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『日本霊異記』 遠藤嘉基・春日和男 校注 (日本古典文学大系)

「肥後の國 八代(やつしろ)の郡 豐服(とよぶく)の郷(さと)の人、豐服廣公(とよぶくのひろぎみ)の妻 懷妊して、(中略)一つの肉團(ししむら)を産み生(な)す。その姿(かたち)卵(かひこ)の如し。夫妻 祥(ヨキシルシ)に非(あら)ずと謂(おも)ひ爲して、笥(ヲケ)に入れて山の石の中に藏(をさ)め置き、七日を逕(へ)て往きて見れば、肉團の殻(カヒコ)開きて、女子(をみな)を生めり。」
(『日本靈異記』 「下卷 産み生(な)せる肉團(シシムラ)の作(な)れる女子、善を修し人を化(け)する縁 第十九」 より)


『日本靈異記』 
遠藤嘉基・春日和男 校注 
日本古典文学大系 70


岩波書店
昭和42年3月20日 第1刷発行
507p 口絵1葉
菊判 丸背バクラム装上製本 貼函
定価1,000円

月報 第二期 第33回配本 (12p):
『霊異記』像の動揺(益田勝実)/日本霊異記から今昔物語へ(河音能平)/霊異記の獣(曾田文雄)/茶番(中村幸彦)/書紀上巻の刊行を待つ(小島憲之)/編集室より/別巻『索引』(二期全三十四巻)について



本書「凡例」より:

「底本は、上巻は興福寺本、中巻と下巻は真福寺本を用い、なるべく原本に忠実に翻刻した。」
「訓読文は、底本に基づき、訓釈を手がかりとして、できるだけ当時の訓読語を中心に、漢字交り文で作製した(中略)。」
「頭注は、国語学・歴史学・仏教学の立場から見て必要と思われるものに、原則として施した。」




日本霊異記



帯文:

「古代の民衆の哀歓を生々と語る
百十余の多彩な説話群!
古代日本の民衆生活の中の、世にも不思議な話百十余話を集め、善悪に対する因果の関係を極めて現実的に示した説話文学の先駆「日本霊異記」は、奈良朝・平安初期の庶民の宗教意識と習俗を知る上に欠くことのできない作品である。周到な説話構成と巧妙な中国の仏教説話の翻案の中に、大きく変動する社会に生きる人間の機微が、なまなまと描かれている。本書の底本は現存最古の善本である興福寺本・真福寺本により、最良の本文を提供する。訓読・注解には多大の苦心が払われ、関連諸学問からの協力を得て精密を期した。」



目次:

解説
凡例

上巻
 雷(いかづち)を捉(とら)ふる縁 第一
 狐を妻として子を生ま令(し)むる縁 第二
 雷の熹(むがしび)を得て生ま令(し)めし子の強き力在(あ)る縁 第三
 聖德皇太子、異(めづら)しき表(しるし)を示す縁 第五
 三寶を信敬(しんぎやう)し、現報を得る縁 第五
 觀音菩薩を憑(よ)り念じ、現報を得る縁 第六
 龜の命を贖(あか)ひて放生し、現報を得て、龜に助けらるる縁 第七
 聾(みみし)ひたる者、方廣經典に歸敬(ききやう)し、現報を得て、兩(ふた)つの耳を開く縁 第八
 嬰児(みどりこ)、鷲に擒(とら)はれ、他國にて父に逢ふこと得し縁 第九
 子の物を偸(ぬす)み用ゐ、牛と作(な)りて役(つか)はれ、異(めづら)しき表(しるし)を示す縁 第十
 幼き時より網を用ゐて魚を捕(と)りて、現に惡報を得る縁 第十一
 人畜(ひとけもの)に履(ふ)まるる髑髏(ひとかしら)救ひ收められ、靈(めづら)しき表(しるし)を示して現に報ずる縁 第十二
 女人、風聲(みさを)の行(わざ)を好み、仙草を食ひて、現身に天に飛ぶ縁 第十三
 僧、心經を憶持(おくぢ)し、現報を得て、奇事を示す縁 第十四
 惡人、乞食(こちじき)の僧を逼(おびえか)して、現に惡報を得る縁 第十五
 慈(うつくしび)の心无(な)く、生ける兎の皮を剝(はつ)りて、現に惡報を得る縁 第十六
 兵災に遭ひて、觀音菩薩の像を信敬し、現報を得る縁 第十七
 法花經(ほけきやう)を憶持し、現報を得て奇(めづら)しき表(しるし)を示す縁 第十八
 法花經品(ほけきやうぼん)を讀む人を呰(あざけ)りて、現に口喎斜(ゆが)みて、惡報を得る縁 第十九
 僧、湯を涌かす分の薪(たきぎ)を用(も)ちて他に與へ、牛と作(な)りて役(つか)はれ、奇(めづら)しき表(しるし)を示す縁 第二十
 慈(うつくしび)の心无くして、馬に重き駄(に)を負(お)ほせて、現に惡報を得る縁 第二十一
 勤(つと)めて佛教を求學し、法を弘め物を利し、命終はる時に臨みて異(めづら)しき表(しるし)を示す縁 第二十二
 凶(あ)しき人、嬭房(ちぶさ)の母に孝養(けうやう)せ不(ず)して、現に惡死の報を得る縁 第二十三
 凶(あ)しき女、生める母に孝養せ不(ず)して、現に惡死の報を得る縁 第二十四
 忠臣、欲少なく、足るを知りて諸天に感ぜられ、報を得て、奇事を示す縁 第二十五
 持戒の比丘、浄行を修(しゆ)して、現に奇しき驗力を得る縁 第二十六
 邪見なる假名(けみやう)の沙彌、塔の木を斫(さ)きて、惡報を得る縁 第二十七
 孔雀王(くじやくわう)の咒法(じゆほふ)を修持(しゆぢ)し、異(け)しき驗力を得て、現に仙と作(な)りて天に飛ぶ縁 第二十八
 邪見にして、乞食の沙彌の鉢を打ち破りて、現に惡死の報を得る縁 第二十九
 非理に他の物を奪ひ、惡行を爲し、惡報を受けて、奇事を示す縁 第三十
 慇(ねもころ)に懃(つと)めて觀音に歸信し、福分を願ひて、現に大福德を得る縁 第三十一
 三寶に歸信し、衆僧を欽仰(きんがう)し、誦經せ令(し)めて、現報を得る縁 第三十二
 妻、死(し)にし夫の爲に願を建て、像を圖繪(づゑ)し、験有(あ)りて火に燒け不(ず)、異(めづら)しき表(しるし)を示す縁 第三十三
 絹(かとり)の衣を盗ま令(し)めて、妙現菩薩に歸願し、其(そ)の絹の衣を修得する縁 第三十四
 □知識、四恩の爲に繪の佛像を作り、驗有りて、奇(めづら)しき表(しるし)を示す縁 第三十五

中巻
 己(おの)が高德を恃(たの)み、賤形(せんぎやう)の沙彌(さみ)を刑(う)ちて、現に惡死を得る縁 第一
 烏の邪婬を見て、世を厭ひ、善を修する縁 第二
 惡逆の子、妻を愛し、母を殺さ將(む)と謀り、現に惡死を被(かがふ)る縁 第三
 力女(りきによ)、捔力(ちからくらべ)し試みる縁 第四
 漢神(からかみ)の祟(たたり)に依り牛七頭を殺し、又放生(はうじやう)の善を修して、現に善惡の報を得る縁 第五
 誠の心を至して法花經を寫し奉り、驗(しるし)有(あ)りて異事を示す縁 第六
 智者、變化(へんげ)の聖人(しやうにん)を誹(そし)り妬(うらや)みて、現に閻羅(えんら)の闕(みかど)に至り、地獄の苦を受くる縁 第七
 蟹(かに)蝦(かへる)の命を贖(あか)ひて放生(はうじちゃう)し、現報を得る縁 第八
 己(おのれ)、寺を作り、其(そ)の寺の物を用ゐて、牛と作(な)りて役(つか)はるる縁 第九
 常に鳥の卵を煮て食ひて、惡死の報を得る縁 第十
 僧を罵(の)ることと邪婬とにより、惡病を得て死ぬる縁 第十一
 蟹蝦の命を贖(あか)ひて放生し、現報に蟹に助けらるる縁 第十二
 愛欲を生じ吉祥天女(きちじやうてんによ)の像に戀ひ、感應して奇しき表を示す縁 第十三
 窮(まづ)しき女王(によわう)、吉祥天女の像に歸敬(ききやう)し、現報を得る縁 第十四 
 法花經を寫し奉り、供養することに因りて、母の牛(うし)と作(な)る因(もと)を顯す縁 第十五
 布施(ふせ)せ不(ざ)ると放生するとに依りて、現に善惡の報を得る縁 第十六
 觀音の銅像、鷺の形に反化(へんげ)して、奇しき表を示す縁 第十七
 法花經を誦持する僧を呰りて、現に口喎斜みて、惡死の報を得る縁 第十八
 心經を憶持する女、現に閻羅王の闕に至り、奇しき表を示す縁 第十九
 惡夢に依り、誠の心を至して經を誦せ使(し)め、奇しき表を示して、現に命を全くすること得る縁 第二十
 〓(漢字: 土+聶)の神王の〓(漢字: 足+尃)より光を放ち、奇しき表を示し、現報を得る縁 第二十一
 佛の銅像、盗人に捕られて、靈しき表を示し、盗人を顯す縁 第二十二
 彌勒菩薩の銅像、盗人に捕られて、靈しき表を示し、盗人を顯す縁 第二十三
 閻羅王の使の鬼、召さるる人の賂を得て免す縁 第二十四
 閻羅王の使の鬼、召さるる人の饗を受けて、恩を報ずる縁 第二十五
 未(いま)だ作り畢はらずして棄てらるる佛像の木、異靈を示す縁 第二十六
 力女(りきによ)、強力を示す縁 第二十七
 極めて窮しき女、釋迦の丈六の佛に福分を願ひ、奇しき表を示して、現に大福を得る縁 第二十八
 行基大德、天眼を放ち、女人の頭に猪の油を塗れるを視て、呵嘖する縁 第二十九
 行基大德、女人の携へたる子に過去の怨を視て、淵に投げ令(し)め、異しき表を示す縁 第三十
 塔を建て將(む)として願を發し、時に生める女子、舎利を捲りて産まるる縁 第三十一
 寺の息利の酒を貸り用ゐて、償は不(ず)して死にて、牛と作(な)りて役はれ、債を償ふ縁 第三十二
 女人、惡鬼に點れて食噉はるる縁 第三十三
 孤の嬢女、觀音の銅像に憑り敬ひ、奇しき表を示して、現報を得る縁 第三十四
 法師を打ちて、現に惡しき病を得て死ぬる縁 第三十五
 觀音の像、神力を示す縁 第三十六
 觀音の木像、火難に燒け不(ず)、威神の力を示す縁 第三十七
 慳貪に因りて、大蛇と成る縁 第三十八
 藥師佛の木像、水に流れ砂に埋もれて、靈しき表を示す縁 第三十九
 惡事を好む者、以て現に利鋭に誅られ、惡死の報を得る縁 第四十
 女人、大蛇に婚はれ、藥の力に賴りて、命を全くすること得る縁 第四十一
 極めて窮し女、千手觀音の像に憑り敬ひ、福分を願ひて、現に大福を得る縁 第四十二

下巻
 法華經を憶持する者の舌、曝(さ)りたる髑髏(ひとかしら)の中に著きて朽ち不(ざ)る縁 第一
 生物(いきもの)の命を殺して怨(あた)を結び、狐、狗と作(な)りて互に怨を相報ずる縁 第二
 沙門、十一面觀音の像に憑(よ)り願ひて、現報を得る縁 第三
 沙門、方廣大乘を誦持(ずぢ)し、海に沈みて溺れ不(ざ)る縁 第四
 妙見菩薩(めうけんぼさち)、變化(へんげ)して異形(いぎやう)を示し、盗人を顯(あらは)す縁 第五
 禪師(ぜんじ)の食は將(む)とする魚、化(け)して法華經と作(な)りて、俗の誹(そしり)を覆(かへ)す縁 第六
 觀音の木像の助(たすけ)を被(かがふ)りて、王難を脱(まぬか)るる縁 第七
 彌勒菩薩(みろくぼさち)、所願に應じて奇形(きぎやう)を示す縁 第八
 閻羅王、奇(めづら)しき表(しるし)を示し、人に勸(すす)めて善を修せ令(し)むる縁 第九
 如法(によほふ)に寫し奉る法花經、火に燒け不(ぬ)縁 第十
 二つの目盲(し)ひたる女人(によにん)、藥師佛の木像に歸敬(きぎやう)して、現に眼を明くことを得る縁 第十一
 二つの目盲(し)ひたる男、千手觀音の日摩尼手(にちまにしゆ)を敬(つつし)み稱(とな)へて、現に眼を明くこと得る縁 第十二
 法花經を寫さ將(む)として願を建てし人、願力に依りて、命を全くすること得る縁 第十三
 千手の咒(じゆ)を憶持(おくぢ)する者を拍(う)ちて、現に惡死の報を得る縁 第十四
 沙彌(さみ)の乞食(こちじき)を撃ちて、現に惡死の報を得る縁 第十五
 女人(によにん)、濫(みだりがは)しく嫁(とつ)ぎて、子を乳(ち)に飢ゑしむるが故に、現報を得る縁 第十六
 未(いま)だ作り畢(を)はらぬ捻〓(漢字: 土+聶)(ねんせふ)の像、呻(によ)ぶ音(こゑ)を生じて、奇(めづら)しき表(しるし)を示す縁 第十七
 法華經を寫し奉る經師(きやうじ)、邪婬を爲して、現に惡死の報を得る縁 第十八
 産み生(な)せる肉團(ししむら)の作(な)れる女子、善を修し人を化(け)する縁 第十九
 法花經を寫し奉る女人(によにん)の過失(あやまち)を誹(そし)りて、現に口喎斜(ゆが)む報の縁 第二十
 沙門、一つの目眼盲(めし)ひ、金剛般若經を讀ま使(し)めて眼を明くこと得る縁 第二十一
 重き斤(はかり)に人の物を取り、又法花經を寫して、現に善惡の報を得る縁 第二十二
 寺の物を用ゐ、復(また)大般若を寫さ將(む)とし、願を建てて、現に善惡の報を得る縁 第二十三
 修行の人を妨(さまた)ぐるに依りて、猴(さる)の身を得る縁 第二十四
 大海に漂流して、尺迦佛の名(みな)を敬み稱(とな)へ、命を全くすること得る縁 第二十五
 非理を強ひて債(もののかひ)を徴(はた)り、多(あまた)の倍(まし)を取りて、現に惡死の報を得る縁 第二十六
 髑髏(ひとかしら)の目の穴の笋(たかんな)を揭(ぬ)き脱(はな)ちて、祈(ねが)ひて靈(めづら)しき表(しるし)を示す縁 第二十七
 彌勒(みろく)の丈六、其(そ)の頸を蟻に嚼(か)まれて、奇異(めづら)しき表を示す縁 第二十八
 村童(さとわらはべ)、戲に木の佛像を刻み、愚(おろか)なる夫(をとこ)破り斫(さ)きて、現に惡死の報を得る縁 第二十九
 沙門、功を積みて佛像を作り、命終はる時に臨みて、異(めづら)しき表(しるし)を示す縁 第三十
 女人(によにん)、石を産みて神とし齋(いつ)く縁 第三十一
 網を用ゐて漁夫(いをとるをのこ)、海中の難に値(あ)ひて、妙見(めうけん)に憑(よ)り願ひ、命を全くすること得る縁 第三十二
 賤(いや)しき沙彌(さみ)の乞食(こちじき)を刑罰して、現に頓(にはか)に惡死の報を得る縁 第三十三
 怨病(をんびやう)身に嬰(かか)り、因りて戒を受け、善を行ひて、現に病を愈(いや)すこと得る縁 第三十四
 官(つかさ)の勢を假(か)りて、非理に政を爲し、惡報を得る縁 第三十五
 塔の階(こし)を減じ、寺の幢(はたほこ)を仆(たふ)して、惡報を得る縁 第三十六
 因果を顧み不(ず)惡を作(な)して、罪報を受くる縁 第三十七
 災(さい)と善(ぜん)との表相(へうさう)先(ま)づ現はれて、後に其(そ)の災と善との答(たふ)を被(かがふ)る縁 第三十八
 智行(ちぎやう)並び具する禪師、重ねて人の身を得て、國皇(こくわう)の子に生まるる縁 第三十九

補注




◆本書より◆


「上卷 雷(いかづち)を捉(とら)ふる縁 第一」より:

「小子部栖輕(ちひさこべのすがる)は、泊瀨(はつせ)の朝倉(あさくら)の宮に二十三年天の下治めたまひし雄略天皇(中略)の隨身、肺脯(シフ)(頭注より:「肺臓や肝臓のように、なくてはならない側近の者。」)の侍者なり。天皇、磐余(いはれ)の宮に住みたまひし時、天皇、后と大安殿(おほやすみどの)に寐(ネ)テ婚合(クナカヒ)(頭注より:「交合。」)したまへる時に、栖輕知ら不(ず)して參(ま)ゐ入(い)りき。天皇恥(は)ぢて輟(ヤ)ミヌ(頭注より:「行為をやめた。」)。時に當りて空に雷(いかづち)鳴る。即ち天皇、栖輕に勅して詔(のたま)はく「汝、鳴雷(なるかみ)を請(う)け奉(たてまつ)らむや(頭注より:「お前は、雷を呼んでこられるか。」)」とのたまふ。答へて曰(まを)さく「請けたてまつら將(む)」とまをす。天皇詔曰(のたま)はく「爾(しか)あらば汝請け奉れ」とのたまふ。栖輕勅(みことのり)を奉(うけたまは)り宮より罷り出で、(中略)馬に乘り、(中略)輕の諸越(もろこし)の衢(チマタ)に至り、叫囁(さけ)び請(う)けて言はく「天の鳴雷神(なるかみ)、天皇請け呼び奉る云々(しかじか)」といふ。然して此(ここ)より馬を還して走りて言はく「雷神(なるかみ)と雖(いへど)も、何の故にか天皇の請けを聞か不(ざ)らむ(頭注より:「雷だとて、どうして天皇の願いを聞き入れないでよかろう。」)といふ。走り罷る時に、豐浦寺と飯岡との間に鳴雷(なるかみ)落ちて在り。栖輕見て即ち神司(かみづかさ)を呼び、轝籠(コシこ)(頭注より:「竹で編んで担ってゆく乗り物。」)に入れて大宮に持ち向かひ、天皇に奏して言(まを)さく「雷神(なるかみ)を請(う)け奉れり」とまをす。時に雷(いかづち)光を放ち明(て)り炫(カカヤ)けり。天皇見て恐り、偉(タタハ)シク幣帛(ミテクラ)を進(たてまつ)り(頭注より:「(神様に)十分に供え物をささげて。」)、落ちし處に還さ令(し)めしかば、今に雷(いかづち)の岡と呼ぶ。(中略)然して後時(のち)に栖輕卒(う)せにき。天皇勅して留むること(頭注より:「いわゆる殯(もがり)をすること。」)、七日七夜、彼(そ)の忠信を詠(しの)ひ、雷の落ちし同じ處に彼(そ)の墓を作りたまひ、永く碑文の柱を立てて言はく「雷を取りし栖輕が墓」といふ。此の雷 惡(にく)み怨(うら)みて鳴り落ち、碑文の柱を踊(ク)ヱ踐(ふ)み(頭注より:「蹴ったり、踏んだり。」)、彼の柱の析(さ)けし間(頭注:「さけめ。」)に雷 揲(ハサマ)リテ捕(とら)へらる。天皇聞きて雷を放ちしに死な不(ず)。雷 慌(ホ)レテ(頭注より:「ぼんやりして。」)七日七夜留まりて在り。天皇の勅使、碑文の柱を樹(た)てて言はく「生きても死にても雷を捕へし栖輕が墓」といふ。所謂(いはゆる)古京の時に名づけて雷の岡と爲(い)ふ、語(こと)の本(もと)是れなり。」


「上卷 狐(きつね)を妻(め)として子を生ま令(し)むる縁 第二」より:

「昔 欽明(きむめい)天皇(中略)の御世(みよ)に三野(みの)の國大野の郡の人、妻(め)とす應(べ)き好き孃(ヲミナ)を覔(もと)めて(頭注より:「美しい娘を探して。」)路(みち)を乘りて行く(頭注より:「路を(馬に)乗ってゆく。」)。時に嚝野(ひろの)の中に姝(うるわ)しき女(をみな)遇へり。其(そ)の女 壯(をとこ)に媚(コ)び馴(ナツ)キ、壯 睇(メカリウ)ツ(頭注より:「目を細めたり、秋波を送ったりする。」)。言はく「何(いづく)に行く稚孃(をみな)ぞ」といふ。孃答ふらく「能き縁(えに)を覔め將(む)として行く女なり」といふ。壯も亦(また)語りて言はく「我(わ)が妻(め)と成らむや」といふ。女「聽(ゆる)さむ」と答へ言ひて、即ち家に將(ゐ)て交通(とつ)ぎ(頭注より:「結婚する。」)相住む。比頃(このころ)、懷任(はら)みて一(ひとり)の男子を生む。時に其(そ)の家の犬、十二月十五日に子を生む。彼(そ)の犬の子、毎(つね)に家室(イヘノトジ)(頭注より:「主婦。」)に向かひて、期尅(イノゴ)ひ(頭注より:「はげしく敵意を示す。」)睚(ニラ)み眥(ハニカ)ミ(頭注より:「歯をむきだす。」)嘷吠(ホ)ユ。家室 脅(オビ)エ惶(おそ)りて、家長(いへぎみ)に告げて言はく「此の犬を打ち殺せ」といふ。然れ雖(ども)患(うれ)へ告げて猶(なほ)殺さ不(ず)。二月三月の頃に、設(まう)けし年米を舂く時(頭注より:「かねて準備していた稲米(中略)を舂くとき。」)、其の家室、稻舂女等(いなつきめら)に間食を充て將(む)として碓(からうす)屋(頭注より:「踏み臼のある小屋。」)に入る。即ち彼の犬の子、家室を咋(く)は將(む)として追ひて吠ゆ。即ち驚き〈澡(オ)〉ヂ恐リ(頭注より:「こわがりおそれる。」)、野干(やかに)(頭注より:「きつね(狐)。」)と成りて籬(まがき)の上に登りて居り。家長見て言はく「汝と我との中に子を相生(う)めるが故に、吾は汝を忘れ不(じ)。毎(つね)に來りて相寐よ」といふ。故(かれ)、夫の語(こと)に隨(したが)ひて來り寐(ネ)キ。故、名づけて岐都禰(きつね)とす。時に彼の妻 紅(くれなゐ)の襴染(スソぞめ)の裳(も)(頭注より:「赤い裳すそ。」)(中略)を著て窈窕(サ)ビ(頭注より:「しなやかで美しく。」)、裳襴(もすそ)を引きて逝く。夫、去(い)にし容(かほ)を視、戀(こ)ひて歌に曰ふ。
  戀は皆我が上(へ)に落ちぬたまかぎるはろかに見えて去(い)にし子ゆゑに(頭注より:「恋は、すべてわが身にふりかかって来た。(自分は恋のとりこになってしまった。)ほんのちょっと見えて行ってしまった彼女のために。」)
故、其の相生ま令(し)めし子の名を岐都禰(きつね)と號(なづ)く。亦(また)其の子の姓(かばね)を狐の直(あたへ)と負ほす。其の人強き力多(あまた)有り、走ること疾(はや)くして鳥の飛ぶが如し。三野の國の狐の直等が根本(もと)是れなり。」



「上卷 嬰兒(ミドリコ)、鷲に擒(とら)はれ、他國にて父に逢ふこと得し縁 第九」より:

「癸卯の年(頭注:「皇極二年(六四三)。」)の春三月の頃、但馬(たぢま)の國七美(しづみ)の郡の山里の人の家に、嬰兒の女(むすめ)有り。中庭に匍匐(ハラバ)フを、鷲 擒(と)りて空に騰(アガ)リテ、東を指(サ)して翥(ハフ)リイヌ(頭注より:「羽ばたき飛ぶ。」)。父母 懇(アカラシ)ビテ(頭注より:「心から嘆いて。」)、惻(ネタ)ミ(頭注より:「苦痛を感じて。哀れみ。」)哭き悲しび、追ひ求むれども、到る所を知ら不(ざ)るが故に、爲に福を修す(頭注より:「子供の為に、仏事をいとなんで冥福を祈る。」)。八箇年(やとせ)を逕(へ)て、(中略)庚戌の年(頭注:「白雉元年(六五〇)。」の秋八月下旬に、鷲に子を擒(と)られし乳、縁(えに)の事有りて丹波(たには)の國加佐の郡の部内に至り、他(ひと)の家に宿る。其の家の童女(メノワラハ)、水を汲(ク)みに井(ゐ)に趣く。宿れる人、足を洗はむとして副ひ往きて見るに、亦村の童女、井(ゐ)に集りて水を汲まむとして、宿れる家の童女の井(ツルベ)ヲ奪(ウバ)フ。惜(をし)みて奪は令(し)め不(ず)。其の村の童女等、皆心を同じくして、凌(シノ)ギ蔑(アナツ)リテ(頭注より:「(一緒になって)、しいたげ侮どって。」)曰はく「汝、鷲の噉(くら)ひ殘し、何の故にか禮(ゐや)无き(頭注より:「どうして、無遠慮なのか。」)」といひて、罵(ノ)リ、壓(オソ)ヒて(頭注より:「罵って、押えつける。」)打つ。拍(ウ)タレテ哭き歸りぬ。家主(いへぎみ)待ち問ひて「汝、何の故にか哭く」といへば、宿れる人、見たるが如く具(つぶさ)に上の事を陳べ、即ち彼(そ)の拍(う)ち罵りて鷲の噉ひ殘しと曰ひし所以(ゆゑ)を問ふ。家主答へて言はく「其れの年其れの月日の時、余(われ)、鳩を捕(と)る樹に登りて居るに、鷲、嬰兒(みどりこ)を擒(と)り、西の方より來り、巣(ス)ニ落して鶵(ヒナノコ)ニ養(か)ふ(頭注より:「雛に(嬰児を)餌として与える。」)。嬰兒 慄(おそ)り啼く。彼の鶵 望(み)て、驚き恐りて啄(ツキハ)マ不(ズ)。余(われ)、啼く音(こゑ)を聞き、巣より取り下し育てし女子、是れなり」といふ。擒られし年月日の時は、挍(かむが)ふるに今の語(こと)に當りたれば、明(あきら)かに我が兒なることを知りぬ。」


「上卷 法花經(ほけきやう)を憶持し、現報を得て奇(めづら)しき表(しるし)を示す縁 第十八」より:

「昔大和の國葛木(かづらき)の上(かみ)の郡に、一(ひとり)の持經の人(頭注:「経文(特に法華経)を常に読誦して、修行する人。」)有(あ)り。(中略)其(そ)れ生(ウマレナガラ)知(し)り(頭注より:「生まれながら利巧であって。」)、年八歳以前に法花經を誦持するに、意(こころ)に唯一字のみ存(とど)むること得不(ず)(頭注より:「一字だけ記憶することができない。」)。二十有餘歳に至りて猶(なほ)持すること得難く、觀音に因りて悔過(けくわ)す(頭注より:「仏前に懺悔して、罪報を免れることを求める。」)。時に夢に見る。人有(あ)りて曰はく「汝、昔(むかし)先の身に(頭注より:「以前、前世の身で。」)、生まれて伊豫の國別(わけ)の郡日下部(くさかべ)の猴(サル)(頭注より:「日下部が氏。猴が名。」)の子に在りし時、汝、法花經を誦し奉りて、燈(ひ)に一つの文(もじ)を燒き、誦すること得不(ざ)りき。今往きて見よ」といふ。夢より醒(サ)め驚きて、思ひ怪しび、其(そ)の親に白して曰はく「忽(たちまち)に縁の事有りて(頭注より:「急に用事ができて。」)伊豫に往かむと欲(おも)ふ」といふ。二親聽許(ゆる)す。然して諮(と)ひ往きて(頭注:「たずねてゆく。」)、當(まさ)に猴(さる)の家に到り、門を叩きて人を喚ぶ。乃ち女人(頭注:「下女であろう。」)出で咲(ゑみ)を含(ふふ)みて還り入り、家母(いへのとじ)(頭注より:「家の主婦。」)に白して曰はく「門に客人(まれびと)在(あ)り、恰(あたかた)も死にし郎(おのこ)に似たり(頭注より:「ちょうど、死んだ家の息子さんにそっくり。」)」といふ。聞きて出で見るに、猶(なほ)し死にし子に疑(に)たるがごとし。家長(いへぎみ)(頭注より:「主人。猴のこと。」)も見て亦(また)怪しび問ひて「仁者(にんざ)は何人ぞ(頭注より:「あなたは誰だね。」)」といふに、國郡の名を答へ陳ぶ。客人も亦(また)問ふ。答へて具(つぶさ)に彼(そ)の姓名を告げ知らしき。明(あきら)かに知る、是(こ)れ我が先の父母なることを。即(すなは)ち長跪(ヒザマヅ)キテ(頭注より:「かしこまって、両膝を地につける。」)拜す。猴、愛(め)でて(頭注:「いとおしんで。」)喚び入れ、床(とこ)に居(す)ゑて(頭注:「客座にすわらせて。」)瞻(まば)りて(頭注より:「見つめて。」)言はく「若(も)し死にし昔の我が子の靈か(頭注:「ひょっとして、死んだ我が子の霊魂ではないか。」)といふ。客人具に夢の状を述べ、翁姥(オホヂオホバ)(頭注より:「老夫婦(猴夫妻のこと)。」)を吾が先の父母と謂ふ。猴も亦(また)因(ゆゑ)(頭注:「ことのおこり。」)を語りて、示して曰はく「我が先の子、號(な)は某(それ)(頭注:「名前は何がし。」)、其(そ)の子の住みし堂、讀みし經及以持(とぢ)せし水瓶(すゐびやう)等は是れなり」といふ。先の子聞きて堂の内に入り、彼(そ)の法花經を取りて開き見るに、誦せられ不(ぬ)文(もじ)に當りて、燈に燒け失せたり。時に懺悔し、直し奉りて(頭注より:「その時に、(経の文字を焼いた過ちを)仏にむかって懺悔し、そこを修理し字を補って。」)後、状に就きて持すること得たり(頭注:「その様子(経)の通りに誦することができた。」)。是(ここ)に祖子(おやこ)相見て、一たびは怪しび、一たびは喜ぶ。」


「中卷 女人(によにん)、惡鬼(あくき)に點(シ〔メラ〕)レテ食噉(くら)はるる縁 第三十三」より:

「聖武天皇のみ世に、國を擧(こぞ)りて歌詠(ウタ)ヒテ(頭注より:「(前兆を諷刺した)俗謡を歌って。」)謂(い)はく、
  汝(なれ)をぞ嫁(よめ)に欲しと誰(たれ)、あむちのこむちの萬(よろづ)の子。南无々々や、仙(やまびと)さかもさかも、持ちすすり、法(のり)申し、山の知識、あましにあましに(頭注より:「お前を嫁に欲しいとさ、誰だろうね、菴知小路の万の子よ。(なむなむや)、仙人が逆手をうって、息を吸い込んで、呪文を唱えてね、山の知識が、(あましにあましに)。( )は、ハヤシことば。」)
 爾(そ)の時に、大和の國十市(とをち)の郡菴知(アムち)の村の東の方に、大きに富める家有(あ)り。姓は鏡作造(かがみつくりのみやつこ)なり。一(ひとり)の女子有(あ)り、名を萬の子と曰ふ。未(いま)だ嫁(とつ)がず、未(いま)だ通はず。面容(かほ)端正(きらきら)し。高姓の人(頭注:「姓(かばね)の位の高い人。よい家柄の人。」)伉儷(ヨバ)フニ(頭注より:「結婚の申し込みをしたが。」)、猶(なほ)辭(いな)びて年祀(とし)を經たり(頭注より:「断って、幾年か過ぎた。」)。爰(ここ)に人有(あ)りて伉儷ひ、忩々(いそ)ぎ物を送る(頭注より:「いそいで結納の品を送った。」)。彩(しみ)の帛(きぬ)三つの車(頭注より:「美しい色に染めた絹布を、車三台に載せて。」)なり。見て心に〓(漢字:見+面)(おもね)りて(頭注より:「心に嬉しく思って。」)、兼ねて近づき親しみ、語(ことば)に隨ひて許可(ゆる)し、閨(ネヤ)の裏(うち)に交(まじは)り通ふ(頭注より:「寝所で結婚した。」)。其(そ)の夜閨の内に、音(こゑ)有(あ)りて言はく「痛や」といふこと三遍(みたび)なり。父母聞きて、相談(かたら)ひて曰はく「未(いま)だ效(なら)はずして(頭注より:「結婚の経験がないので。」)痛むなり」といひて、忍びて猶(なほ)寐(い)ぬ。明日(あくるひ)晩(〔オ〕ソ)ク起き、家母(いへのとじ)戸をタタ(タタ)キテ、驚かし喚べども(頭注より:「主婦すなわち母が、寝所の戸をたたき、目をさまさせようと喚んだが。」)答へ不(ず)。怪しびて開き見れば、唯(ただ)頭(かしら)と、一つの指(ゆび)とを遺(のこ)し、自餘は皆噉(くら)はる(頭注より:「その他は皆食べられていた。」)。父母見て悚(お)ぢ慄(おそ)り惆(あはれ)び懆(うれ)へ(頭注より:「怖れ悲しんで。」)、娉妻(しるし)(頭注より:「結納。」)に送りし彩(しみ)の帛(きぬ)を睠(み)れば、返(か)はりて畜(けもの)の骨と成り、載せし三つの車も、亦(また)返はりて呉朱臾(からはじかみ)(頭注より:「薬用にする、ぐみの一種。」)の木と成れり。八方の人聞き集(つど)ひ、臨み見て怪しば不(ざ)るは无し。韓筥(からのはこ)(頭注より:「舶来の美しい箱。」)に頭(かしら)を入れ、初七日の朝(あした)に、三寶の前に置きて齋食(さいじき)を爲しき(頭注より:「初七日の朝、仏前に安置し、精進の食事を設ける。」)。乃(すなは)ち疑はく、災(わざはひ)の表(しるし)(頭注より:「災難の前ぶれ。」)は先(さき)に現(あら)はる。彼(そ)の唄は是(こ)の表(しるし)なることを(頭注より:「(だから)、「汝をぞ嫁に欲しと云々」の俗謡は、凶事の前兆ではなかったか、と疑われる。」)。或(あ)るは神怪(しんげ)なりと言ひ、或(あ)るは鬼啖(きたん)なりと言ふ(頭注より:「ある人は、神の不思議なしわざであると言い、ある人は、鬼が食ったものという。」)。思ひをクツガエ(カヘ)スに、猶(なほ)是れ過去の怨(あた)なり(頭注より:「よく考えてみると、やはり前世に犯した罪への怨みである。」)。斯(こ)れも亦(また)奇異(めづら)しき事なり。」



「中卷 女人、大蛇(をろち)に婚(くなか)はれ、藥の力に賴りて、命を全くすること得る縁 第四十一」より:

「河内の國更荒(さらら)の郡馬甘(うまかひ)の里に、富める家有(あ)り。家に女子(をみな)有(あ)り。大炊(おほひ)の天皇(頭注:「淳仁天皇。天平宝字三年(七五九)。」)の み世に、天平寶字三年己亥(つちのとゐ)の夏四月、其(そ)の女子(をみな)、桑に登りて葉を揃(こ)く(頭注より:「桑の葉をむしり取る。」)。時に大蛇有(あ)り。登れる女の桑に纏(まつ)ひて(頭注:「巻きついて。」)登る。路を往く人、見て孃(をみな)に示す(頭注より:「娘に注意する。」)。孃見て驚き落つ。蛇(へみ)も亦(また)副ひ堕ち、纏ひて婚(くなか)ふ。慌(ほ)れ迷(まど)ひて臥しつ(頭注より:「放心気絶する。」)。父母見て、藥師(くすし)を請ひ召し、孃(をみな)と蛇(へみ)と俱(とも)に同じ床に載(の)せて、家に歸り庭に置く。稷(あはきび)の藁三束を燒き、(中略)湯に合はせ、汁を取ること三斗、煮煎(にい)りて二斗と成し、猪(ゐ)の毛十把を剋(きざ)み末(くだ)きて汁に合はせ、然して孃の頭足に當てて、橛(くひ)を打ちて(頭注より:「頭と足の位置に合わせて、杭を打つ。」)懸け釣り、開(つび)(頭注:「女陰。」)の口に汁を入る。汁入ること一斗、乃(すなは)ち蛇放れ往くを殺して棄つ。蛇の子白く凝(こ)り、蝦蟆(かへる)の子(頭注より:「がまがえるの卵。」)の如し。猪の毛、蛇の子の身に立ち、〓(漢字: 門+也)(〈しなたりくぼ〉)より出づること五升許(ばかり)なり。口に二斗を入るれば(頭注:「(胎内を洗滌するのである。)」)、蛇の子皆出づ。迷惑(まど)へる孃、乃(すなは)ち醒めて言語(かたら)ふ。二(ふたり)の親の問ふに、答ふらく「我が意(こころ)夢の如くなりしも、今醒めて本の如し」といふ。藥服是(かく)の如し、何ぞ謹みて用ゐ不(ざ)らむや(頭注:「薬による効能は、このようである。だから、注意深く用いねばならない。」)。然して三年を經て、彼(そ)の孃、復(また)蛇に婚(くなか)はれて死にき。」






こちらもご参照ください:

『宇治拾遺物語』 中島悦次 校註 (角川文庫)
ヒレア・ベロック 文/エドワード・ゴーリー 絵 『悪いことをして罰があたった子どもたちの話』 柴田元幸 訳



































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うまれたときからひとでなし
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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。
歴史における自閉症の役割。

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