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J・G・フレーザー 『火の起原の神話』 青江舜二郎 訳 (角川文庫)

「キジキジはまだ火を見たことがなかった。」
(J・G・フレーザー 『火の起原の神話』 より)


J・G・フレーザー 
『火の起原の神話』 
青江舜二郎 訳
 
角川文庫 2787


角川書店 
昭和46年10月20日 初版発行
平成元年11月15日 再版発行
345p 
文庫判 並装 カバー
定価570円(本体553円)
カバー・デザイン: 鈴木一誌



本書「あとがき」より:

「本書はJ・G・フレーザーの“火の起原に関する神話”(Myths of the Origin of Fire. 1930. London.)の完訳である。ただし巻末の索引は省いた。」


角川文庫創刊40周年記念特別企画「リバイバル・コレクション PART II」。



フレーザー 火の起原の神話



カバーそで文:

「原始宗教の起原を
呪術とその儀礼に探り、
諸文化の様相を導きだそうとしたフレーザーが、
意識下にうごめく
世界各国の民俗の深層心理を
「火の神話」を通じて描いた名著。」



目次:

まえがき
第一章 序論
第二章 タスマニア
第三章 オーストラリア
第四章 トレス海峡諸島とニューギニア
第五章 メラネシア
第六章 ポリネシアとミクロネシア
第七章 インドネシア
第八章 アジア
第九章 マダガスカル
第十章 アフリカ
第十一章 南アメリカ
第十二章 中央アメリカとメキシコ
第十三章 北アメリカ
第十四章 ヨーロッパ
第十五章 古代ギリシャ
第十六章 古代インド
第十七章 要約と結論

あとがき (訳者)




◆本書より◆


「オーストラリア」より:

「カーペンテリア湾の南西に住むマラ族には次のような伝説がある。昔、大きな松の木が一本あって、まっすぐ空にまでとどいていた。毎日のように、男や女や子供たちが、多勢この木を使って、空に上ったり下りたりしていた。ある日、人々が空高くのぼっていた時、カカンという名の年老いたタカが、二本の木をこすりつけて、火をおこす方法を発見した。ところが、白いタカと口論をしている間に、火事が起こり、こともあろうに、松の木が燃えてしまった。上にいた人々は、ついに地上に下りることができず、今も空に入る。この人々は、頭や肘(ひじ)や膝(ひざ)や、ほかの関節にも水晶をはめこんでいたが、それが夜になると光をはなち、われわれはその水晶のきらめきを、“星”と呼んでいるのである。」

「北オーストラリアのカカデュ族には、二人の兄弟の伝説がある。彼らは異母兄弟で、どちらも、ニンビアマイイアノゴといった。二人は二人の女、すなわち母親たちと狩りにでかけた。兄弟が、アヒルと羽にとげのあるチドリをとっている間、母親たちは池でユリ根や種をさがしていた。そのころ、兄弟は火も知らず、火のおこし方も知らなかったが、二人の女はそれを知っていた。兄弟が狩りをして森の奥にいる間、女たちは食べ物を料理して、自分たちだけで食べてしまった。食事が終わるころ、遠くに兄弟が帰ってくるのが見えた。女たちは彼らにそれを見せまいといそいで灰を集めると、まだ火のついているものを、自分たちの陰部につっこんでしまった。兄弟は帰ってくると、“火はどこだ”と言った。女たちは答えた。“火なんかりませんよ”そこではげしい言い合いが始まりたいへんな騒ぎになった。とうとう女たちは兄弟に、方々から集めて料理してあったユリの根を食べさせた、そして皆は、肉やユリの根で腹いっぱいになると、長い間ねむった。目をさますと、兄弟はまた狩りに出かけ、女たちはまた食事を料理した。ひどく暑い時だったので、兄弟がとってきた鳥で残ったものは、全部腐ってしまった。そこで二人はまた狩りにでた。二人は、遠くでまた、女たちの野営地が明るく燃えているのをみた。羽にとげのあるチドリは、飛んでいって、女たちに二人が帰ってくることを知らせた。前と同じようにして、女たちは火と灰を隠した。兄弟が火はどこにあるのかとたずねても、火などはないと言い張るので二人は言った。“おれたちは火を見たんだ”しかし女たちは答えた。“あるもんか。からかうのはおよし。火なんかないよ”兄弟はまた言った。“大きな火だったぞ。火がなけりゃ、どうやって料理したのだ。太陽が料理したとでもいうのか。太陽がユリを焼いたというなら、なんでおれたちのアヒルも料理して、腐らないようにしてくれないんだ”返事はなかった。それからまた皆ねむった。目をさますと、兄弟は女たちから離れて、アイアン・ウッドの根を掘りおこし、樹脂をとった。それから、二本の棒を手にとってたがいにこすり合わせると火がおきることを知った。兄弟は女たちがうそを言ったことを怒って、ワニに姿を変えて女たちをこらしめようとした。そこで、アイアン・ウッドの樹脂をこねて、二つのワニの頭をこしらえ、自分たちの頭にそれをのせると、池に飛び込んだ。女たちが池に魚をとりにやって来ると、ワニの頭をつけた兄弟は、女たちを池に引きずりこんで、殺してしまった。二人が死ぬと、ワニ男たちは女の死体を土手に運び、“起きろ。なんでおまえたちは火のことでうそをついたんだ”と言った。死んだ女は何も答えなかった。兄弟は、ワニの頭をかぶってはいたが、しばらくの間はまだ手足は人間の形をしていた。しかし、そのうち、彼らはほんとうのワニになってしまった。二人はこの動物の最初である。その時まで、こんな動物はまだいなかった。」



「インドネシア」より:

「ボルネオのシードヤク人は言う。大洪水で一人の女を除いて、人類すべては、死んでしまった。そのたった一人の生き残りが、密林のつる草の根元に一匹の犬が寝ているのをみつけた。そして、つる草の根元が暖かいんだなと思い、もしかしたら、そこから火をひき出せるかもしれないと考えた。そこで、彼女は、その木の二片をこすりあわせてみた。このようにして、火をおこすのに成功した。これが、火おこし作業の初まりであり、大洪水後の最初の火の製作である。
 北ボルネオの奥地の丘陵の多い地方に住むムルト人は、大洪水後の生き残りは兄と妹の二人で、彼らは結婚して犬の親になったという伝説を持っている。ある日、少年は、犬をつれて、狩猟に出かけた。キリアンの木の根もとを通りかかったとき、犬はその根をとって、もちかえり、日光にあてて、乾かした。それから犬は少年に、根のまん中に穴をあけ、そこに棒をさしこみ、手で力強くそれをこするように言った。少年が、言われるとおりにすると、火花がとび出した。これが火の起源である。その後、少年と少女は双子を生んだ。彼らは、キリアンの根を与えられると、他の地方へ送られた。」

「アンダマン島の神話のある一つでは、ハトが人類に最初に火をもたらした鳥として、カワセミとともに想起され、または、その代わりに置き代えられている。まったく恣意的な変形としてこんなのもある。最初に、火を発明し、それを獲得したのは、クルマエビさまであった。炎暑のために、カラカラに乾いたヤマイモの葉に火がつき燃えた。クルマエビさまはたき木で火をつくり、ひと眠りした。カワセミはその火を盗んで持ち去った。彼はそれから火を作り、魚を料理した。満腹したので彼は眠った。ハトはカワセミから火を盗んで逃げた。アンダマンの先祖に火を与えたのはそのハトだと言われている。」



「アフリカ」より:

「ロアンゴには、昔、クモが長い糸を出した。そして、風が片方の端を空にまで運んだ、その時、キツツキがその糸をつたわり天空に着き、そこにわれわれが星と呼ぶ孔を作ったのだ。キツツキのあとに、人間が糸をつたって空に登っていき、火を持ってきたのだ――という話がある。だが、また空から赤々と輝く涙が落ちて来た場所に人間は火を見つけたのだという話もある。
 カメルーンの国境にある南ナイジェリアのエコイ族によれば、この世が始まるにあたって、空の神、オバッシイ・オサウはすべてのものを作ったが、人間には火をくれなかった。オバッシイが火をくれないので、エティム・ネは“ちんば小僧”に言った。“オバッシイが火をくれずにわれわれをここに送ったのはどういうわけだろう、行って火をくれるように頼んでみてくれ”そこで“ちんば小僧”は出発した。」



「北アメリカ」より:

「ヌートカの北方、ヴァンクーバー島のインディアン、カトロルトク族も、昔、火はなかった。一人の老人に娘があり、彼女は、すばらしい弓矢をもち、それでもってねらうものは何でもを射ち落としていた。しかし、彼女は、たいへん怠けもので、のべつ眠ってばかりいた。父親は怒って彼女に言った。“寝てばかりいないで弓をとって、大洋のへそでも射てみろ。そしたら、火が得られるかもしれんぞ”さて、大洋のへそとは、巨大な渦巻きで、その中には摩擦によって火をおこすための棒きれが漂っていた。娘は弓をとり、大洋のへそを射た。すると、摩擦によって火をおこすための仕掛けは、浜に打ち上げられた。老人は、たいへん喜び、大きな火を作った。それを自分だけのものにしたくて彼は、一つしか戸のない家を建てた。その戸は、まるで口のようにすばやく開け閉めができ、その中に入ろうとする者をみな殺した。しかし、人々は、彼の家の中に火のあることを知り、シカは、彼らのために、火を盗む決心をした。そこで彼らは、樹脂質の木を取って、割り、彼の髪に、そのかけらをさしこんだ。それから、二そうのボートを一緒にくっつけて、それらを飾りつけ、老人の家へと舟を走らせながら、その甲板で歌いながら踊った。彼は歌った。“おお わしは火をとりに行く!”老人の娘は、彼の歌を聞いて、父親に、“あのよそ者を家に入れましょう。じょうずに歌って、踊っているもの”と言った。そのうちにシカは上陸し、歌い踊りながら戸口に近づいてきた。彼は、あたかも中に入るようにして、戸の前で飛びあがった。ピシャリと戸は閉まった。ふたたび戸口があいた時、シカは、家の中にとびこんだ。そこで、彼は、まるで自分を乾かすように火のそばに坐り、そして歌を続けた。同時に彼は、自分の頭を、火のほうにかしげた。とうとうそれは黒くすすけ、髪にくっついている木のかけらに火がついた。それから彼は家から飛び出して逃げ、人間どもに火を届けた。」




















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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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