)〔志止々鳥(しとととり)。〕・肱巫(ひぢかむなぎ)〔今の俗(よ)の竈輪(かまわ)及(また)米占(よねうら)なり。〕をして其の由(よし)を占(うらな)ひ求めしむるに、「御歳神祟(たたり)を為す。白猪(しろゐ)・白馬(しろうま)・白鶏(しろかけ)を献りて、其の怒(いかり)を解くべし」とまをしき。教に依りて謝(の)み奉る。御歳神答へ曰(のら)ししく、「実(まこと)に吾が意(こころ)ぞ。麻柄(あさがら)(脚注:「麻の皮を除いた茎。」)を以て桛(かせひ)(脚注:「つむいだ糸を巻きつける道具。カセフの連用名詞形。」)に作りて之(これ)に桛(かせ)ひ(脚注:「桛に糸を巻くことから、蝗の自由を束縛することの呪術か。」)、乃ち其の葉を以て之を掃(はら)ひ(脚注:「麻の葉で掃うのは蝗を掃う呪術か。」)、天押草(あめのおしくさ)(脚注:「ごまのはぐさ(胡麻葉草)の古名。押草だから押出す呪術。」)を以て之を押し、烏扇(からすあふぎ)(脚注:「檜扇のこと。檜扇だから扇ぎ出す呪術。」)を以て之を扇(あふ)ぐべし。若(も)し此(かく)の如くして出で去らずは、牛の宍(しし)を以て溝の口に置きて、男茎形(をはせがた)を作りて之に加え(脚注: 男根の形のものを作り、牛肉に添える。」)、〔是(これ)、其の心を厭(まじな)ふ所以(ゆゑ)なり(脚注:「御歳神の心を和めるためだ。一種の呪術。」)。〕薏子(つすだま)(脚注:「ハトムギ。今日ジュズダマともいう。」)・蜀椒(なるはじかみ)(脚注:「山椒(さんしょう)。」)・呉桃(くるみ)の葉及(また)塩を以て、其の畔(あ)に班(あか)ち置くべし(脚注:「田の畔に散布しておけ。防虫の効を説く。」)。〔古語に、薏玉は都須玉(つすだま)といふなり。〕」とのりたまひき。仍りて、其の教に従ひしかば、苗の葉復(また)茂りて、年穀(たなつもの)豊稔(ゆたか)なり。是、今の神祇官、白猪・白馬・白鶏を以て、御歳神を祭る(脚注:「五穀豊穣を祈念して白い動物を備える。」)縁なり(脚注:「神祇官での祈年祭。」)。」


「訓読文補注」より:

「饗に唾きて」
「御歳神に豊作を祈念してもてなしの食事(アエ)を献ったが、その農夫は豊穣祈念に捧げられた犠牲の牛の肉を食っていた(犠牲の牛の肉を食する習俗のあったことがこれで分る)ので、それを穢(けが)れとして、そのアエ(饗饌)に唾液を吐きかけたのである。」

「「片巫」は未詳。注のシトト鳥(ほおじろ)によって考えると、鳥を使って占う巫女の名を「片巫」と呼んだのであろう。和名抄では「鵐鳥」をシトトと訓み、鳥の名としている。観智院本名義抄に「〓(漢字:「神」冠+鳥)〔カウナイシトヽ〕」(僧中)とあるのは、カムナギシトトの音便形であるが、巫女的な鳥との認識があったものと思われる。」

「「肱巫」は未詳。注から想像すると、竈による占いと米による占いをする巫女のことか。とは言え、「竈輪」「米占」についても正確なところは分らない。前者については、竈の灰に燼(おき)を置いて、それが消えてゆく状態によって吉凶を占うという。後者については、池辺、新註の説――三河の石巻社・信濃の諏訪神社・遠江の高天神・越後の丹生神社・河内の枚岡社・越後の弥彦神社その他で行われる管粥の神事、すなわち用意された数箇の管中に、炊爨中の粥が沸騰現象によって充填されるかどうかで、その年の豊凶を占う――が大方の承認を得るであろう。」

「牛の宍を以て溝の口に置きて」
「牛肉を灌漑(かんがい)水の排水口に置くのは、農業生産の豊穣を祈願する牛殺しの呪術である。播磨国風土記、讃容(さよ)郡の条に、鹿の腹を割(さ)いて、その血に稲を播(ま)いたら、一夜の間に苗が生えたとある。この種の説話は、賀毛郡雲潤(うるみ)の里の条にも見える。血が肥料になるというのではなく、動物の血の呪力によって豊作を願う呪術であり、フレイザーも金枝篇で多くの事例を紹介している。日本では現存の民俗の中には残存していない。」





こちらもご参照ください:

アイリアノス 『ギリシア奇談集』 松平千秋・中務哲郎 訳 (岩波文庫)
西郷信綱 『古事記注釈 第一巻』
ウォールター・ペイター 『享楽主義者マリウス』 工藤好美 訳






































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