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オズヴァルド・ヴィルト 『中世絵師たちのタロット』 今野喜和人 訳

「学び取れ! 他の人の声に耳を傾けよ。だが、とりわけ己の内なる声に耳を傾けよ。理解するために熟考せよ。己が用いる、己自身の学問を形成せよ。己の中に顕わになる宗教を、心の中に抱け。」
(オズヴァルド・ヴィルト 『中世絵師たちのタロット』 より)


オズヴァルド・ヴィルト 
『中世絵師たちのタロット』 
今野喜和人 訳



国書刊行会 
2019年6月20日 初版第1刷印刷
2019年6月30日 初版第1刷発行
368p 図版(カラー)32p
菊判 丸背紙装上製本 貼函
定価4,800円+税
装訂: コバヤシタケシ



本書「訳者あとがき」より:

「本書は Oswald Wirth, *Le Tarot des Imagiers du Moyen Age*, Le Symbolisme, Paris, 1927 の全訳である。同書には1966年に Tchou 社からロジェ・カイヨワの序文付きで出版された再版本があり、その序文の訳も併せて収録した。」


本文中に著者による挿図多数。
本書はやはり気になったので自分への年末大サービスで購入してみました。ホドロフスキーのカモワンタロット本はニューエイジ思想でしたが本書は象徴主義ヘルメス学です。自分としてはヴィルトの方がしっくりきます。本書で解説されているのは大アルカナだけなのでタロット占い実践用にはホドロフスキーの方がよいです。



ヴィルト 中世絵師たちのタロット 01



帯裏文:

「アンドレ・ブルトンに大きな影響を与え、
種村季弘の重要なソ0-スともなったタロット解釈の歴史的名著がついに邦訳なる!
スタニスラス・ド・ガイタの慫慂により、ヴィルト自らが、神話世界、天文学、占星術、カバラ、ヘブライ文字、フリーメイソン、錬金術など、多種多様な神秘思想に基づいて制作したタロットに秘められた深遠なる意味が解き明かされる。
巻末には貴重な1889年版、切り取って使うことのできる1926年版のカードをオールカラーで収録。」




ヴィルト 中世絵師たちのタロット 02



目次:

ロジェ・カイヨワによる序文

亡きスタニスラス・ド・ガイタに捧ぐ
はしがき

第一部 タロット 全体考察および論理的区分の考察
 Ⅰ タロットの起源
  遊戯用のカード
  いわゆる『トートの書』
  テラフィム
  実証的データ
  イニシエーションとしてのタロットの価値
 Ⅱ タロットの秘密を明らかにする表徴
  〈輪〉
  反対物の類似
  ヤキンとボアズ
  タロットの軸
  アルカナの第一グループ
  解明のための置換
  アルカナの第二グループ
  第三グループ
  最終グループ
  11個のペア
  四項対比
 Ⅲ カバラとタロット
  21という数字
  三項の法則
  神智学的操作
  セフィロート
  三×三項
  総合的な三項
  三つの七項
 Ⅳ 占星術・天文学とタロット
  黄道十二宮
  黄道十二宮外の星座
  ギリシア天球図の全体的象徴
 Ⅴ シンボリズムの諸観念――形体と色彩
  四つの表意記号
  円
  十字
  惑星の記号
  三角形
  四角形
  色彩
 Ⅵ タロットとヘブライ文字

第二部 中世の秘められた知恵に関わる22のアルカナのシンボリズム
 象徴の言語
 Ⅰ  【奇術師】
 Ⅱ 【女教皇】
 Ⅲ 【女帝】
 Ⅳ 【皇帝】
 Ⅴ 【教皇】
 Ⅵ 【恋する男】
 Ⅶ 【戦車】
 Ⅷ 【正義】
 Ⅸ 【隠者】
 Ⅹ 【運命の輪】
 Ⅺ 【力】
 Ⅻ 【吊るされた男】
 ⅩⅢ 【死神】
 XIIII 【節制】
 XV 【悪魔】
 XVI 【神の家】
 XVII 【星】
 XVIII 【月】
 XVIIII 【太陽】
 XX 【審判】
 XXI 【世界】
 XXII 【狂人】

要約と総括
 Ⅰ 宇宙創成論の概略
 Ⅱ タロットから導き出されるイニシエーションの課程
 Ⅲ ヘルメス哲学に照らして見たタロット
 Ⅳ タロットとフリーメイソンの対応

第三部 占術に応用されたタロット
 Ⅰ 想像力
 Ⅱ 占いの術
 Ⅲ 占術の道具
 Ⅳ タロット占い
 Ⅴ 託宣の解釈
 Ⅵ 解釈の例
 Ⅶ 占いの術に関する現実
 結論

補遺 本文に挿入されたパンタクルのシンボリズムに関する概略
 様々なパンタクル
 円、六芒星、〈まんじ〉
 ヘルメス思想
 薔薇十字とフリーメイソン
 占星術
 神話学
 タロット

索引
訳者あとがき

図版
 1889年版
 1926年版




◆本書より◆


「亡きスタニスラス・ド・ガイタに捧ぐ」より:

「象徴に語らせることができるようになれば、いかなる論説よりも雄弁になる。それは「失われた言語」、つまりは永遠に生きる思想を謎めかして表現しているので、これを回復する手助けをしてくれるのだ。あらゆる時代、諸々の宗教、神話、詩的空想を生み出した思想家たちに共通する、沈黙の深遠な叡智を表現したヒエログリフを解読すれば、常に人間の精神を領してきた問題に関して、首尾一貫した観念を引き出すことができる。(中略)言葉に縛り付けられた教条主義に反発した中世の象徴愛好家の、透徹した哲学の信奉者たちに倣い、感覚と推察力を働かせなければならない精妙な事柄があるのである。」


「はしがき」より:

「不毛な議論を繰り返す言語偏重は、反動として言葉や文章、定義や議論ではなく、象徴による暗示的な魔術にのみ基づいた、沈黙の瞑想への回帰をもたらさずにはおかなかった。空しい論争に飽きた想像力豊かな思想家たちは、周囲と距離を置いて、夢想に耽ることとなる。その暗示的な影響力が、トルヴェール〔12、3世紀頃の北仏の吟遊詩人。南仏のトルバドゥール〕のような詩人たち、カテドラルの建築家のような芸術家たち、そして何よりも、控え目な〈絵師たち〉を生むのである。彼らの生み出した謎めいた構図は、神秘的な霊感を受けて描かれたように思われる。
 それらの中から一つの傑作が生き残った。それがタロットである。一見して素朴な表象は、秘められた叡智から発している。ヘルメス思想、カバラ、その他様々な伝承の洗練された形が、一連の22枚のアルカナの中に具象化したかのごとくである。」



第一章より:

「【狂人】は数字が付与されていないという事実によって、他のアルカナとは別物と考えることができる。よってタロットは二つのカテゴリーに分けられ、片方は一つのユニークなアルカナである【狂人】のみを含み、もう片方の21枚のアルカナと対抗していることになる。」

「【狂人】によって表象される究極の統一体(中略)。それは〈エンソフ〉の象徴であり、「無終」「無限」「知られざる者の中の知られざる者」「神秘中の神秘」である。万物がそこから発し、万物がそこに帰る、この「第一の夜」「空虚」「虚無」「深淵」は唯一の永遠かつ不変の存在を有しながら、なにものでもないように思われる。それは「非存在=存在」であり、不条理で矛盾したアスペクトによって理性を混乱させるが、逃れられぬ必然的なものとして理性に訴えかける。それを表す象形文字としては「閉じた眼」「黒い円盤」もしくは数字のゼロ「0」があてられる。我々の知に対しては、存在しないように見えて、「弁別されぬ統一体」「在るもの」となる。というのも、絶対的な統一性は、対照の法則に従う人間の知覚には働きかけることがない。よって「知覚する」は「区別する」の同義語である。しかし、我々が区別できるものは、識別しがたい統一体の中に混ぜ合わされたままのものに比して、ごくごく僅かである。」

「それは数字における〈ゼロ〉であり、タロットでは【狂人】の数となる。錬金術ではこれを〈アルン〉〔明礬(みょうばん)〕(他の〈塩〉、鉱物、金属にとっての基本的〈塩〉)の記号としている。この定義は、普遍物質の概念を思い起こさせる。それは知覚できないほど微細化して、万物の内的本質、すべての物質のエーテル的、非物質的原理を構成する。
 宇宙空間の無限の虚無の中に溶解しているこの物質は、どこにあっても変わることなく、カルデア人の天地創造の詩では万物の父たる底なしの深遠アプスーの妻ティアマトとして人格化されている。ギリシア人はこれを尾を噛む蛇〈ウロボロス〉の表徴として示したが、その銘は「〈一〉にして〈全〉」である。それはすべてがそこから発し、そこに戻って再びそこから発する〈混沌〉であり、〈全〉なる〈虚無〉、『創世記』の〈光あれ〉以前の〈闇〉である。」



第二部より:

「XXI 【世界】」
「〈世界〉は渦動であり、何ものも停止することのない、永遠の舞踏である。運動が万物を生成しているので、すべては途切れなく回転している。最先端の化学によっても否定されないこの概念は、まんじ(引用者注:「まんじ」に傍点)模様に捧げられた尊崇から判断するに、先史時代に遡る。」
「この表徴は、今日では汎ゲルマン主義者たちに占有されているが、遥か古代の遺跡や遺物の至る所に見られる。それは天空の運動に関係しており、この運動は大昔の先祖たちによれば、森羅万象に伝えられて生命と動きを与えていると考えられた。この運動から生命が発し、それは原初、神的なものと見なされた。
 籠の中で輪を回すリスのように、緑葉の輪の中で走る生命の女神を描くとき、タロットは何万年も前のこうした概念から着想を得ていることになる。」

「XXII 【狂人】」
「【狂人】は知性で把握できる領域の彼方にあるものすべて、つまりは有限の外にある無限、相対性を包み込む絶対性を表現している。それは底無しの淵、アプスーであり、神々が己の国を作ろうと決めたとき、世界の外に追いやった自分たちの始祖である。なぜなら、アプスーは己の住む無限の世界に満足し、ゆったりと陶酔していたので、そこから出ることを拒んだからである。もしも、分別化される以前の原初の物質と結合して、我知らず最初の双神の父とならなければ、何であれ創造することはなかったであろう。こうして生まれた双神は手を取り合い、輪になって踊り始めた。すなわち、エーテルの仲をぐるぐると回り、万物の生成運動を定めたのである。(中略)彼らの雲のような形体は、蛇のような形、恐らくは尾を噛む蛇ウロボロスに特に関係していて、【狂人】の帯によってまず間違いなくほのめかされている。一方で帯が作る円は、より単純には錬金術師たちのアルン〔明礬〕と関係し、その記号はまさしく円形のゼロ 〇 である。しかるに、アルンは他の〈塩〉の原理となる〈塩〉であり、言い換えればすべての物質化の非物質的基盤である。それはすべての源となる原初の空虚を満たす、いわゆる無であり、【狂人】に喩えられた受動的原質である。」
 
「地上のすべての王国を眺められる頂上に到達したとき、眼差しは想像可能なものの彼方に沈み、〈無限〉の目眩(めまい)に屈する。底無しの淵〈エンソフ〉に呑み込まれ、生きとし生けるものと万物を産み出す〈大いなる闇〉の母胎へと立ち返る。ここで理性は言うに言われぬものの前で沈黙する。決定的に無言である神秘中の神秘。己の虚無を意識せよ。敬虔なるへりくだりなくして、原初の〈全〉の中への再統合はない。」

「XXII. (【狂人】とその領域、不可知、人間の理解を超えたもの)。変わることのない固定性をもった最高の純金は、結局何によって構成されているのか。万物の根源にある実体、他の〈塩〉の原理たる〈塩〉は、空虚な円 〇 をシンボルとし、「アルン」と呼ばれる。すべては〈無〉から作られ、〈無〉に帰る。しかし〈全=無〉は〈大いなる神秘〉、奥義中の奥義であり、その前で理性は無力であることを告白する。【狂人】は知恵を鼻にかける傲慢な者を屈従させる。」




ヴィルト 中世絵師たちのタロット 03



ヴィルトによるタロットサークル。「狂人(愚者・道化)」は「世界」(至福千年)と「奇術師」(世界創造)の間に入っていますが、これはホドロフスキーのタロットマンダラのように「世界」と「愚者」を他のカードとは別扱いにして円の中心に置くのがよいです。しかしホドロフスキーのように両者を十字に重ねるのではなく、背中合わせに重ねて、そのまわりを20枚の大アルカナが取り囲む、すなわち、表からみると世界=この世の全体像ですが、裏からみるとマーヤー(幻影)としての現実世界が消えて中心に「狂人(愚者)」(この世の価値観では狂人・愚者ですがあの世の価値観では覚醒者・智者)がいる、という構図にするのがよいのではなかろうか。



ヴィルト 中世絵師たちのタロット 04



本書本文挿絵の「太陽」には双子のあいだに竪琴が描かれています。



ヴィルト 中世絵師たちのタロット 05



ヴィルトによるタロット(1889年版)。





こちらもご参照ください:

ルドルフ・ベルヌーリ/種村季弘 訳論 『錬金術とタロット』 (河出文庫)
『Oswald Wirth Tarot』 (U.S. Games)
Alejandro Jodorowsky and Marianne Costa 『The Way of Tarot』 Translated by Jon E. Graham
エリファス・レヴィ 『高等魔術の教理と祭儀 教理篇』 生田耕作 訳












































































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