FC2ブログ

『完訳 水滸伝 (五)』 吉川幸次郎・清水茂 訳 (岩波文庫)

「皆さんお聞き下さい。これというのも、すべて地煞星(ちさつせい)の数のうち、時節到来して、天のなせる自然のわざ、いっしょに勢ぞろいすることになったのでありました。」
(『完訳 水滸伝 (五)』 より)


『完訳 
水滸伝 
(五)』 
吉川幸次郎・
清水茂 訳
 
岩波文庫 赤/32-016-5


岩波書店 
1999年2月16日 第1刷発行
314p 
文庫判 並装 カバー
定価660円+税
カバー: 中野達彦



全十冊。
本文中挿絵16点。



水滸伝 五 01



カバーそで文:

「暴れん坊李逵は相変わらず凄まじい。自分の名を騙るにせ(引用者注:「にせ」に傍点)李逵をやっつけ、人食い虎四匹もあっという間にかたづける。今回のクライマックスは、宋江率いる梁山泊軍と祝一家との対決。「祝氏の三傑」――祝竜・祝虎・祝彪の三兄弟とその指南番欒廷玉は大変な凄腕。」


忠義水滸伝 第五冊 目録:

巻の四十三
 仮李逵(にせりき) 剪径(おいはぎ)して単(ひとりたび)の人を劫(おびや)かし
 黒旋風(こくせんぷう) 沂嶺(きれい)に四ひきの虎を殺す
巻の四十四
 錦豹子(きんびょうし) 小径(しょうけい)にて戴宗(たいそう)に逢(あ)い
 病関索(びょうかんさく) 長街(ちょうがい)にて石秀(せきしゅう)に遇(あ)う
巻の四十五
 楊雄(ようゆう) 酔(よ)って潘巧雲(はんこううん)を罵(ののし)り
 石秀(せきしゅう) 智(ち)もて裴如海(はいにょかい)を殺す
巻の四十六
 病関索(びょうかんさく) 大いに翠屏山(すいへいざん)を鬧(さわ)がし
 〓(漢字:扌+弃)命三(はんめいさん) 火もて祝家店(しゅっかてん)を焼く
巻の四十七
 撲天鵰(ぼくてんちょう)  双(ふた)たび生死(せいし)の書(しょ)を修(したた)め
 宋公明(そうこうめい) 一(ひと)たび祝家荘(しゅっかそう)を打つ
巻の四十八
 一丈青(いちじょうせい) 単(ひとり)して王矮虎(おうわいこ)を捉(とら)え
 宋公明(そうこうめい) 両(ふた)たび祝家荘(しゅっかそう)を打つ
巻の四十九
 解珍解宝(かいちんかいほう) 双(ふたり)して獄(ごく)を越(ぬ)け
 孫立孫新(そんりつそんしん) 大いに牢(ろう)を刼(やぶ)る
巻の五十
 呉学究(ごがっきゅう) 双(ふた)たび連環(れんかん)の計(はかりごと)を用い
 宋公明(そうこうめい) 三たび祝家荘(しゅっかそう)を打つ





水滸伝 五 02



水滸伝 五 03



◆本書より◆


「巻の四十五」より:

「石秀、
 「今晩はきっと牢の当番だ。すこし仕事をしてみよう。」
 と、その晩、宿屋にかえり、夜なか二時ごろまで寝て、起き上がりますと、例の護身の短刀を腰につけ、こっそり宿屋の門をあけて、まっすぐ楊雄のうら門の路地へとしのんで行き、かげにかくれて見張ったのは、ちょうど夜明け四時になろうというころ、かの行者、木魚を手にし、路地の入り口まで来て、うろうろとのぞいています。石秀、ひらりと行者のうしろへまわり、片手で行者をひっとらえ、片手で刀を首すじにあて、小声で叱りつけました。
 「じたばたするな。大声を出すと殺すぞ。ありていに白状しろ。海(かい)坊主がおまえにここへ来させるのは、何のためだ。」
 行者、「豪傑、命をお助け下さったら申します。」
 石秀、「早くいえ、殺さないから。」
 行者、「海闍黎さんは潘じいさんのむすめと深間になり、毎晩のように往き来してますが、わたしにいいつけてうら門を見張らせ、香づくえが出ているのがあいず、そうすりゃあの人が頭をつっこみます。そうしてあさ四時には、わたしにここへ来て木魚を叩き、念仏をさせます。そうすりゃあの人がぬけ出します。」
 石秀、「あれはいまどこにいる。」
 行者、「まだこの家の中で寝てますよ。これからわたしが木魚の音を立てれば、出て来ますわさ。」
 石秀、「おまえ、ちょっとその衣装と木魚を、わしに貸せ。」
 と、行者のからだから衣装をはぎ、木魚をうばいます。行者、衣装をぬぎすてましたところを、かの石秀、刀を首すじにさっとおしあてれば、下へぶったおれました。
 行者が死にますと、石秀、法衣(ころも)と膝あてを着こみ、短刀をさやに収め、木魚を叩きながら、ずっと路地のおくまで来ました。海闍黎は、寝台の上で、木魚がぽくぽくと鳴るのを、えたりやおうと聞きつけ、急いで起き上がりますと、きものをひっかけて二階からおります。迎児が先にやって来て門をあけ、坊主がひきつづいてうら門からしのび出ましたが、石秀、なおも木魚を叩いています。坊主、小声で叱りつけ、
 「なぜそんなに叩くばかりだ。」
 石秀、それには返事をせず、彼を路地の入り口まで行かせたところで、ぱっとけころがし、おさえつけてどなりました。
 「大声を出すな。大声を出すと殺すぞ。きものをはぐあいだ、じっとしてりゃいいんだ。」
 海闍黎、石秀なりとさとり、あらがって声を立てようともしません。すっかりきものを石秀にはぎ取られ、一糸(し)もまとわぬすっぱだかです。そろりそろりと法衣のあわせ目から抜き出したのは刀、三太刀か四太刀でつき殺します。さて刀をば、行者のそばに置き、両人のきものを、くるくるまいて一まとめにしますと、宿屋へとってかえし、さっと門をあけてなかにはいり、そっと閉めきって、眠りにつきましたことは、それまでといたします。
 さて、ここの城内で、もちがゆを売っています王のおやじ、その日もあさ早くからもちがゆの荷をにない、ちょうちんをつけ、小ぞう一人をつれて、あさあきないに行く途中、死体のそばを通りかかりました。さっと足をすくわれ、じいさんのもちがゆの荷、地面にぶちまけられました。小ぞうは、声はりあげ、
 「おや大変、坊さんが一人ここに酔いつぶれてる。」
 おやじ、はい起きて、両手の血痕をなでまわし、
 「大変。」
 と、叫んで、すっかりうろたえてしまいました。近所の何軒かがそれを聞きつけ、みな門をあけてとび出し、火で照らして見れば、地面いっぱいの血のかゆ、二つの死骸が、地面に横たわっています。近所のものたち、ぱっとじいさんをつかまえ、役所へうったえ出ようとします。」



「巻の四十六」より:

「石秀、「あにき、わたくしはつまらないものだが、天地にはじぬ男伊達。そんなことをするはずはないよ。あにきが今後悪だくみにあってはと、それであにきをさがしてた。ここに証拠がある。あにきに見せよう。」
 と、坊主と行者の衣装を持ち出して、
 「ここにすっかりはぎ取ってあるよ。」
 楊雄、それを見て、かっとなり、
 「おとうとよ、許してくれ。おれは今晩、あのあばずれを八つ裂きにして、このやり切れぬ腹立ちをふっとばす。」
 石秀、笑って、「それまたそうだ。あなたも役所づとめをしているものなのに、法律を知らないのか。あなたは姦通現場をしっかりおさえたわけじゃないのに、どうして人を殺せる。もしわたしがでたらめをいってるとしたら、罪もない人を殺すことになるのだぜ。」
 楊雄、「ううむ、どうしたら腹の虫が収まるか。」
 石秀、「あにき、わたしのいうとおりになさい。おまえさんをおとこにしてあげる。」
 楊雄、「おとうとよ、わしをどうしておとこにしてくれるのだ。」
 石秀、「ここの東門の郊外に翠屏山(すいへいざん)という山がある。大変ひっそりしたところだ。あにきはあすになったら、これだけいいなさい、おれは長らくおまいりに行かない。きょうはひとつ、おまえといっしょに行こうと、おんなをさそい出し、迎児もつれて、いっしょに山の上につく。わたしは先まわりして、そこで待っている。まともに向きあって、一切のいきさつについて、すっかり泥を吐かせる。あにきは、そこで離縁状を一枚書き、おんなを棄ててしまう。どうだ名案じゃないか。」」

「石秀、さっそくおんなの髪飾りと衣装をすっかりはぎ取りますと、楊雄、帯を二本切って、自分の手でおんなを木にしばりつけます。石秀は、迎児の髪飾りもすっかり取り去りますと、刀を手わたし、
 「あにき、このあまも生かしておいてどうする。あっさり根こそぎやっつけよう。」
 楊雄、答えて、「そのとおりだ。おとうと、刀を貸しな。わしが自分で料理する。」
 迎児、形勢がよくないと、大声をあげようとするのを、楊雄、さっと刀を振り上げ、まっ二つに斬りすてました。おんな、木のところから声を上げ、
 「三郎さん、わびを入れて下さいよ。」
 石秀、「ねえさん、あにきが自分であなたの介抱をするそうだ。」
 楊雄、進み出て、刀でまず舌をえぐり出すと、一刀のもとにかき切り、おんなにまず声を立てさせないようにします。楊雄、それから、指でゆびさしつつ、罵りました。
 「やいこのあばずれ、わしはうっかり目をくらまされ、きさまにいいくるめられるところだったぞ。一つには、わしら兄弟分のちぎりにひびを入れ、二つには、そのうちきっとおまえに殺されているところ。よし、きょうはわしの方からやっつけてやる。きさまというあまの心肝五臓、どういうでき方か、見てやるぞ。」
 と、みぞおちからはじめて下腹まで一文字に切り下げ、心肝五臓を取り出して、松の木にぶら下げました。楊雄、さらにおんなの頭、手足などをばらばらにし、髪飾りと衣装は、すべて包みの中に入れました。楊雄、
 「おとうと、ちょっとおいで。相談したいのは、これから将来のこと。こうして一人の奸夫、一人の淫婦を、どちらも殺しはしたが、わしときみと、これからどこへ行って身をおちつける。」
 石秀、「わたくしはもう考えてある。ちゃんとした場所があるんだ。あにきすぐ出発しよう。ぐずぐずしちゃいられない。」
 楊雄、「どこへ行こうというのだ。」
 石秀、「あにきは人を殺した。わたしも人を殺した。梁山泊へ行って仲間にはいらずに、さてどこへ行こうというのだ。」」




水滸伝 五 04



水滸伝 五 05





こちらもご参照ください:

『完訳 水滸伝 (六)』 吉川幸次郎・清水茂 訳 (岩波文庫)
孟元老 『東京夢華録 ― 宋代の都市と生活』 入矢義高・梅原郁 訳注
吉田漱・監修/悳俊彦・編著 『月岡芳年の世界』
仁賀克雄 『ロンドンの恐怖 ― 切り裂きジャックとその時代』 (ハヤカワ文庫)


























































関連記事
スポンサーサイト



プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

最近の記事
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
フリーエリア
netakiri nekotaroの最近読んだ本