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塚本邦雄 繍篇小説集 『四時風餐』

「月は移ろひ日は翳り幾星霜を經てこの世も末、四季の眺めもその境おぼろになり果てた今日、春秋こそ命の詩歌の韻律はただ亂れに亂れる。空屋の隙間から覗く寒昴を見つつ人は憂ふる。」
(塚本邦雄 「新秋風樂」 より)


塚本邦雄 
『四時風餐』



書肆 季節社 
1984年8月15日 上梓
63p+2p
17.8×13.6cm 
角背紙装上製本 貼函
装訂: 政田岑生


「本書は限定版として
三〇〇部を印行全册
に著者の檢印を以て
限定刊行の證とする」



繡篇小説集。正字・正かな。栞ひも付。
「四時(しいじ)」は春夏秋冬、四季。「風餐(ふうさん)」は「風餐雨臥」「風餐露宿」=野宿すること。本書に点綴されている風狂人たちは、「日日に落葉松の詩を朗誦しながら、こころもよそにあそびくらし」たり、ふっと思い立って「遥かなシチリア島の靑嵐を見に」行ったり、「しきりに澄む月の下」「マラッカ海峽に流れ漂」ったりします。
「繡篇小説(しゅうへんしょうせつ)」とは何か、よくわからないですが、「繍」はネット辞書によると「模様や文字を糸で縫い込む」とあるように、内容的には古今東西にわたる詩藻が縫い込まれた美文調の瞬篇小説集で、視覚的効果としては、20×20文字(見開き)の本文(全文)の句読点の位置を揃えることによって白っぽい部分が刺繍の模様のように浮かび上がる工夫がこらされています。



塚本邦雄 四時風餐 01



目次:

新秋風樂
天領の外
篁の別れ
晝漣眩暈
雪月花人
百花連禱
牙旗翩翻
幻想微笑
靑嵐照翳
戀歌縹渺
哀歌彈琴
瑠璃邂逅




塚本邦雄 四時風餐 02



塚本邦雄 四時風餐 03



◆本書より◆


「雪月花人」より:

「雪月花は正しく美の三位一體として人の心に、侵すべからざる聖空間をかたちづくつてゐた。花よ散れ月よ曇れ雪よ凍れと叫ぶ聲が聞える。大樹の下に未だ孵らぬ蝶がそのまま消えうせ、よしや吉野の花さへも、固い蕾のままに行方しれずとなる末の世の春。雪月花にあくがれたその昔の人人をさし招き、更に遠白い光を發してゐたのは浄土であつた。補陀落の彼方の紫磨黄金の光にいざなはれて、ただ一人いま船出する人の影が私には見える。(中略)すなはち私も亦補陀落より更に遠い無の國へ、ふるさとを求めて遁走しようとしてゐるのだ。良き國とはそのまま無き國の稱である悲しみ。」


「百花連禱」より:

「一生の終りにはせめて柊の花の香滿ち溢れよ。」



塚本邦雄 四時風餐 04



塚本邦雄 四時風餐 05






















































































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うまれたときからひとでなし
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分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。
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