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『完訳 水滸伝 (八)』 清水茂 訳 (岩波文庫)

「みかど、秘書官に御命令、
 「朕のためにじきじきの招書案を書け。すぐ重臣を派遣して梁山泊の宋江らを宣撫して、帰順させよう。」」

(『完訳 水滸伝 (八)』 より)


『完訳 
水滸伝 
(八)』 
清水茂 訳
 
岩波文庫 赤/32-016-8


岩波書店 
1999年4月16日 第1刷発行
376p 
文庫判 並装 カバー
定価660円+税
カバー: 中野達彦



全十冊。
本文中挿絵22点。「注」に図版2点。



水滸伝 八 01



カバーそで文:

「梁山泊征伐軍の散々な負けっぷりに、いよいよ高大将が自ら出馬。率いるは近衛師団の精鋭一万五千を筆頭に、しめて一三万の大軍、従軍の慰みに歌舞団まで引き連れての堂々の出陣である。迎え撃つ宋江は内心穏やかならず、しかし豪傑たちは少しもあわてず……。」


忠義水滸伝 第八冊 目録:

巻の七十二
 柴進(さいしん) 花を簪(かんざし)として禁院(ごしょ)に入り
 李逵(りき) 元夜(しょうがつじゅうごや)東京(とうけい)を鬧(さわ)がす
巻の七十三
 黒旋風(こくせんぷう)は喬(いつわ)って鬼(ばけもの)を捉(とら)え
 梁山泊(りょうざんぱく)に双(ふた)つながら頭(こうべ)を献(ささ)ぐ
巻の七十四
 燕青(えんせい) 智(ち)もて擎天柱(けいてんちゅう)を撲(まか)し
 李逵(りき) 寿張(じゅちょう)にて喬(いつわ)って衙(やくしょ)に坐(すわ)る
巻の七十五
 活閻羅(かつえんら) 船を倒(くつがえ)して御酒(ぎょしゅ)を偸(ぬす)み
 黒旋風(こくせんぷう) 詔(みことのり)を扯(ひきさ)いて徽宗(きそう)を謗(そし)る
巻の七十六
 呉加亮(ごかりょう) 四斗五方(しとごほう)の旗(はた)を布(し)き
 宋公明(そうこうめい) 九宮八卦(きゅうきゅうはっか)の陣を排(なら)ぶ
巻の七十七
 梁山泊(りょうざんぱく) 十面(じゅうめん)に埋伏(まいふく)し
 宋公明(そうこうめい) 両(ふた)たび童貫(どうかん)に贏(か)つ
巻の七十八
 十節度(じゅうせつど) 梁山泊を取(と)らんことを議(ぎ)し
 宋公明(そうこうめい) 一(ひと)たび高太尉(こうたいい)を敗(やぶ)る
巻の七十九
 劉唐(りゅうとう) 火を放(はな)ちて戦船(いくさぶね)を焼き
 宋江(そうこう) 両(ふた)たび高太尉(こうたいい)を敗(やぶ)る
巻の八十
 張順(ちょうじゅん) 鑿(のみ)もて海鰍船(かいしゅうせん)を漏(も)らし
 宋江(そうこう) 三(み)たび高太尉(こうたいい)を敗(やぶ)る
巻の八十一
 燕青(えんせい) 月夜(つきよ)に道君(どうくん)に遇(あ)い
 戴宗(たいそう) 計(けい)を定(さだ)めて蕭譲(しょうじょう)を賺(あざむ)きとる
巻の八十二
 梁山泊(りょうざんぱく) 金(かね)を分(わ)かちて大いに市(いち)を買(ひら)き
 宋公明(そうこうめい) 全(すべ)ての夥(なかま)にて招安(しょうあん)を受(う)く





水滸伝 八 02



水滸伝 八 03



◆本書より◆


「巻の七十二」より:

「あくる日、柴進は、すっかり折目正しい衣服を着こみ、頭にはま新しい烏帽子、足には清潔な靴と靴下、燕青の身ごしらえも、あかぬけしています。ふたりは、宿屋を後にして、城外の人家を見れば、どの家もごったがえし、どの場所もにぎやかに、正月十五夜を祝う用意をし、それぞれに太平の世のさまをめでております。城門のところまで来ましたが、さえぎる人もありません。まことにみごとな東京開封府の地勢、そのさまいかに、
  州は汴水(べんすい)と名づけ、府は開封(かいほう)と号す。逶迤(はるばる)と呉楚(ごそ)の邦(くに)に接(つづ)き、延(の)び亙(わた)りて斉魯(せいろ)の地に連(つら)なる。周公(しゅうこう)国を建て、畢公(ひっこう)皋(こう)改めて京師(みやこ)と作す。両晋(りょうしん)は春秋(しゅんじゅう)のとき、梁(りょう)の恵王(けいおう)称して魏国(ぎこく)と為す。層(かさ)なり畳(たた)なわる臥したる牛の勢(たたずまい)は、上界(てんかい)の戊己(ぼき)の中央に按(かな)い、崔嵬(そそりた)つ伏したる虎(とら)の形は、周天(しゅうてん)の二十八宿(せいざ)に像(かたど)る。王尭(おうぎょう)は九(ここの)たび華夷(かい)を譲(ゆず)り、太宗は一たび基(もとい)の業(わざ)を遷(うつ)す。元宵(げんしょう)の景致(おもむき)は、鰲山(ほうらいざん)に万盞(まんどう)の華燈(かざりどうろう)を排(なら)べ、夜月(やげつ)の楼台(ろうだい)に、鳳輦(ほうれん)は三山瓊島(さんざんけいとう)に降(くだ)る。金明池(きんめいち)の上(ほとり)には三春(さんしゅん)の柳(やなぎ)、小苑城(しょうえんじょう)の辺(あたり)には四季の花。十万里の魚竜変化(ぎょりゅうへんか)の郷(さと)、四百座の軍州(ぐんしゅう)輻輳(ふくそう)の地。黎庶(たみくさ)は尽(ことごと)く豊稔(ほうねん)の曲を歌い、嬌(あで)なる娥(ひめ)は斉(ひと)しく太平の詞(こうた)を唱(うた)う。香(こう)の車に坐(の)るは佳人(あてびと)仕女(かおよびと)、金(こがね)の鞭(むち)を蕩(うご)かすは公子(こうし)王孫(おうそん)。天街(みやこおおじ)の上は尽(ことごと)く珠(しんじゅ)と璣(たま)とを列(つら)ね、小巷(こみち)の内は遍(あまね)く羅(きぬ)と綺(あやぎぬ)に盈(み)つ。靄靄(あいあい)たる祥(めでた)き雲は紫の閣(たかどの)に籠(こ)め、融融(ゆうゆう)たる瑞(めでた)き気は楼台(ろうだい)を罩(おお)う。」

「今はむかし宋の時、東京開封府はまこと天下第一の首都、さく花のにおうがごとく富み栄えましたは、まさに道君(どうくん)徽宗(きそう)皇帝の御代でございました。その日の夕まぐれ、満月東よりのぼれば、空にはひとかげりの雲も無く、宋江と柴進は、休職官吏、戴宗は小使い、燕青は町の若い衆のなりをし、李逵だけを留守番にのこして、四人、祭りの出しもの連にまじって、封贈門(ほうぞうもん)からぞめき入ってまいります。街街(まちまち)盛り場をぶらつきまわれば、果たして夜は暖かに風はやわらぎ、まことに遊覧日和です。博労町へまわって来ますと、どの家も、かど先に燈籠を飾り、ともしびを競いあい、まひるのように照りかがやいています。これぞ、楼台の上も下も火は火を照らし、車馬は往き来して人は人を看(み)るといったさま。」



「巻の七十三」より:

「あくる日の夜明け、東京(とうけい)開封(かいほう)城中は、何ともいやはや大騒動、高(こう)大将は軍隊をひきいて城を出て追っかけましたが、追っつかないのでひっかえし、李師師(りしし)は知らぬ存ぜぬのいってんばり、楊(よう)大将も自宅へ帰って養生しています。城内の負傷者数を調べますと、あわせて四、五百人、押し倒されてけがしたものは数知れず。高大将は、参謀本部の童貫(どうかん)ともども、いっしょに太閤屋敷へ行って相談し、いそぎ兵隊をくり出して掃蕩逮捕するよう上奏しました。
 さて、こちらは李逵と燕青のふたり、途中、四柳村(しりゅうそん)という名のところまでやって来ますと、知らぬまに日が暮れましたので、ふたり、とある庄屋屋敷へ来て、門をたたきあけ、藁ぶきの母屋まで通りました。庄屋の狄(てき)旦那、出迎えに出て来て、(中略)燕青に、
 「こちらはどちらからおいでの先生です。」
 とたずねれば、燕青、笑いながら、
 「この先生は、けったいな人で、あんたたちにはわからぬ。ありあわせでも晩飯にちっとありつけて、ひと晩宿を借りられたら、あすあさ立ちます。」
 李逵はただもうだまっているばかりです。旦那、このことばを聞くと、土下座して李逵を拝みながら申します。
 「先生、この弟子をお助け下さいませ。」
 李逵、「わしに何を助けてほしいのか、すっかりうちあけろ。」
 旦那、「わが家には百人あまりいますが、夫婦ふたりには、肉親としてむすめが一人あるだけ。年は二十あまりですが、半年ほど前から、何か物の怪(け)がつきまして、部屋で食事をするばかり。食べに出てまいりません。だれかが呼びに行きますと、れんがや石をめちゃくちゃに投げてよこします。家のものがたくさんけがさせられました。何度、修験者をお招きしましても、つかまえられません。」
 李逵、「じいさん、わしは薊州(けいしゅう)羅真人(らしんじん)の弟子、雲に乗り霧(きり)を行(や)ることができ、いちばんの得手は化物退治だ。おまえが、何か施しをしてくれたら、今夜化物退治をしてやる。いまはまずぶた一匹ひつじ一匹で神将をお祭りせねばならぬ。」
 旦那、「ぶたやひつじは、うちにいっぱいいます。酒はいうまでもありません。」
 李逵、「よくあぶらの乗ったのを選んで殺し、ぐたぐたに煮て来い。上等の酒がほかに何本かいる。それで用意はできあがり。今夜のま夜中、化物退治をしてやるぞ。」」

「李逵、「おまえ、ほんとにわしに化物退治をさせたいのなら、だれかにわしをむすめの部屋まで案内させろ。」
 旦那、「といっても、神さまが、いま、部屋かられんがや石をめちゃくちゃに投げつけ、だれも行こうとはしませぬ。」
 李逵、二ちょうのまさかりを手に抜き放ち、たいまつで遠くから照らさせながら、李逵、大股にずかずかと部屋のそばまで近づきました。見れば、部屋の中にはありありとともしびがついています。李逵、じっと見つめれば、ひとりのわかものが、ひとりのおんなを抱きながら、そこで話しているのが見えました。李逵、ぽんと部屋の戸を蹴開き、まさかりがとどいたと見るや、斬られて光がぱっと散り、かみなりが鳴りひびきます。ひとみを凝らして見定めれば、何とともしびの皿を斬りたおしたのでありました。わかもの、逃げようとするところを、李逵、大喝一声、まさかりがあがれば、もうわかものを斬りたおしています。あばずれは、寝台の下にもぐりこんでかくれましたが、李逵、おとこをまずまさかりの一打ちに、首を斬り落とし、寝台の上にぶらさげると、まさかりで寝台のふちをたたきつつ、どなります。
 「あばずれ、さっさと出て来い。首を出さねば、寝台ごとこなごなにぶった斬るぞ。」
 あばずれ、つづけさまに叫びます。
 「命だけはお助け。出ます、出ます。」
 首をそっと出したばかりのところを、李逵、髪をひっつかんで、死体のところまでひきずり寄せ、たずねます。
 「わしがばらしたこいつは誰だ。」
 あばずれ、「わたしの間夫(まぶ)、王小二(おうしょうじ)。」
 李逵、かさねて、
 「れんがや食事は、どこから手に入れた。」
 とたずねれば、あばずれ、
 「それは、わたしが金銀の髪飾りをおとこに渡し、夜なかごろ、土べいの上から運びこみました。」
 李逵、「こんなけがらわしいあばずれ、生かしておいても役に立たぬ。」
 と、寝台のそばまでひっぱって行き、まさかりでばっさり首を斬り落とし、ふたりの首を一つにくくると、こんどは、あばずれのなきがらをぶらさげて、おとこのかばねといっしょにし、李逵、
 「腹いっぱい食って、腹ごなしに困っていたところだ。」
 と、はだぬぎになるや、二ちょうのまさかりを振りあげ、ふたりの死体めがけて、上げたり下げたり、太鼓をたたくようにめちゃくちゃにひとしきり切りきざみました。李逵、笑って、
 「これでたしかにこのふたり、生きかえれないぞ。」
 と、大まさかりをたばさみ、首をぶらさげたまま、大声あげながら、母屋のおもてまで出ますと、
 「ふたりの化物、わしがどちらも退治した。」
 とどなりながら、首を投げ棄てました。」
「旦那、泣きながら、「先生、むすめはそのまま生かしておいて下すってもよかったのに。」」







こちらもご参照ください:

『完訳 水滸伝 (九)』 清水茂 訳 (岩波文庫)
孟元老 『東京夢華録 ― 宋代の都市と生活』 入矢義高・梅原郁 訳注































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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