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岡谷公二 『ルソー』 (新潮美術文庫 33)

「たしかにルソーの素朴さは疑いようがない。しかしルソーの素朴さとは、若年にして監獄から世間を見たことのある人間の、そしてその体験を一生人に語らなかった人間の素朴さであることも、やはり知っておかねばならない。」
(岡谷公二 「楽園の謎」 より)


岡谷公二 
『ルソー』

新潮美術文庫 33


新潮社 
昭和50年3月25日 発行
平成10年3月5日 11刷
93p 
20×13cm 並装 カバー 
定価1,100円(税別)
編者: 日本アート・センター



カラー図版32点、解説・年譜中図版(モノクロ)19点。
よく考えてみたら自分が好きな画家はピエロ・デッラ・フランチェスカとウッチェロとユトリロとアンリ・ルソーでした。


岡谷公二 ルソー 01



目次:

作品 (解説: 岡谷公二)
 1 カーニヴァルの晩
 2 森のなかの散歩
 3 風景のなかの自画像
 4 少女像
 5 戦争
 6 砲兵たち
 7 虎狩り
 8 牝牛たちのいる風景
 9 眠れるボヘミア女
 10 パリの郊外
 11 マルヌ河畔の風景
 12 入市税関
 13 赤ん坊のお祝い
 14 ダリヤその他の花
 15 田舎の結婚式
 16 ばら色のろうそく
 17 ライオンの食事
 18 第二二回アンデパンダン展に加わるよう画家たちにすすめる自由の女神
 19 伝ピエル・ロティ像
 20 陽気な道化者たち
 21 イヴ
 22 ジャガーにおそわれた黒人
 23 飛行船「愛国号」の飛ぶ風景
 24 フットボールをする人たち
 25 ビエーヴル川の谷間の春
 26 ジュニエじいさんの馬車
 27 詩人に霊感を授けるミューズ
 28 アンリ四世河岸から見たサン・ルイ島の眺め
 29 花瓶の花
 30 夢
 31 猿のいる熱帯の森
 32 エグゾティックな風景、猿とインディアン

楽園の謎 ルソーの人と作品 (岡谷公二)

年表=ルソーとその時代




◆本書より◆


「楽園の謎」(岡谷公二)より:

「ラスコーやアルタミラの洞窟の岩壁にみごとな牛や鹿や猪を描いた人たちは、絵が単なる外観ではなく真の実在である、とおそらくは信じていた。」
「絵とは、この世界を縮小して所有する手段だった。」
「ところでアンリ・ルソーは、以上のような意味合いで、絵画を信じていた、たぶん二〇世紀では唯一の大画家である。ルソーの素朴さとは、(中略)このような信仰を生涯もちつづけて変らなかった点にある、と私には思われる。」
「絵とはルソーにとって(中略)、彼の生きることのできる、あるいは所有し得るひとつの世界でなければならなかった。彼の絵の、二〇世紀には類を見ないその完結性の強さと、細部への異常な執着と、制作の入念さは、たぶんそこから来ているのである。」

「ルソーは自分を写実家と考えたかったらしいが、実際には少しもそうではなかった。」
「彼は、写実家でなかったのは勿論、写実を志しさえもしなかった。彼は絵によって、彼の生きられる世界、晩年の熱帯風景に象徴されるような、彼の楽園を作り出そうとしただけである。」

「ルソーが一九歳のときに盗みを犯し、一カ月の禁錮刑を受けたことが今日知られている。盗みといっても、当時彼が働いていたアンジェの代訴人の事務所の金を、一五フランほど着服したにすぎない。他の二人の同僚がもっと多額な金をごまかしたためにルソーの盗みも発覚し、共犯にされてしまったのである。」
「たしかにルソーの素朴さは疑いようがない。しかしルソーの素朴さとは、若年にして監獄から世間を見たことのある人間の、そしてその体験を一生人に語らなかった人間の素朴さであることも、やはり知っておかねばならない。」
「犯罪といえば、ルソーは、一九〇七年、六三歳のときに手形詐欺事件にまきこまれて起訴され、執行猶予二年、罰金一〇〇フランの刑を受けている。彼自身にはまったく犯意がなく、その善意が利用されただけだったにせよ、彼のなかにこの種の犯罪に巻きこまれやすい危うさがあったことはたしかだ。
 この裁判のときルソーの弁護人だったメートル・ギレルメは、のちに、「ルソーは私にとっていつも謎でした」と語っている。このような証言はほかにもある。たとえばロベール・ドローネも、
 「私はしばしばルソーを訪ね、私たちは友だちだった。私はとくに彼の芸術にひきつけられていた。しかし人間の方は、彼が苦しんでいるかどうかがよくわからなかったほど私にとっては不可解で、閉されていた」
と記している。
 ルソーの素朴さの底には、たしかにこのような謎がかくれている。ルソーは無意識家だっただけに、この謎をとくのは容易ではない。ただ私には、この謎の部分に、彼を楽園の創造へと駆り立てたものがあるように思えるのだが……。」




岡谷公二 ルソー 02


「眠れるボヘミア女」

「「一人の放浪の黒人女が、マンドリンと水差し(中略)をかたわらにして、くたびれきって眠りこんでいます。獅子が通りかかって、匂いをかぐのですが、食べはしません。それはとても詩的な月のせいなのです……」。故郷のラヴァル市にこの絵を買わせようとして、ルソーが書いた手紙の一節である。」
「単純なイメージの組合せと、青一色の背景とが、ひとつの神話、ルソーの神話をつくりあげている。」




岡谷公二 ルソー 03


「マルヌ河畔の風景」

「ルソーの風景画でいつも私の関心を引くのは、その樹木と道である。彼の風景画にはしばしば、見る者の視線を作品の奥へとさそいこむ道が描かれている。その道は、たどってゆくと不意にまったく思いがけない驚異の世界へと入りこんでしまうのではないか、という予感を与える。それゆえ、この絵も含めて、ルソーの風景は、入口の風景、夢の世界への入口の風景のように私には見えるのである。」




岡谷公二 ルソー 04


「アンリ四世河岸から見たサン・ルイ島の眺め」

「遠近法にわずらわされないルソー独自の空間表現が、晩年に至って、ある自由さに達していることがこの絵を見るとわかる。(中略)光を含んだ中景の樹木、青い影絵となった教会とその尖塔、こちらに背をむけている孤独な人物。いくぶん沈んだこの風景を、艀(はしけ)のマストにひらめく旗の赤が引き立てている。」








こちらもご参照ください:

岡谷公二 『アンリ・ルソー 楽園の謎』 (中公文庫)










































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