FC2ブログ

『完訳 水滸伝 (四)』 吉川幸次郎・清水茂 訳 (岩波文庫)

「「きさまたちは何もの。われわれを逮捕に来るとは、どこの官軍だ。ひとりひとり、みな殺しにして、一人ものこさず、梁山泊の名前をきさまらにも知らせてやるわ。」」
(『完訳 水滸伝 (四)』 より)


『完訳 
水滸伝 
(四)』 
吉川幸次郎・
清水茂 訳
 
岩波文庫 赤/32-016-4


岩波書店 
1999年1月18日 第1刷発行
405p 
文庫判 並装 カバー
定価660円+税
カバー: 中野達彦



全十冊。
本文中挿絵20点。「注」に図版4点。



水滸伝 四 01



カバーそで文:

「宋江が酒の勢いで酒楼潯陽楼の白壁に書きつけた詩が、こともあろうに、知事にへつらう嫌われ者の黄文炳に見つかってしまう。謀叛の志を読み取られた宋江は、処刑されることになるが、危機一髪、梁山泊の面々と弟分の乱暴者黒旋風李逵が刑場になだれこむ。」


忠義水滸伝 第四冊 目録:

巻の三十三
 宋江(そうこう) 夜(よ)るに小鰲山(しょうごうざん)を看(み)
 花栄(かえい) 大いに清風寨(せいふうさい)を鬧(さわ)がす
巻の三十四
 鎮三山(ちんさんざん) 大いに青州道(せいしゅうどう)を鬧(さわ)がし
 霹靂火(へきれきか) 夜るに瓦礫(がれき)の場を走る
巻の三十五
 石将軍(せきしょうぐん) 村の店(みせ)に書(ふみ)を寄(とど)け
 小李広(しょうりこう) 梁山(りょうざん)に雁(がん)を射る
巻の三十六
 梁山泊(りょうざんぱく)にて呉用(ごよう)は戴宗(たいそう)を挙げ
 掲陽嶺(けいようれい)にて宋江(そうこう)は李俊(りしゅん)に逢う
巻の三十七
 没遮攔(ぼつしゃらん) 及時雨(きゅうじう)を追(お)い趕(か)け
 船火児(せんかじ) 夜るに潯陽江(じんようこう)を鬧(さわ)がす
巻の三十八
 及時雨(きゅうじう)は神行太保(しんこうたいほう)に会(あ)い
 黒旋風(こくせんぷう)は浪裏白跳(ろうりはくちょう)と闘(たたか)う
巻の三十九
 潯陽楼(じんようろう)に宋江(そうこう)は反詩(はんし)を吟じ
 梁山泊に戴宗(たいそう)は仮信(かしん)を伝う
巻の四十
 梁山泊の好漢 法場(しおきば)を刼(あら)し
 白竜廟(はくりゅうびょう)に英雄は小(はじ)めて義に聚(つど)う
巻の四十一
 宋江(そうこう)は無為軍(むいぐん)を智もて取り
 張順(ちょうじゅん)は黄文炳(こうぶんぺい)を活捉(いけどり)にす
巻の四十二
 還道村(かんどうそん)に三巻の天書(てんしょ)を受け
 宋公明(そうこうめい) 九天玄女(きゅうてんげんじょ)に遇(あ)う

人物表




水滸伝 四 02



水滸伝 四 03



◆本書より◆


「巻の三十九」より:

「黄文炳、「はばかりながら、このごろ都では、何かめずらしいことがございましたか。」
 知事、「父上のよこされた手紙に、おさとしがありました。近ごろ太史院天文台の奏上に、夜ぞらの姿をうかがうに、罡星(こうせい)、呉楚(ごそ)の区域を照らすとあった。もしも謀反をたくらむものがいるなら、すぐさまかぎ取って除き去れと、それがし、土地をしっかり守るよう仰せつかりました。それにまた京わらべどものわらべうた四句、
    国を耗(やぶ)るは家木(かぼく)に因(よ)り
    刀兵(とうへい)は水工(すいこう)を点(てん)ず
    縦横(じゅうおう)三十六
    乱を播(ま)くは山東(さんとう)に在り
 そういうわけで、わざわざ手紙をよこされ、それがしにもよく用心せよとの仰せです。」
 黄文炳、しばらく考えこんでいましたが、にっこり笑って、
 「閣下、偶然ではございませんぞ。」
 と、黄文炳、袖のうちから、写しとった詩を取り出して、知事にさし出し、
 「はからずもここにございます。」
 蔡九知事、読みおわり、
 「これこそまさしく謀反の詩。足下、どこで手に入れられました。」
 黄文炳、「わたくし、昨夜はお目通りを遠慮して、大川ばたまで引き返しましたが、所在もないまま、潯陽楼で涼みがてらのひまつぶし、むかしの人の詩句を読んでいましたが、しらかべの上に書きつけたばかりのが、これです。」
 知事、「書きつけたのはどういうものです。」
 黄文炳、こたえて、
 「閣下、はっきりとそこに署名がございます。鄆城の宋江作。」
 知事、「その宋江とは、なにものです。」
 黄文炳、「それもはっきりそこに書いてございます。幸あらずして双(ふた)つの頰(ほお)に文(いれずみ)を刺(ほ)られ、那(な)んぞ堪(た)えん配(なが)されて江州に在るに。いわずと知れた流罪人、監獄で服役中の囚人にちがいありません。」
 知事、「たかのしれた流罪人に、何ができます。」
 黄文炳、「閣下、そいつを見くびってはなりませぬ。さきほど閣下の仰せあった、太閤殿下よりのお手紙にも見える、京わらべのうたに、ぴたりと符合する男。」
 知事、「といわれるのは。」
 黄文炳、「国を耗(やぶ)るは家木に因り、これ国家の財政を耗(す)りへらすものは、必ずウかんむりに木の字、これあきらかに宋(そう)の字です。第二句、刀兵は水工を点ず、刃ものざたを起こすものは、さんずいに工の字、あきらかに江の字です。この男、名字(みょうじ)は宋(そう)、名は江(こう)、そのうえ謀反の詩を作ったといえば、あきらかに天のお告げ、これぞ万民のしあわせでございましょう。」
 知事、重ねて、「して、縦横三十六、乱を播(ま)くは山東(さんとう)に在り、とは。」
 と問えば、黄文炳、答えて、
 「六六の年でございましょうか、六六の数でございましょうか。乱を播(ま)くは山東に在りとは、今の鄆城(うんじょう)県こそ、正しく山東の地方。この四句のわらべうた、すっかり符合しています。」」



「巻の四十二」より:

「こちらは宋江、厨子の中で、ありがたや、ありがたや、と唱えつつ、はてしかし、あいつらにとっつかまりはしなかったものの、どうしたら村の入口を出られるだろうかと、厨子の中で思案にくれましたが、どうにも手だてがありません。すると、うしろの廊下の方から、誰かが出て来るようす。宋江、
 「又もやしくじった。さっさとぬけ出さないでな。」
 とつぶやいていますと、黒いうわぎの童(わらべ)が二人、まっすぐ厨子のところまでやって来て、声をかけました。
 「わたくしども、お妃(きさき)さまのおおせで、星主(せいしゅ)さまとお話なさりたいとお招きにまいりました。」
 宋江、返事をしようともしません。すると童、外からかさねて、
 「お妃さまのお招きです。星主さま、おいでください。」
 宋江、やはり返事しようとしません。童、外からかさねて、
 「宋星主さま、おためらいなさいますな。お妃さまがお待ちかねでございます。」
 宋江、聞けば鶯か燕かとまがう声音(こわね)、男の声ではありません。椅子の下からもぐり出て見れば、黒いうわぎの女(め)の童(わらべ)が二人、祭壇のそばに侍立しています。宋江、はっとおどろきましたが、それはふたつの土の神像。するとまた外で、
 「宋星主さま、お妃さまのお招きです。」
 宋江、とばりをおしわけ、もぐり出てみれば、黒いうわぎにびんずらを結(ゆ)った女の童二人が、うやうやしく身をかがめ、最敬礼をしています。」
「そのとき、宋江、たずねて、
 「童子さまおふたり、どちらから見えました。」
 腰元たち、「お妃さまのおおせで、星主さまに御殿までおいで下さるよう、お招きでございます。」
 宋江、「童子さま、それは何かのおまちがいです。わたくし、名字(みょうじ)は宋、名は江、星主(せいしゅ)というようなものではございませぬ。」
 腰元、「いえいえ、まちがいではございません。どうか星主さま、おいで下さいませ。お妃さまがお待ちかねです。」
 宋江、「はて、どこのお妃さま。お目にかかったこともございませんのに、どうしてまいれましょう。」
 腰元、「星主さまがおはこび下さればわかります。そうお問いただしになるまでもございません。」
 宋江、「お妃はどちらにおられます。」
 腰元、「ついそこの奥御殿にいらっしゃいます。」
 腰元、さきに立って案内しますので、宋江もあとから社殿をおり、奥の社殿のそばの一つのくぐり門へ廻りますと、腰元、
 「宋星主さま、ここからおはいり下さいませ。」
 宋江、そのあとからくぐり門をはいって、見れば満天の星月夜、香ぐわしい風のそよそよと、あたりはすべてこんもりした林、すんなりとした竹やぶ。宋江、
 「おや、この社の奥に、又こんなところがあったのか。こんなこととわかっていれば、ここへ逃げこんで、あんなに何度もひやひやせずにすんだのに。」
 と考えています。
 宋江、歩きながら気がつけば、両がわは松の木です。ふた並びのみどりのつつみにすべて幾かかえもあろうという松の大木がはさみ植えられ、その中をずっと平らかな一すじの石だたみの道が通っています。宋江、それを見て、そっと思いめぐらしますには、
 「おや、この古い社の奥に、こんなよい道があったのか。」
 腰元のあとについて、六町ばかりも行かないうち、耳についたのは、さらさらと流れる谷川の水音、行く手を見やれば、一つの青石の石橋、両がわはいずれも朱の欄干、岸にうえこんだは、めずらしき花、見なれぬ草、ものふりた松に茂れる竹、翠(みどり)の柳にいろよき桃、橋の下には、銀(しろがね)をまき雪をころばすような流れが、石の洞窟から出ています。橋を通り過ぎて、うち見れば、両がわは奇(たえ)なる樹木、そのまん中に大きな朱塗りの勅使門一つ。宋江、勅使門をはいって見れば、ふりあおいで見る一かまえの御殿、」
「宋江見て、考えこみ、
 「わしはこの鄆城県の生まれだが、こうした場所があるとは聞いたことがない。」
 と、びくびくもので、足をはこびかねています。腰元、
 「星主さま、どうぞおいで下さい。」
 とうながして、さっと門内へ導き入れました。そこは御殿の中庭、両がわの廊下はすべて朱塗りの柱、刺繡のあるすだれがかかっています。正面には大きな御殿、殿上には蠟燭ぼんぼりがきらめいています。腰元、中庭から、一歩一歩と石だたみの上に導きました。御殿の上、御階(みはし)の前にも、何人かの腰元がいて、
 「お妃さまのお招きです。星主さま、おはいり下さいませ。」
 宋江、御殿の上にのぼりますと、おぼえず体がふるえ、毛や髪が逆立ちしました。」

「宋江、お妃さまに礼をいい、黒いうわぎの女の童について、中庭へ下り、勅使門を出て、石橋のところまで見送られました。
 腰元、「さきほどは、星主さま、あぶない目にあわれましたが、お妃さまの御加護がなくば、とっくにつかまっているところ。夜が明けるころには、おのずとこの災難から脱けられます。星主さま、ごらんなさいませ、石橋の下の水の中で、ほれ竜が二匹、戯れていますわ。」
 宋江、欄干にもたれて見てみれば、いかにも竜が二匹、水中に戯れています。そのとき腰元二人、ふいに下の方へとつき落としました。宋江、あっと大声を立てましたが、なんとお厨子の中におります。目が覚めれば、それは南柯一場(なんかいちじょう)の夢、宋江、はいおきて見れば、月はちょうど真南にかかって、どうやら時刻はま夜中十二時ごろ。宋江、たもとをさぐってみると、手にふれたは棗のたね三つ、またたもとの中のふくさには天書が包んであるもよう、手さぐりでとり出して見れば、これぞまがいもない三巻の天書。また口の中には酒の香がいたします。宋江、かんがえこんで、
 「はてさてふしぎな夢。夢のようでもあり、夢のようでもない。夢を見たのあとしたら、天書がたもとにあるのは何ゆえ。そのうえ口には酒の香、棗のたねもわが手にある。いいきかされた言葉も、みなはっきりと覚えていて、一ことも忘れていない。といって夢を見たのでないとすれば、現にわしはこうしてお厨子の中へ、すってんころりところがりこんだまま。いや分かった。ここの神さまは、大変霊験あらたか、こうしてふしぎを示されたのであろう。はてそもいかなる神さまにましますか。」
 と、とばりをかかげて見れば、九竜(きゅうりゅう)の椅子にまします女神は、夢の中にそっくりです。宋江、思い入れして、
 「この女神、わしを星主と呼ばれたが、どうやらわしも前世では、なおざりの人ではなさそうだ。この三巻の天書は、きっと役に立つ時があろう。(中略)腰元の話では、夜が明ければ、おのずとこの村での難儀から脱けられるという。もう夜も明けがた。さあ出て行こう。」」




水滸伝 四 04



水滸伝 四 05






こちらもご参照ください:

『完訳 水滸伝 (五)』 吉川幸次郎・清水茂 訳 (岩波文庫)
孟元老 『東京夢華録 ― 宋代の都市と生活』 入矢義高・梅原郁 訳注









































関連記事
スポンサーサイト



プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

最近の記事
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
フリーエリア
netakiri nekotaroの最近読んだ本