フェルナンド・ペソア 『ペソアと歩くリスボン』 近藤紀子 訳 (ポルトガル文学叢書)
「ここから数ヤード先に、マダレーナ通りがある。この道を上って右へまがると、リスボン大聖堂 Sé Patriarcal にたどりつく。」
「この大聖堂は、さまざまな歴史的事件の舞台となったところでもある。たとえば、一三八三年の民衆蜂起の折には、司教ドン・マルティーニョ・アンネスが、女王ドナ・レオノール・テレスの政策に加担したため、この塔のひとつから投げ落とされている。」
(フェルナンド・ペソア 「リスボン観光案内」 より)
「フェルナンド・ペソア
『ペソアと歩くリスボン』
近藤紀子 訳
ポルトガル文学叢書 ⑨
彩流社
1999年7月10日 第1刷発行
2007年12月25日 第2刷発行
192p
四六判 丸背紙装上製本 カバー
定価1,900円+税
装幀: 渡辺将史
本書「訳者あとがき」より:
「本書は、Lisboa: o que o turista deve ver/what the tourist should see (Livros Horizonte, Lisboa, 1992)の全訳である。翻訳するうえでは、(原文である)英語をもととし、対訳として付された(この原稿の発見者でもある)マリア・アメリア・ゴメスのポルトガル語を、そのつど参考にした。さらに、旅程の目安として見出しを、理解の一助に脚注を、訳者の手で付けたことをおことわりしておく。」
モノクロ図版52点、地図2点。
ペソアの遺稿から発見された生前未刊行のリスボン観光案内(原文は英語)の全訳に、当時(1920年代)の絵葉書を中心とする図版が添えられています。巻末にポルトガルの研究者による「フェルナンド・ペソア博物館」案内および解説「ペソアのガイドブック――発見の経緯と背景」、リスボン地図、訳者あとがき。
本書はアマゾンで新品の取り扱いを再開していたので注文しておいたのが届いたのでよんでみました。今年出た同じ訳者によるペソア短編集の刊行に際して在庫本のカバーを付け替えたものだとおもいますが、本体は12年前の本なので新品なのに黴臭がありました。

帯文:
「詩人の
眼で
活写した
魅力的な
ポルトガル
観光案内!
1920年代に
“ヨーロッパ西端の小国”を
世界に知らしめたいという
“切なる想い”で書かれた未刊のガイドブック。
翻訳出版にあたり当時の図版と現在の写真で立体編集。」
帯背:
「詩人のまなざし!」
目次:
リスボン観光案内
いざ入国
リスボンの表玄関――コメルシオ広場
町の心臓――ロシオ
ポルトガルの大政治家――ポンバル侯爵広場
市民の憩いの場――カンポ・グランデ
王家の霊廟――サン・ヴィセンテ・デ・フォーラ教会
歴史を語る――大砲博物館
いにしえのリスボン――アルファマ
ふたたびロシオへ
絵画とオペラと文学者――シアード
サン・ロケ教会の至宝――サン・ジョアン・バティスタ礼拝堂
パノラマと庭園美――アルカンタラ展望台からエドゥアルド七世公園へ
アグアス・リヴレス水道橋
エストレラと二つの宮殿――ネセシダーデスとアジュダ
大いなる遺産――ジェロニモス修道院
テージョ川の宝石――ベレンの塔
華麗なる宮廷生活――馬車博物館
古今東西の美――古美術館
リスボンの夜を楽しみたい方に
時間のゆとりのある方に
もっと時間のゆとりのある方に
リスボンの新聞
ケルースを通り、シントラへ
補 フェルナンド・ペソア博物館へ
ペソアのガイドブック――発見の経緯と背景 (テレーザ・リタ・ロペス)
リスボン・一九二〇年代の地図
訳者あとがき
◆本書より◆
「リスボン観光案内」より:
「七つの丘の町、リスボン。すばらしいパノラマを約束する、七つの丘の展望台。その上一面に、高く、低くつらなる、色とりどりの家々。それが、リスボンだ。」
「これからバイシャ Baixa にもどるとしよう。ちなみにバイシャとは、土地の低い中心街をさす言葉である。その途中通りすぎるのは、リスボン情緒あふれる地区、アルファマ Alfama だ。この界隈は、かつての漁師街のおもかげをほとんど変わらぬまま、今に伝えている。リスボンに何日か滞在するゆとりがあるなら、ぜひともアルファマを訪れたい。リスボン広しといえども、古きよきリスボンの姿は、もはやここにしか残されていないのだから。アルファマではすべてが懐かしい――古い家のたたずまい、細い路地、道にかかるアーチ、家並みの奥へと続く階段、木のバルコニー。そして、人なつこい人々。喧騒。おしゃべりや歌、貧しさや塵あくたでにぎやかに彩られた、その暮らし――。」
「ペソアのガイドブック――発見の経緯と背景」(テレーザ・リタ・ロペス)より:
「フェルナンド・ペソアの未発表原稿のなかに、彼が愛した町、リスボンのガイドが発見されたのは、今から十年ほど前のことである。」
「ただし、ここで注意しておきたいことは、ペソアはこのような作品を一部の文学者のためではなく、幅広く、一般の読者にむけたものとして考えていたことである(彼自身が述べているとおり、「産業、文学、芸術に関する」ものなのだ)。だから、ガイドブックを開いた読者がそこで出会うのは、ベルナルド・ソアレス(脚注:「ベルナルド・ソアレスはペソアの異名者のひとり」)が散文でたたえるリスボンでもなければ、アルヴァロ・デ・カンポス(脚注:「アルヴァロ・デ・カンポスもペソアの異名者のひとり」)が散文詩で高らかに歌いあげるリスボンでもない。」
「文体は事務的で、凝った修辞や文体の潤色といったものはどこにも見あたらない。内容は終始一貫して、ポルトガルの文化遺産の賛美である――史跡や博物館、教会のみならず、サン・カルロス劇場の当時のプログラムまで紹介し、さらには、リスボンの図書館(中略)に読者を招じ入れたり、おしまいにはポルトガルの新聞に目を通すよう誘ったりして、文字文化に触れることも忘れていない。」

Lisbon by Pessoa
http://lisbon.pessoa.free.fr/Pessoa_Lisbon.htm
こちらもご参照ください:
ヴラスタ・チハーコヴァー 『新版 プラハ幻影 ― 東欧古都物語』
陣内秀信 『ヴェネツィア ― 水上の迷宮都市』 (講談社現代新書)
桑原甲子雄 『東京下町 1930』
マドレデウス(ヴェンダース「リスボン物語」より)
「この大聖堂は、さまざまな歴史的事件の舞台となったところでもある。たとえば、一三八三年の民衆蜂起の折には、司教ドン・マルティーニョ・アンネスが、女王ドナ・レオノール・テレスの政策に加担したため、この塔のひとつから投げ落とされている。」
(フェルナンド・ペソア 「リスボン観光案内」 より)
「フェルナンド・ペソア
『ペソアと歩くリスボン』
近藤紀子 訳
ポルトガル文学叢書 ⑨
彩流社
1999年7月10日 第1刷発行
2007年12月25日 第2刷発行
192p
四六判 丸背紙装上製本 カバー
定価1,900円+税
装幀: 渡辺将史
本書「訳者あとがき」より:
「本書は、Lisboa: o que o turista deve ver/what the tourist should see (Livros Horizonte, Lisboa, 1992)の全訳である。翻訳するうえでは、(原文である)英語をもととし、対訳として付された(この原稿の発見者でもある)マリア・アメリア・ゴメスのポルトガル語を、そのつど参考にした。さらに、旅程の目安として見出しを、理解の一助に脚注を、訳者の手で付けたことをおことわりしておく。」
モノクロ図版52点、地図2点。
ペソアの遺稿から発見された生前未刊行のリスボン観光案内(原文は英語)の全訳に、当時(1920年代)の絵葉書を中心とする図版が添えられています。巻末にポルトガルの研究者による「フェルナンド・ペソア博物館」案内および解説「ペソアのガイドブック――発見の経緯と背景」、リスボン地図、訳者あとがき。
本書はアマゾンで新品の取り扱いを再開していたので注文しておいたのが届いたのでよんでみました。今年出た同じ訳者によるペソア短編集の刊行に際して在庫本のカバーを付け替えたものだとおもいますが、本体は12年前の本なので新品なのに黴臭がありました。

帯文:
「詩人の
眼で
活写した
魅力的な
ポルトガル
観光案内!
1920年代に
“ヨーロッパ西端の小国”を
世界に知らしめたいという
“切なる想い”で書かれた未刊のガイドブック。
翻訳出版にあたり当時の図版と現在の写真で立体編集。」
帯背:
「詩人のまなざし!」
目次:
リスボン観光案内
いざ入国
リスボンの表玄関――コメルシオ広場
町の心臓――ロシオ
ポルトガルの大政治家――ポンバル侯爵広場
市民の憩いの場――カンポ・グランデ
王家の霊廟――サン・ヴィセンテ・デ・フォーラ教会
歴史を語る――大砲博物館
いにしえのリスボン――アルファマ
ふたたびロシオへ
絵画とオペラと文学者――シアード
サン・ロケ教会の至宝――サン・ジョアン・バティスタ礼拝堂
パノラマと庭園美――アルカンタラ展望台からエドゥアルド七世公園へ
アグアス・リヴレス水道橋
エストレラと二つの宮殿――ネセシダーデスとアジュダ
大いなる遺産――ジェロニモス修道院
テージョ川の宝石――ベレンの塔
華麗なる宮廷生活――馬車博物館
古今東西の美――古美術館
リスボンの夜を楽しみたい方に
時間のゆとりのある方に
もっと時間のゆとりのある方に
リスボンの新聞
ケルースを通り、シントラへ
補 フェルナンド・ペソア博物館へ
ペソアのガイドブック――発見の経緯と背景 (テレーザ・リタ・ロペス)
リスボン・一九二〇年代の地図
訳者あとがき
◆本書より◆
「リスボン観光案内」より:
「七つの丘の町、リスボン。すばらしいパノラマを約束する、七つの丘の展望台。その上一面に、高く、低くつらなる、色とりどりの家々。それが、リスボンだ。」
「これからバイシャ Baixa にもどるとしよう。ちなみにバイシャとは、土地の低い中心街をさす言葉である。その途中通りすぎるのは、リスボン情緒あふれる地区、アルファマ Alfama だ。この界隈は、かつての漁師街のおもかげをほとんど変わらぬまま、今に伝えている。リスボンに何日か滞在するゆとりがあるなら、ぜひともアルファマを訪れたい。リスボン広しといえども、古きよきリスボンの姿は、もはやここにしか残されていないのだから。アルファマではすべてが懐かしい――古い家のたたずまい、細い路地、道にかかるアーチ、家並みの奥へと続く階段、木のバルコニー。そして、人なつこい人々。喧騒。おしゃべりや歌、貧しさや塵あくたでにぎやかに彩られた、その暮らし――。」
「ペソアのガイドブック――発見の経緯と背景」(テレーザ・リタ・ロペス)より:
「フェルナンド・ペソアの未発表原稿のなかに、彼が愛した町、リスボンのガイドが発見されたのは、今から十年ほど前のことである。」
「ただし、ここで注意しておきたいことは、ペソアはこのような作品を一部の文学者のためではなく、幅広く、一般の読者にむけたものとして考えていたことである(彼自身が述べているとおり、「産業、文学、芸術に関する」ものなのだ)。だから、ガイドブックを開いた読者がそこで出会うのは、ベルナルド・ソアレス(脚注:「ベルナルド・ソアレスはペソアの異名者のひとり」)が散文でたたえるリスボンでもなければ、アルヴァロ・デ・カンポス(脚注:「アルヴァロ・デ・カンポスもペソアの異名者のひとり」)が散文詩で高らかに歌いあげるリスボンでもない。」
「文体は事務的で、凝った修辞や文体の潤色といったものはどこにも見あたらない。内容は終始一貫して、ポルトガルの文化遺産の賛美である――史跡や博物館、教会のみならず、サン・カルロス劇場の当時のプログラムまで紹介し、さらには、リスボンの図書館(中略)に読者を招じ入れたり、おしまいにはポルトガルの新聞に目を通すよう誘ったりして、文字文化に触れることも忘れていない。」

Lisbon by Pessoa
http://lisbon.pessoa.free.fr/Pessoa_Lisbon.htm
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