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安楽庵策伝 著/鈴木棠三 校注 『醒睡笑』 (岩波文庫) 全二冊

「世の中の人の心のすきずきをわれに似ぬとて偏執(へんしふ)なせそ」
(安楽庵策伝 『醒睡笑』 より)


安楽庵策伝 著
鈴木棠三 校注 
『醒睡笑 (上)』
 
岩波文庫 黄/30-247-1 


岩波書店 
1986年7月16日 第1刷発行
1988年4月15日 第3刷発行
438p 
文庫判 並装
定価700円



本書「凡例」より:

「本書は読解しやすいことを目的として、当字や仮名違いを正した。従って、表記については、原本通りではない。」



醒睡笑 上



帯文:

「落語家の元祖といわれる著者が、戦国時代の笑話・奇談を集大成した書。近代落語に多くの材料を提供した最古の咄本である。(全2冊)」



醒睡笑



安楽庵策伝 著 
鈴木棠三 校注 
『醒睡笑 (下)』
 
岩波文庫 黄/30-247-2 


岩波書店 
1986年9月16日 第1刷発行
362p 
文庫判 並装
定価550円




醒睡笑 下



帯文:

「素朴で骨太な戦国時代の笑話の集大成。大部分は著者自身が耳で聞いたものの筆録で、説話研究の好資料である。付・索引。(全2冊)」


「醒睡笑 上巻」目次:

序 (鈴木棠三)
凡例


巻之一
 謂(い)へば謂(い)はるる物(もの)の由来(ゆらい)
 落書(らくしょ)
 ふはとのる
 鈍副子(どんふす)
 無智(むち)の僧(そう)
 祝(いは)ひ過(す)ぎるも異(い)なもの
巻之二
 名付(なづ)け親方(おやかた)
 貴人(きにん)の行跡(かうせき)
 躻(うつけ)
 吝太郎(しはたらう)
 賢(かしこ)だて
巻之三
 文字知(もじし)り顔(がほ)
 不文字(ふもじ)
 文(ふみ)の品々(しなじな)
 自堕落(じだらく)
 清僧(せいそう)
巻之四
 聞(きこ)えた批判(ひはん)
 いやな批判(ひはん)
 そでない合点(がてん)
 唯(ただ)あり
巻之五
 婲心(きやしやごころ)
 上戸(じようご)
 人はそだち



「醒睡笑 下巻」目次:

巻之六
 児(ちご)の噂(うはさ)
 若道(にやくだう)知(し)らず
 恋のみち
 悋気(りんき)
 詮(せん)ない秘密
 推(すゐ)はちがうた
 うそつき
巻之七
 思(おもひ)の色を外(ほか)にいふ
 いひ損(そこな)ひはなほらぬ
 似合うたのぞみ
 廃忘(はいまう)
 謡(うたひ)
 舞
巻之八
 頓作(とんさく)
 平家
 かすり
 秀句(しうく)
 茶(ちや)の湯(ゆ)
 祝(いは)ひすました

解説 (鈴木棠三)

索引
 一 神・仏・人名
 二 社・寺・地名
 三 書名・巻名・曲名等
 四 語句・事項
 五 和歌・連歌・発句・詩句




◆本書より◆


「巻之一 鈍副子」より:

「小僧あり。小夜(さよ)ふけて長棹(ながざを)をもち、庭をあなたこなたと振りまはる。坊主これを見付け、「それは何事をするぞ」と問ふ。「空の星がほしさに、うち落さんとすれども落ちぬ」と。「さてさて鈍なるやつや。それほど(一)作(さく)がなうてなる物か。そこからは棹(さを)がとどくまい。屋根へあがれ」といはれた。」
「一 作意がない。工夫がない。」

「越中(ゑつちう)に(一)井見(ゐみ)の庄殿(しやうどの)といふ大名(だいみやう)あり。世にすぐれたるうつけなりし。母儀(ぼぎ)、常にくやみ歎き給ひしが、ある時の見参(げんざん)に、「(二)笑止(せうし)や。そなたを内の者侮(あなど)り、何事もいひたきままにいうて、(三)道なき作法(さはふ)と聞く。ちと折ふしは(四)歯をもぬき、折檻(せつかん)もあらば、さほどまではあるまじきものを」と教訓(けうくん)あれば、「心得たり」と(五)うけごひ、是非とも(六)一歯(ひとは)ぬかんものをとたくまれし。
 さる程に(七)八朔(はつさく)の礼とて、諸侍(しよざむらひ)出仕(しゆつし)ある。家老(からう)の人申す様、「今日(こんにち)の御祝儀(ごしうぎ)、(八)千秋万歳(せんしうばんぜい)、ことに天気よく」と祝ふなかばに、かの大名、「なにと、御祝儀天気もよしと。さう言ひたきままには言はせまいぞ」。」
「一 いまの富山県中新川郡上市町のあたり。弓庄ともいった。二 困ったことだ。三 規律がすっかり乱れている。四 腹をも立てて。五 うけがひ。六 一番、おこってやろう。七 八月一日の祝儀。室町時代以後武家の間で盛んに行い、公家にも取入れられた風俗。(中略)。八 千年も万年も長生きなさいますよう。人を祝っていう語。」



「巻之二 躻」より:

「ある人風呂(ふろ)に入りてゐけるが、俄(には)かに顔の色かはり、「あら苦しや、(一)船心(ふなごころ)がある」というて吐逆(とぎやく)する。「こは何事ぞ。海はなし、船はなし。異(い)な病や」と不審(ふしん)しければ、「さればよ、ただ今これへ入られたる大ひげの男、この程乗りし船の船頭(せんどう)に、よく似たと思うてあれば、そのまま酔(よ)うた」と。」
「一 船酔いの気分。」

「(一)金春禅風(こんぱるぜんぷう)、毎朝の(二)看経(かんきん)怠慢(たいまん)なし。ある朝、(三)艮(うしとら)の方(かた)にむかひ、手を合せ数珠(じゆず)をもみ、「そのもの、そのもの」とばかりにて、神の名も仏の名も、更に出でざりしかば、側にある者、「春日大明神(かすがだいみやうじん)かや」。「それそれ、それを、春日春日」と。これは(四)健忘(けんばう)とて、大智の上にもある病なり。あやまりにあらざれども、時にあたりては、うつとりのやうにて、この部(ぶ)に入る。」
「一 金春(こんぱる)禅鳳の誤であろう。(中略)。二 読経。三 東と北との間の方位。四 忘れっぽいこと。物忘れがはげしいこと。」

「(一)脇に出る太夫(たいふ)、楽屋(がくや)にて(二)目に仏をうしなひ、物をたづね廻る風情(ふぜい)あり。人みな不審(ふしん)し、「なにが見えぬぞ。ともどもたづね見ん」といへども、「いや、ちとものが」と(三)秘所(ひしよ)して言はず。ありありてのち、「唯今ここにおきたる烏帽子(ゑぼし)が無い」と。「そちがあたまにきて居るは」とわらふ時にぞ、探(さぐ)り見て、「実(げ)に(四)けんようもない所にあつたよ」。」
「一 能のワキ。(中略)。二 夢中で物を探すさま。仏は、目ぼとけ(ひとみ)。三 かくす。(中略)。四 思いがけない。意外な。(中略)」

「ちと(一)たくらだのありしが、人にむかひて、「われは日本一の事を、(二)たくみだいたは」といふ。「何事をか」と問ふ。「さればよ。臼(うす)にて米(こめ)を搗(つ)くを見るに、勿論(もちろん)下へさがる杵(きね)は役(やく)にたつが、上(うへ)へあがる杵が(三)いたづらなり。所詮(しよせん)、上にも臼を(四)かひさまにつり、米をいれて搗かば、(五)もろともに米しろみ、杵のあげさげ(六)そつになるまいと、思案(しあん)したり」といひはてぬに、「さて、吊りさげたる臼に米の入れやうは」と問へば、「まことに、その思案はせなんだよ」。」
「一 ばか。あほう。(中略)。二 たくらみだす。考えつく。三 むだ。役に立っていない。四 さかさま。(中略)。五 諸本「両とも」。「もろとも」と読む。六 ついえ。むだ。無益。」

「さかしからぬ者、いかがしたりけん、とりはづして井(ゐ)にはまりし事あり。人こぞりて、梯子(はしご)などさげ、「早くあがれ」といふに、「われは(一)一世(せ)の面目(めんぼく)をうしなうた。あがりても(二)人間(ひとあひ)はなるまい。これからすぐに(三)高野(かうや)へのぼる」と。」
「一 一生涯の不名誉。二 人まじわり。三 高野山へ登って坊主になる。」



「巻之三 不文字」より:

「(一)地蔵講(ぢざうかう)の式目(しきもく)といふ外題(げだい)を見、大蔵(おほくら)といふ人、地くら講とよむ。武蔵(むさし)は、地さし講とよむ。また傍(かたはら)にのぞきゐたる或泉坊(わくせんばう)は、式目の式を或目(わくもく)とよめり。」
「一 地蔵菩薩の功徳を講讃する法会。」



「巻之四 そでない合点」より:

「夜もいまだ明(あ)けやらぬに、(一)中間(ちうげん)たる者戸をあけ、「さてもおびただしく雪の降りたるは」といふ声しけり。亭主聞きつけ、「如何程ふりたるぞ」と問へば、「されば深(ふか)さは五寸(すん)ほどつもりて候。幅は知れぬ」と申したり。
「一 中間男の略。侍と小者との間に召使われたゆえの名という。」

「借銭(しやくせん)を乞(こ)ひに、幾度(いくたび)人を遣(つか)はせども、(一)なすことなし。さらばとて(二)直(ぢき)に行き、「これの亭主(ていしゆ)道善(だうぜん)に逢(あ)はむ」と言ふ。亭主出でて、「道善は留守(るす)に候」といふ。「いや、そちは道善ではなきか」。「さてここな人は。亭主の道善が、直に逢うて留守といふを、疑(うたが)はるるかや」。」
「一 返済する。かえす。二 じかに。直接に。」



「巻之六 うそつき」より:

「信長公岐阜に御座の時、(一)沼の藤六、尾州より、「只今参りて候」と申上ぐる。「何事も尾張に珍しき事はなきか」と御諚(ごぢやう)あるに、「されば(二)鵺(ぬえ)を木にて造りたるが御座候」と申上ぐる。「嘘であらうず。さりながら実(まこと)か、その様子を聞かん」と仰せの時、「あたまはさるすべり、尾はくちなし。なく声(三)ぬでの木にて」と申したり。」
「一 (中略)。二 トラツグミの異名。平安時代から怪鳥の名とされ、『和名抄』にも「怪鳥也」と注する。源三位頼政が禁中において射落したというヌエは怪獣で、「頭は猿、軀は狸、尾は蛇(引用者注:訓「くちなは」)、手足は虎の姿にて、鳴く声は鶫(引用者注:「鵺(ぬえ)」)にぞ似たりける」(『平家物語』四)とある。藤六のでたらめも、右の知識に基づき、名の似よった植物の名におきかえた。三 五倍子木(ふしのき)の異名。ヌルデも同じ物の異名。」



「巻之七 似合うたのぞみ」より:

「数人(すにん)あつまり居、おのが心々の望みを語りつるに、ひとりはいふ、「われはただ生れつきたる両眼の外に、目を三つほしい。一つは背につけ、(一)だしぬき、闇討(やみうち)の用心かたがた、後(うしろ)の方を自由に見たい。一つは膝頭(ひざがしら)につけ、夜陰(やいん)の歩行あやまちなからん。一つは手の(二)たけたか指の先につけ、能の時または(三)風流(ふりう)、何にても見物の時、人のせいたけにかまはず、手をさし上げて見たい」と。」
「一 だしぬけに襲われる。二 中指。三 田楽・延年・狂言など。また民間で行う盆踊ふうの風流もある。」






こちらもご参照ください:

鈴木棠三 『ことば遊び』 (中公新書)
鈴木棠三 編 『中世なぞなぞ集』 (岩波文庫)
柏木如亭 著/揖斐高 校注 『訳注聯珠詩格』 (岩波文庫)












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Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
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◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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