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『完訳 水滸伝 (九)』 清水茂 訳 (岩波文庫)

「「兄上、以前は何でも自由自在、兄弟たちもみな楽しんでいましたが、このたび招安を受けて、国家の臣子となってから、はからずもあべこべに拘束を受け、思うようにできません。兄弟たちは、みな怨みを抱いていますよ。」」
(『完訳 水滸伝 (九)』 より)


『完訳 
水滸伝 
(九)』 
清水茂 訳
 
岩波文庫 赤/32-016-9


岩波書店 
1999年6月16日 第1刷発行
279p 
文庫判 並装 カバー
定価660円+税
カバー: 中野達彦



全十冊。
本文中挿絵16点。巻末に地図1点。



水滸伝 九 01



カバーそで文:

「宋江らは梁山泊の城壁や建物をとり壊し、いよいよ、北方の大敵、遼国の征討へと出発する。最初の敵は檀州城。迎え撃つ敵将の先鋒は阿里奇、顔は白く唇赤く、鬚は黄色く眼は碧く、身の丈九尺で力は万人力……。宋朝の官軍となった梁山泊軍団の奮戦が始まる。」


忠義水滸伝 第九冊 目録:

巻の八十三
 宋公明(そうこうめい) 詔(みことのり)を奉(ほう)じて大遼(だいりょう)を破り
 陳橋駅(ちんきょうえき)に涙を滴(したた)らせて小卒(しょうそつ)を斬る
巻の八十四
 宋公明(そうこうめい) 兵(へい)もて薊州城(けいしゅうじょう)を打ち
 盧俊義(ろしゅんぎ) 大いに玉田県(ぎょくでんけん)に戦う
巻の八十五
 宋公明(そうこうめい) 夜(よ)る益津関(えきしんかん)を渡り
 呉学究(ごがっきゅう) 智もて文安県(ぶんあんけん)を取る
巻の八十六
 宋公明(そうこうめい) 大いに独鹿山(どくろくざん)に戦い
 盧俊義(ろしゅんぎ) 兵は青石谷(せいせきこく)に陥(おちい)る
巻の八十七
 宋公明(そうこうめい) 大いに幽州(ゆうしゅう)に戦い
 呼延灼(こえんしゃく) 力(ちから)もて番(とっくに)の将(しょう)を擒(いけどり)にす
巻の八十八
 顔統軍(がんとうぐん) 陣は混天(うちゅう)の像に列(つら)ね
 宋公明(そうこうめい) 夢に玄女(げんじょ)の法を授けらる
巻の八十九
 宋公明(そうこうめい) 陣を破って功(こう)を成し
 宿太尉(しゅくたいい) 恩(おん)を頒(わか)って詔(みことのり)を降(くだ)す
巻の九十
 五台山(ごだいさん)に宋江(そうこう) 参禅(さんぜん)し
 双林渡(そうりんと)に燕青(えんせい) 鴈(がん)を射る


地図




水滸伝 九 02



◆本書より◆


「巻の八十三」より:

「宋江は、相談をきめると、馬を飛ばして、みずから陳橋駅のあたりまで来て見れば、かの下士官、死体のところにじっとつっ立っています。宋江は、自分で人を宿場の建物内へやって、酒と肉を運び出させ、全軍をねぎらい、前進させると、今度は、この下士官を宿場の建物の中まで呼んで、その実情をたずねました。下士官、答えて、
 「あいつ、何かいえば、梁山泊の謀反泥棒、梁山泊の謀反泥棒、おれたちを、八つ裂きにして殺すにも殺し尽くせぬと悪態を吐きましたので、にわかにかっとなり、あいつを殺しました。ひたすら、司令官の処罰にまかせます。」
 宋江、「あれは朝廷任命の官吏、わたしはやっぱりひけめを感ずる。きみはなぜあれを殺した。われわれみなにも連帯責任がかかるだろう。われらはいま、はじめて詔勅を奉じて大遼を破りに行く。これっぽちの手がらもないうちに、あべこべにこんな事件をし出かした。いったいどうしよう。」
 下士官は、土下座して死罪を乞います。宋江、泣いて、
 「わたしは、梁山泊にはいってから、大小の兄弟分、一人だってだいなしにしたことはなかった。今日、わが身は役人となり、何事も自分のすきほうだいにできず、法律を守らねばならぬ。きみの剛毅の気質、消えうせなくとも、むかしの本性をむき出しにはできぬ。」
 下士官、「わたくしめ、ただもう甘んじて死刑を受けます。」
 宋江、その下士官、すっかり酔うまで思い切り飲ませ、木の下で縊死(いし)させてから、首を斬ってさらしものとし、町役人の死体は棺桶を準備して納め、それから公文書を出して総理府に報告しました。」



「巻の八十八」より:

「さて、宋江は陣営の中で気をくさらせ、あれこれ思いめぐらしましたが、打つ手がありません。どうすれば遼軍が打ち破れるかと、寝食ともにすておき、寝ても醒めてもおちつかず、坐っていても横になってもいらいらしています。
 その夜は、ま冬のこととて、気候はとても寒く、宋江は天幕を閉じて、蠟燭をつけてじっと坐って考えこんでいました。頃はもう午後十時ごろ、心が疲れて、衣服はそのままに脇息にもたれて横になりますと、陣営の中に怪風が急に起こり、冷気がせまって来るように思われました。宋江、身を起こしますと、黒いうわぎの女(め)の童(わらべ)が一人、前で最敬礼を一つしました。宋江、そこで、
 「あなたはどこから来ましたか。」
 とたずねますと、童(わらべ)、答えて、
 「わたくしは、お妃さまの思し召しで、閣下をお招きにまいりました。ごめんどうですがおいで下さい。」
 宋江、「お妃さまは今どちらで。」
 童、指さし示し、「ここからすぐです。」
 宋江は、かくて童のあとについて天幕から出ました。見れば、上も下も天の光は同じ色、金と碧(みどり)がいりまじり、香ぐわしい風がそよそよと、瑞(めでた)いもやがひらひらと、まるで旧暦二月三月、春のころの気候です。半里あまりも行かぬうちに、一つの大きな森が見えました。青い松が勢いよくしげり、翠(みどり)のひのきがこんもりと、紫のもくせいがすっくとそびえ、石の欄干がちらちら見え、両がわはすべてこんもりした林にすんなりとした竹、しだれ柳にわかわかしい桃、曲りくねった欄干です。石橋をめぐり過ぎれば、朱塗りの勅使門一つ、仰いで四方を見わたせば、入口の土塀は白壁、画の書かれた棟に彫刻された梁(はり)、金(きん)の釘(びょう)の朱(あけ)の戸(とびら)、碧(みどり)の瓦の重なった簷(のき)、四方は簾に蝦(えび)の鬚(ひげ)のふさを捲き、正面は窓に亀の甲が横になっています。
 女の童は宋江を案内して、左の廊下からはいり、東向きの一つの小部屋の前まで来ますと、朱の戸をおし開いて、宋江に、
 「中でしばらくお休み下さい。」
 といいます。目をあげて見まわすと、四方は雲形の窓がひっそりと、赤の彩色が階段いっぱいに、天上の花が乱れさき、珍しい香がまつわりつきます。女の童ははいって行くと、又出て来て、おことばを伝え、
 「お妃さまのお招きです。星主さま、すぐおいで下さい。」
 宋江は、坐って席も暖まらぬうちに、すぐに立ち上がりました。すると又もや外から二人の仙女がはいって来ます。頭(こうべ)には芙蓉(ふよう)の碧玉(へきぎょく)の冠を戴き、身には金(きん)の縷(いと)の絳(あか)い綃(うすぎぬ)の衣を着、顔は満月のよう、からだは軽やかで、手は春の笋(たけのこ)のよう、宋江にあいさつをします。宋江は顔をあげようともしませんのを、かの二人の仙女、
 「閣下はなぜ謙遜なさいます。お妃さまは着物を着換えられたら、すぐおいでになります。閣下を招いて国家の大事を話しあいたいとのこと。このままどうか御同行願いとうございます。」
 宋江は二つ返事で行きました。」
「聞けば、御殿では金(きん)の鐘響き、玉(ぎょく)の磬(けい)鳴って、腰元が宋江を招いて御殿に昇らせれば、二人の仙女が先に立って宋江を案内し、東の階段から登って、真珠の御簾(みす)の前まで行きますと、宋江に聞こえたのは、御簾の内で頭飾りの玉のちりちり、帯玉のちゃらちゃらという音。腰元が宋江に御簾内にはいり、香づくえの前に跪くようにいいます。目を挙げて御殿の上を見渡せば、めでたい雲がうっすらと、紫の霧がゆらゆらあがり、正面の九竜の床几の上に、九天玄女お妃さまが坐っておられます。頭(かしら)には九竜と飛ぶ鳳凰の冠を戴き、身には七宝の竜と鳳凰もようの絳(あか)い綃(うすぎぬ)の衣を着、腰には山河日月の裙(も)を繋(つ)け、足には雲霞もようの真珠の履(くつ)をはき、手には無瑕(むきず)の白玉の珪璋(けいしょう)を持ち、両がわの侍従の仙女、二、三十人ばかりおります。
 玄女お妃は、宋江にむかい、
 「わたくしがそなたに天書を伝えてより、知らぬまに又早くも数年になりました。そなたはよく忠義を堅く守り、少しも怠りませぬ。今、宋の天子はそなたに遼を打ち破らせているが、勝負はいかがですか。」
 宋江、地べたに平伏し、奏上致します。
 「わたくしめ、お妃さまより天書を賜わりましてから、軽軽しく人に漏らしたことはございませぬ。今、天子さまの勅命を承り、遼国を破ろうとしておりますが、はからずも兀顔総司令官がこの混天象の陣を敷いたがために、数度の重なる敗けいくさ。わたくしめ、手だての施しようなく、今ぞ危急存亡の時でございます。」
 玄女お妃、「そなたは混天象の陣立てをご存じか。」
 宋江、ていねいに拝礼して、奏上します。
 「わたくしめは下界の愚かもの、その陣立ては存じませぬ。何とぞ、お妃さま、お教え下さいませ。」」

「宋江はていねいに拝礼して、ねんごろにお妃さまに礼をいい、御殿を出ます。腰元が宋江を案内して御殿を降り、西の階段から出て、朱塗りの勅使門をめぐり過ぎて、又もやもとの道をたおり、石橋の松並木を過ぎたかと思うと、腰元が手で指し示し、
 「遼兵があそこにいます。あなたが破るがよい。」
 宋江が振りむくと、腰元が手で一押し、はっと目が覚めて見れば、天幕の中で夢を見ていたのでありました。」



「巻の八十九」より:

「宋江はそれを聞いて、あっと驚きましたが、黙って心に思うことあり、やがて、
 「きみ、こんな活き仏さまがあそこにいらっしゃるのなら、なぜ早くいわないのだ。われわれといっしょに行ってごあいさつし、将来のことをおたずねして見よう。」
 さっそく、ひとびと相談しますと、みな行きたいとのこと。ただ公孫勝だけが、道教なので行きません。」



「巻の九十」より:

「あくる日、公孫勝が宿営の本隊司令部まで来て、宋江らひとびとにむかい、お辞儀をすると、改まって宋江にむかい、
 「先日、お師匠さま羅真人(らしんじん)がわたくしにいいつけられ、かねて兄上に申し上げましたとおり、わたくしに兄上が都に帰るのを見送らせて、それがおわった日には、すぐ山中にもどって道を学べとのことでございました。今日、兄上は功成り名遂げ、わたくしも長く留まるわけにまいりませぬので、今、兄上にお暇乞いし、みなさまに別れを告げて、今日ただいま、山中に帰り、お師匠さまに従って道を学び、老いた母に孝養を尽くして、寿命を全う致します。」」







こちらもご参照ください:

『完訳 水滸伝 (九)』 清水茂 訳 (岩波文庫)
孟元老 『東京夢華録 ― 宋代の都市と生活』 入矢義高・梅原郁 訳注













































































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Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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