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『玉葉和歌集』 次田香澄 校訂 (岩波文庫)

「生きて世に憂きを見はてん爲なれや厭ふ命のせめて久しき」
(『玉葉和歌集』 より)


『玉葉和歌集』 
次田香澄 校訂
 
岩波文庫 黄/30-137-1 


岩波書店 
1944年7月30日 第1刷発行
1989年3月17日 第2刷発行
537p 
文庫判 並装
定価700円



本書「解説」より:

「本文庫には、流布本として信を置かれてゐる正保四年吉田四郎右衞門刊の版本によつて收めることとした。」


本書「凡例」より:

「一、本文は底本のまゝを飜刻し、底本の傍註の校異もそのまゝに存した。尤も明かに誤と認められるものは訂正した。
一、用字法は底本によらず、讀み易いやうに漢字假名を適宜交へ用ひ、濁點を附した。」
「一、檢索に便ならしめるため、卷末に初句索引を附した。」



旧字旧かな。
うつ状態でねていたらいつしか年も明けぬればむかし買っておいた岩波文庫の黄帯なりともよまんとぞおもう。



玉葉和歌集 01



帯文:

「藤原為兼の撰にかかる14番目の勅撰和歌集で総歌数2801.中世和歌史上、新古今時代と並んで注目すべき時代を代表する貴重な歌集。」


目次:

解説
凡例

卷第一 春歌上
卷第二 春歌下
卷第三 夏歌
卷第四 秋歌上
卷第五 秋歌下
卷第六 冬歌
卷第七 賀歌
卷第八 旅歌
卷第九 戀歌一
卷第十 戀歌二
卷第十一 戀歌三
卷第十二 戀歌四
卷第十三 戀歌五
卷第十四 雜歌一
卷第十五 雜歌二
卷第十六 雜歌三
卷第十七 雜歌四
卷第十八 雜歌五
卷第十九 釋教歌
卷第二十 神祇歌

初句索引




玉葉和歌集 02



◆本書より◆


「解説」より:

「中世劈頭を飾る歌壇の老宿俊成及び定家父子が世を去つた後、定家の子の爲家は守成によつてともかくも歌界を率ゐて行つたが、その子の爲氏爲教爲相がそれぞれ二條京極冷泉の三家に分れて對立するに至つて、歌界は分裂し沈滯してしまつた。然るに京極家の祖である爲教の子に、俊成定家以來の俊秀といはれる爲兼が現れて、清新にして生氣のある歌風を唱へて歌界の刷新をはかることに腐心し、その周圍には彼の指導の下に優秀な歌人を輩出して、和歌史上に玉葉風雅時代と稱すべき一時期を劃するに至つた。この時代は中世和歌史に於て新古今時代と並んで注目すべきのみでなく、わが和歌全史を通じても極めて意義の深い時代である。それにも拘らずこの時代の和歌に關しては、古くから新古今風の亞流と見做して顧みられて來なかつたのであるが、最近に至つて漸くこれを高く評価するやうになつた。この意味に於て、爲兼の撰上した玉葉集は後に光嚴院が親撰あそばされた風雅集と共に、この時代を記念すべき貴重な勅撰集である。」
「玉葉集は第十四番目の勅撰集で二十卷から成り、その歌數は二十一代集のうちで最も多くて二千八百一首である。(中略)玉葉集では當代よりも古代が比較的に重んぜられてゐて、作者の數に於ても歌の數に於ても半ば以上を古代が占め、古代の中でも萬葉時代と新古今時代とを重く視てゐる。當代では京極派が主體を形成してゐることは言ふまでもないが、京極派と對立的な立場にある二條派に對しても、相當公平な態度を示してゐる。父の爲教の歌の數が二條家のの爲世より少いといふ一事によつて見ても、その穩健の程がわかるであらう。作者を個別的に見ると、伏見天皇の九十三首を始め奉り、定家の六十九首、西園寺實兼の六十二首、從二位爲子の六十首、俊成の五十九首、西行の五十七首、爲家の五十一首、永福門院の四十九首、爲兼の三十六首といふ順序である。永福門院は伏見天皇の中宮であらせられ、爲子は爲兼の妹であつて、伏見天皇と共に京極派の優秀な歌人である。京極派の作者に就いて注意を惹くことは、皇室歌人及び閨秀歌人が多くかつ傑出してゐることであつて、この點から見ると新古今時代と似通つたところがある。
 玉葉集には古代から當代に至るまでの各時代の歌が採られてはゐるが、それ等はつとめて京極派の歌調に近いものを選んであるから、總體的に見れば京極派の特色が遺憾なく發揮せられてゐることが確認せられるのである。」
「この集は古來の歌の題材と比べて別に新奇なものは現れてゐない。(中略)玉葉歌人が好んで觀照の對象としたのは、雲霧雨雪風などの動的な天然現象と結びついた自然、月夜とか夕暮曉とかの薄明の世界、幽寂或は清明といふべき境地である。」



「春歌上」より:

   「正治二年後鳥羽院に百首の歌奉りける時、春の歌  後京極攝政前太政大臣
梅の花うすくれなゐに咲きしより霞色づく春の山陰」

   「春雨をよませ給うける  院御製
山の端も消えていくへの夕霞かすめるはては雨になりぬる」



「春歌下」より:

   「雨中落花  前關白太政大臣
降りくらす雨しづかなる庭の面に散りてかたよる花の白波」



「夏歌」より:

   「爲兼の家にて月次の歌よみ侍りし時、夜卯花を  前中納言經親
月影のもるかと見えて夏木立しげれる庭にさける卯の花」

   「題しらず  藤原景綱
五月まつ花のかをりに袖しめて雲はれぬ日の夕暮の雨」

   「藤原信實朝臣
庭のうへの水音近きうたたねに枕すずしき月を見るかな」



「秋歌上」より:

   「殘暑の心を  前大僧正慈鎭
秋あさき日影に夏は殘れども暮るるまがきは萩のうは風」

   「五十番歌合に秋露をよませ給うける  院御製
我も悲し草木も心いたむらし秋風ふれて露くだる頃」

   「弘長の百首の歌に、七夕を  前大納言爲家
久方の雲居はるかに待ちわびし天津星合の秋も來にけり」

   「天德三年九月庚申の歌合に荻をよみ侍りける  藤原元眞
荻の葉に風のすずしき秋きては暮にあやしきものをこそ思へ」

   「秋の歌の中に  入道前太政大臣
夕づく日さびしき影は入りはてて風のみ殘る庭の荻原」

   「永福門院
しをりつる風は籬にしづまりて小萩がうへに雨そそぐなり」



「冬歌」より:

   「冬の御歌の中に  土御門院御製
村雲の絶えま絶えまに星みえて時雨をはらふ庭の松かぜ」

   「前中納言定資
散り積るよもの木の葉にうづもれて秋見しみちは面影もなし」

   「前右近大將家教
聞きなれし木ずゑの風は吹きかへて庭に木の葉の音さわぐなり」

   「冬の御歌の中に  朔平門院
草はみな霜に朽ちにし冬枯にひとり秋なる庭のしら菊」

   「冬の御歌の中に  永福門院
月影は森のこずゑにかたぶきてうす雪しろし有明の庭」

   「里に侍りけるが、しはすのつごもりに内に參りて、御物忌なりければ局にうち臥したるに、人の忙しげに行きかふ音を聞きて思ひつづけける  紫式部
年くれて我が世ふけゆく風の音に心のうちのすさまじきかな」



「旅歌」より:

   「右大臣
旅人の行くかたがたに踏み分けて道あまたある武藏野の原」

   「野夕雨といふ事を  從三位爲子
雨の脚も横さまになる夕風にみの吹かせゆく野べの旅人」



「戀歌三」より:

   「戀の十首の御歌の中に  院御製
人は知らじ心の底のあはれのみ慰めがたくなりまさる頃」



「戀歌五」より:

   「太宰大貳俊兼
生きて世に憂きを見はてん爲なれや厭ふ命のせめて久しき」



「雜歌一」より:

   「和泉式部
つれづれと物思ひをれば春の日の目にたつものは霞なりけり」

   「春の歌の中に  參議親隆
朽ちにける身の埋木は春くれど花をばよそのものとこそ見れ」



「雜歌二」より:

   「闇なる夜星の光ことにあざやかにて、晴れたる空ははなの色なるが、今宵見そめたる心地していとおもしろく覺えければ  建禮門院右京大夫
月をこそながめなれしか星の夜の深きあはれを今宵知りぬる」

   「夜路といふ事を  院御製
ふけぬるか過ぎ行く宿もしづまりて月の夜道にあふ人もなし」

   「院新宰相
消ゆるかと見えつる夜半のともし火のまた寢覺めても同じ影かな」

   「題を探りて人人に歌よませさせ給ひけるに、雨中燈といふ事を  院御製
雨の音のきこゆる窓は小夜ふけて濡れぬにしめる燈火のかげ」

   「從三位爲子
降りしめる雨夜のねやは靜かにてほのほ短き燈火の末」

   「山中雨といへる事を  永福門院
山風の吹き渡るかと聞くほどに檜原に雨のかかるなりけり」

   「同院内侍
雫まではまだ落ちそめぬ山陰の檜原がうへに雨ぞ聞ゆる」

   「題しらず  後鳥羽院宮内卿
晴れゆくかただよふ雲の絶間より星みえそむる村雨の空」



「雜歌三」より:

   「嘉元の百首の歌奉りけるに、松  前關白太政大臣
言問はん古木の松よなれのみや我がしのぶ世の昔をも見し」

   「庵のまへに松の立てりけるを見てよみ侍りける  西行法師
谷の戸にひとりぞ松も立てりける我のみ友はなきかと思へば」

   「行圓上人
山里の心しづかに住みよきはとふ人もなし待つこともなし」

   「從三位爲子
松にあらし淺茅が露に月の影それより外にとふ人はなし」



「雜歌四」より:

   「はらからなる人の身まかりて送りをさめける夜、雲のむらむらたなびけるを見て  永福門院内侍
鳥部山煙の末やこれならんむらむらすごき空のうき雲」

   「語らひ侍りける女みまかりて後、かの住みける所を見て  中納言兼輔
立ちよらん方も知られず空蟬のむなしき床の波のさわぎに」



「雜歌五」より:

   「入道前太政大臣
寢るがうちは今や昔にかへるらん昔や今の夢に見えつる」

   「懷舊の心を  院御製
情ある昔の人はあはれにて見ぬ我が友と思はるるかな

惜しむべく悲しぶべきは世の中に過ぎてまたこぬ月日なりけり」







こちらもご参照ください:

『後撰和歌集』 松田武夫 校訂 (岩波文庫)












































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