久生十蘭 『紀ノ上一族』 (沖積舎)

「ブラックバーン君、おれの勝ちだ」
(久生十蘭 「紀ノ上一族」 より)


久生十蘭 
『紀ノ上一族』


沖積舎 
平成2年8月31日 発行
225p 
四六判 並装 
カバー ビニールカバー 
定価2,000円(本体1,942円)
装画: 北川健次



「第一部、「モダン二本」 S.17.11 “死の谷”
第二部、「新青年」 S.17.7 “巴奈馬”
第三部、「講談倶楽部」 S.17.10 “大西洋日本島”
――以上三部を改稿改題したうえで、総タイトルを「紀ノ上一族」とし収録する。
第四部、「青年読売」 S.19.9~20.1 に、“最後の一人” として掲載、但し連載第一回は前三部の梗概。なお章名“羅府”は編集部の判断による。」



久生十蘭 紀ノ上一族 01


帯文:

「紀ノ上村の一族の運命
明治末年アメリカへ移住した紀ノ上の一族が、その後三代にわたって迫害され、ついに鏖殺されるまでを、精緻な描写と壮大なスケールでつづる。」



帯背:

「マイノリティーの抵抗」


目次:

第一部 加州(カリフォルニア)
第二部 巴奈馬(パナマ)
第三部 カリブ海
第四部 羅府(ロスアンジェルス)

解説 川村湊



久生十蘭 紀ノ上一族 02



◆本書より◆


川村湊「“滅びの一族”について」より:

「新移民としての中国人や日本人がこうした人種差別、民族差別の恰好のターゲットとされ(中略)震災や経済不況といった社会問題の発生した時に、いわゆる一般市民の不安や不満を紛らわせ、そのエネルギーを転化させる方策として、特定の民族をスケープゴートとして排斥運動を引き起こさせることは、決して珍しいことではなかった。民主主義と経済繁栄と合理的思考の国際的な“宣教者”だったアメリカにおいて、人種や民族の“差別”は、むしろアメリカ社会の特質や特徴を鮮やかに印象づける、本質的な構成要素といっても過言ではないのである。(中略)紀ノ上一族に対するアメリカ側の執拗で徹底的な迫害、弾圧、抹殺の方策は、アメリカをアメリカたらしめているのが、非寛容で、徹底的にエゴイスティックな精神であり、残酷な“差別”に根を持っていることを語っているようだ。(中略)こうしたアメリカの謀殺について、紀ノ上一族のとった抵抗、復讐の手段は、まさに彼らの“謀殺”の意図をそのまま実現させてやるということだった。(中略)紀ノ上一族は、徹底的にアメリカに敵対していたのであり、不協力、非妥協の道を貫いたのである。最後に生き残った定松は、清之助にこういう。「(中略)自殺しようと思うなら、おれだっていますぐでもやれる。しかし、それでは完全な敗北だというんだよ。どうせ死ぬ命なら、いっそ、出来るだけ残酷な方法で米国人に殺されてやれ。おれ達一族の命を賭けて、亜米利加の歴史に、永劫、拭うことの出来ぬ汚点を一つ増してやろうというのだ」。(中略)輝かしき民主主義と自由主義の担い手、自由と平等と人権を保証し、国際社会のリーダーとして君臨するアメリカの、その“素顔” “正体”を自己認識させるために、紀ノ上一族はその全生命を投げ出したといってよい。小説のラストシーンでブラックバーンの自殺の勧告を受け、定松が握手するふりをして、彼の腕をへし折り、激痛に逆上した彼が定松を撃ち殺すというシーンは、まさにそこで紀ノ上一族の復讐劇が完結したことを表現している。」
























































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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