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『ボードレール全集 Ⅰ』 福永武彦 編集

「彼は風とたわむれる、流れる雲と語り合う、
十字架に通じる道を、恍惚と歌い行く。」

(ボードレール 「祝福」 より)


『ボードレール
全集 Ⅰ』
 
福永武彦 編集
訳者代表: 福永武彦


人文書院 
1963年5月15日 初版印刷
1963年5月25日 初版発行
97p+426p xviii
口絵(モノクロ)8p 
四六判 丸背布装上製本 機械函
定価750円
装釘: 中井貞次

月報 1 (8p):
小詩人(中村光夫)/ゲオルゲ訳『悪の華』(大山定一)/オンフルール詩篇(井上究一郎)/ボードレール・逸話と伝説(阿部良雄)/図版(モノクロ)3点



全四冊。
本文二段組。本文中図版40点。



ボードレール全集Ⅰ 01



目次:

緒言 (福永武彦)
詩人としてのボードレール (福永武彦)
ボードレール年譜 (福永武彦)

悪の華(初版) (福永武彦 訳)
悪の華(再版) (福永武彦 訳)
新・悪の華 (福永武彦 訳)
『悪の華』付録
 初期詩篇 (阿部良雄 訳) 
 拾遺詩篇 (阿部良雄 訳)
 詩草稿(断片) (福永武彦 訳)
 エピローグ草稿(断片) (福永武彦 訳)
 『悪の華』序文草稿 (高畠正明 訳)
 弁護士のためのノートと資料 (高畠正明 訳)
パリの憂愁(小散文詩) (福永武彦 訳)
散文詩草案 (阿部良雄 訳)

解題と注
 悪の華(初版)
 悪の華(再版)
 新・悪の華
 『悪の華』付録
 パリの憂愁

巻末付録
 題名総目次
 図版目次
 詩題名索引




ボードレール全集Ⅰ 03



◆本書より◆


「悪の華(初版)」「祝福」より:

「至上の力持つ神の命令に従って、「詩人」が
退屈きわまりないこの地上に現れる時、
恐怖に襲われた母親は、瀆神の思いに胸ふたぎ、
神に拳を振り上げる、憐れみの眼で見守る神に。」

「彼は風とたわむれる、流れる雲と語り合う、
十字架に通じる道を、恍惚と歌い行く。
そして彼の遍歴のあとにつき従う「聖霊」は、
森の小鳥のように快活な、彼の姿に涙ぐむ。」



「悪の華(初版)」「太陽」より:

「僕は行く、ひとり、風変りな武者修業に、
街の隅々に偶然の生み出した韻律を嗅ぎまわり、
鋪石(しきいし)につまずくように言葉の上に足を取られ、
時にはばったり、長いこと夢みていた詩句を見出し。」



「悪の華(初版)」「旅への誘い」:

   「愛する妹よ、
   いとしい子よ、
行こう、二人して暮すために!
   ――のどかな愛と、
   愛と死と、
お前によく似た遠い国に!
   霧の空には、
   濡れた陽は
お前の涙のかげにかがやく
   移り気な眼の
   不可思議の
魅力のように、わたくしを焼く。

そこにすべては整いと美と
栄華と悦楽と静けさと。

   年月を越え
   色は冴え、
家具は二人の小部屋を飾り、
   稀な花々
   香(こう)の幽かな
匂にまじりその香はくゆり、
   鏡は深く
   窓は高く、
東洋の遠い豪奢を凝(こ)らす
   すべてのもの、
   その生の
やさしい秘密の言葉を洩らす。

そこにすべては整いと美と
栄華と悦楽と静けさと。

   運河のほとり
   船は眠り、
さすらいの旅の想いをのせながら、
   お前の望みに
   つくすために
船は来る、遠くこの世の極みから。
   ――沈む陽のもと、
   野と運河と、
すべての街はあかねの色に、
   こがねに燃える。
   ――世界は眠る、
このあつい光のただ中に。

そこにすべては整いと美と
栄華と悦楽と静けさと。」



「悪の華(再版)」「パリの夢」:

「Ⅰ

生ある者が見たこともない
この恐るべき風景の
おぼろげに遠い幻は、
今朝も僕を魅してやまぬ。

眠りは奇蹟に充ちている!
奇妙な気紛れにそそられて、
僕はこれらの景色から
不揃いな植物の類を取り除き、

己(おの)が天才を誇る画家のように、
僕の絵の中に味わっていた、
金属、大理石、水のつくりあげた
うっとりするような単調さを。

階段、拱廊(きょうろう)に富むバベルの塔、
涯(はて)も知らない宮殿だった、
滝や泉水は流れ落ちた、
いぶし金(きん)、輝く金(きん)の水盤に。

水嵩(みずかさ)あふれる大瀑布は
水晶の幕かと疑われ、
金属製の壁また壁に
きらめきながら懸っていた。

まどろむ池水はめぐらした、
樹ではなくて群れ立つ柱を、
そこに住む人より大きな水の精たち、
女らしく水の鏡に化粧した。

水は青い帯をなして、
薔薇色(ばら)と緑色(みどり)の河岸(かし)の間を、
幾千万里の距離にわたって
この世の涯(はて)へと流れて行った。

岸は見たこともない宝石づくりで、
水は魔法のように光っていた、
そこに映し取るすべてのもので
まぶしく輝く無数の鏡だった!

空に映ったガンジス河、
悩みもなければ音もなく、
甕(かめ)にみたした宝石を
ダイヤモンドの淵に注ぎ流した。

この桃源境の建築師、
思いのままに振舞う僕は、
宝石づくりのトンネルの下、
手なずけた大海(おおうみ)をくぐらせもした。

こうしてすべては、墨色(すみいろ)までも
明るく磨かれ、紅と輝き、
結晶化した光線の中に、
液体はその栄光を鏤(ちりば)めた。

空の隅々を見渡しても、
この奇蹟の眺めを照らし出す
星もなければ陽(ひ)もなかった、
何と自らの火に燃えていた!

そしてこの躍動する驚異の上に
(その恐るべき新しさ! 眼を愉(たの)しませる
ものばかりで、耳にためには何もなかった!)
永遠の沈黙が天翔(あまがけ)った。



燃えさかるこの眼を遂に開いた時、
僕は見た、惨(みじ)めな僕の仕事部屋を、
呪(のろ)わしい悩みごとの切先(きっさき)が
胸えぐるのを僕は感じた。

不吉な響きの振子時計は
荒びた声で正午を打った、
空は暗い曇(くもり)を降りそそいだ、
悲しい無感覚な世界の上に。」



「パリの憂愁」「異邦人」:

「――君は一体誰が一番好きなんだ、え、謎のような男よ? 父親か、母親か、妹か、それとも弟か?
 ――僕には父も、母も、妹も、弟もない。
 ――友達か?
 ――君は今日の日まで、僕がその意味さえ知らない言葉を使った。
 ――祖国か?
 ――それが如何なる緯度の下に在るのかさえ、僕には明かでない。
 ――美人はどうだ?
 ――そう、もし不死の女神ででもあることなら、悦んで好きになりもしようが。
 ――金(かね)は?
 ――君が神を嫌うように、僕はそいつが大嫌いだ。
 ――ええ! 一体それじゃ何が好きなんだ、不思議な異邦人よ?
 ――僕の好きなのは雲さ……。流れて行く雲……あそこを……あそこを……あの、類(たぐい)稀な雲なのさ!」







こちらもご参照ください:

『ボードレール全集 Ⅱ』 福永武彦 編集
『ポオ全集 第三巻』 (全三巻)



























































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うまれたときからひとでなし
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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

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