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『鏡花論集成』 谷沢永一/渡辺一考 編

「日本の近代文学で、われわれを他界へ連れていってくれる文学というのはほかにない。文学ってそれにしか意味はないんじゃないですか。」
(三島由紀夫 「鏡花の魅力」 より)


『鏡花論集成』
谷沢永一/渡辺一考 編


立風書房 
昭和58年8月20日 第1刷発行
平成元年9月30日 第3刷発行
437p 口絵21p(うちカラー4p) 
四六判 丸背布装上製本 貼函 
定価5,800円(本体5,631円)
装画・題字型染: 松原邦秀 
装釘: 前川直



本書解題より:

「第一部は主に鏡花の人となりについて、第二部は主に作品論を、第三部は付録として昭和十五年三月に岩波書店より発行された「鏡花全集目録」を組み入れた。」
「収録作品の仮名遣いは原典を踏襲したが、たとえ初出が歴史的仮名遣いであっても、後日著者が新仮名遣いに訂正しているような場合は新仮名遣いを採った。(中略)一部の著者名を別に、漢字は(中略)新字体を用い、ルビは最少限必要と思われるものにのみ振った。」



鏡花論集成 01


帯文:

「明治から現在までに書かれた鏡花の人となりと作品の魅力を伝える文章を集大成。他に谷沢永一氏書下ろしの「鏡花頌史」と鏡花本書影を収録。」


鏡花論集成 02


目次:

鏡花本書影 (口絵)
鏡花頌史 (谷沢永一)
 
第一部
鏡花礼讃(短歌二十三首) (吉井勇)
露寒の記 (久保田万太郎)
水色情緒 (長谷川時雨)
番町にも一人 (岡田八千代)
鏡花先生病み給ふ (成瀬正勝)
初めて鏡花先生に御目にかゝつた時 (小村雪岱)
文字と先生 (濱野英二)
泉君の手紙 (笹川臨風)
鏡花先生追慕片々 (佐藤春夫)
鏡花風土記抄 (神西清)
鏡花の一日 (寺木定芳)
泉鏡花 (小林勇)
泉鏡花の憶ひ出 (志賀直哉)
鏡花追憶 (徳田秋聲)
鏡花の人となり (登張竹風)
二人の作家 (里見弴)
泉鏡花 (長田幹彦)
「文壇昔ばなし」より (谷崎潤一郎)
鏡花と住まい (泉名月)

第二部
なにがし (上田敏)
化鳥 (田岡嶺雲)
鏡花の近業 (田岡嶺雲)
「牛門の二秀才 泉鏡花と小栗風葉」より (小島烏水)
「近作短評」より (夏目漱石)
劇となりたる鏡花氏の小説 (小山内薫)
泉鏡花の「風流線」 (登張竹風)
泉鏡花とロマンチク (斎等野の人)
泉鏡花氏の小説を論ず (生田長江)
「里の今昔」より (永井荷風)
「泉鏡花先生と里見弴さん」より (水上瀧太郎)
「鏡花全集」の記 (水上瀧太郎)
「鏡花全集」に就いて (芥川龍之介)
這箇鏡花観 (柳田國男)
泉鏡花氏の「櫛笥集」など (川端康成)
「現代作家の文章」より (川端康成)
鏡花礼讃 (辻潤)
鏡花氏寸描 (新居格)
「二三の作品に就いて」より (堀辰雄)
鏡花の死其他 (小林秀雄)
鏡花論 (成瀬正勝)
泉鏡花と近代怪異小説 (竹友藻風)
名人鏡花芸 (日夏耿之介)
鏡花の異神像 (勝本清一郎)
現代文豪名作全集 15 「泉鏡花集」解説 (村松定孝)
「日本の方法」より (伊藤整)
鏡花のロマンチシズム (中河與一)
湯島詣と葛飾砂子 (奥野信太郎)
「日本橋」解説 (佐藤春夫)
鏡花本の装釘 (鏑木清方)
「参宮日記」と「日本橋」のこと (小村雪岱)
「紙人形」より (柴田宵曲)
「煉瓦塔」より (柴田宵曲)
泉鏡花の「縁結び」 (森銑三)
「りんだうとなでしこ」の三葉子 (蒲生欣一郎)
藤村の凉子、鏡花のお夏 (増田五良)
鏡花本 (増田五良)
日本の文学 4 「尾崎紅葉・泉鏡花」 解説より (三島由紀夫)
鏡花の魅力(対談) (三島由紀夫・澁澤龍彦)
日本語の魔術師 (市原豊太)
「春昼」・「春昼後刻」について (島田謹二)
「薄紅梅」 (生島遼一)
懐しい鏡花 (福永武彦)
記憶の中の泉鏡花 (森茉莉)
五層の天守閣 (澁澤龍彦)
鏡花再演 (種村季弘)
鏡花における超自然 (由良君美)
離人症について (吉村博任)

〈付録〉 岩波書店版 「鏡花全集」 目録より
紹介 (水上瀧太郎)
刊行の辞 (佐藤春夫)
文章 (志賀直哉)
一つの奇峯 (室生犀星)
奇絶清絶 (笹川臨風)
泉さんの世界 (小宮豊隆)
先生の全集 (岡田八千代)
うまさ (小林秀雄)
幽寂境 (長谷川時雨)
天才泉鏡花 (徳田秋聲)

鏡花論集成解題 (渡辺一考)



※昭和63年の増刷時に「鏡花論集成解題」末尾に「第二刷付記」が追加されています。



◆本書より◆


長田幹彦「泉鏡花」より:

「アメリカのナイアガラ市に住むフラウ・ロルフエスといふ夫人が日本へ訪ねてきたことがあつた。それはもう中年の、ドイツ系の人で、有名な銀行家の奥さんださうであつた。(中略)今度日本へやつてきた目的は、しかるべき日本作家の短篇を十二三篇選定してもらつて、それを英訳してあちらで出版したいといふのであつた。」

「「おい、長田君、レコは日本語は分らないんだらうね。そんならいふが、あんな女におれの「高野聖」がわかつてたまるもんか。翻訳なんて一切お断はりだ。お前のペラペラで、ひとつ深入りしないうちに、断つておくれよ。たのむよ。日本の泉は、西洋人なんかによませるために、小説はかいてゐねえんだから、しひて読みたきや、日本語勉強して、日本語でよんでもらひたいね。」」



三島由紀夫/澁澤龍彦「鏡花の魅力」より:

三島 僕は今度、この全集を編纂するんで「縷紅新草」を読み返してみて、本当に心をうたれた。あんな無意味な美しい透明な詩をこの世に残して死んでいった鏡花と、癌の日記を残して死んだ高見順さんと比べると、作家というもののなんたる違い! もう「縷紅新草」は神仙の作品だと感じてもいいくらいの傑作だと思う。どんなリアリズムも、どんな心理主義も完全に足下に踏みにじっている。言葉だけが浮遊して、その言葉が空中楼閣を作っているんだけれども、その空中楼閣が完全に透明で、すばらしい作品、天使的作品! 作家というものはああいうところへいきたいもんだね。江戸文学なんかのドロドロしたものから出発しているんだけどね。
澁澤 随分気持悪いのもありますからね。
三島 それでいて、妙に新しい。サイケデリックみたいでしょう。」

三島 澁澤さん、鏡花の芝居は嫌いですか。「天守物語」なんか。
澁澤 あれは最高傑作ですね。
三島 一度新派かどこかでやりたいと思っている芝居が一つあるんです。不思議な芝居で、ある奥さんが、亭主が嫌いになって逃げて行くんです。その奥さんは自分の若い時の恋人と会いたいんですよ。そこにだけ自分の生涯の幸福があると思っている。そして田舎へ逃げて行くと、たまたま彼女を追って、その恋人が追っかけてくるんです。そうしたらその話は幸福に終りそうなもんですが、田舎に変な汚ない爺さんがいて……。
澁澤 「山吹」ですね。あれはすばらしい。汚ない爺さんは、人形使いで彼女に鞭で打たれるんですね。
三島 すごい作品でしょう。彼女はその爺さんに愛着をおぼえて、別の世界へ連れていってくれそうな男はこれだと思う。過去の恋人は、ただの地上の恋愛にしか連れていってくれないけれどもね。(中略)今アングラなんかで、あれだけの芝居できませんよ。あの時代に書いたというのは、たいしたものです。
澁澤 あれなら簡単に上演できるでしょう。
三島 できると思います。鏡花は、あの当時の作家全般から比べると絵空事を書いているようでいて、なにか人間の真相を知っていた人だ、という気がしてしょうがない。」

三島 日本の近代文学で、われわれを他界へ連れていってくれる文学というのはほかにない。文学ってそれにしか意味はないんじゃないですか。」

三島 鏡花の人間主義というのは実にアイロニカルで、最終的にはお化けにしか人間主義がないことになっちゃうんだ。
澁澤 だから人間主義じゃないんですね。
三島 人間主義じゃないんだけれども、鏡花は人間主義に毒されているところがちょっとあるんだ。鏡花の欠点をあげつらえば、最終理念というか、どん詰まりで信じたものは、人間主義みたいなものに毒されていた。もうひとつ通り越していたら、もっと凄くなったろうと思うな。
澁澤 本当のお化けになっていただろうな。
三島 お化けが一番人間的というところで、相対性の世界に生きていた。だから転換すれば同じになっちゃう。
澁澤 純粋観念だとはいいながら、ポーなんかの世界とは全く違うでしょう。
三島 ポーはやっぱりネクロフィリー(屍姦症)の世界で、生きている人間を好きでないね。
澁澤 冷たいですね。鏡花はホフマンに近いですか。ホフマンもああいうようなスタイルですね。
三島 ホフマンに近いでしょうね。ロマンティケルというのは、どこか快活ですね。僕はあれが好きなんです。鏡花は快活な作家で、死ぬまで快活だったと思いますね。スプリーンというもの、世紀末的な憂欝というものは鏡花にはありそうでない。
澁澤 僕はたとえばノヴァーリスなんかもそういう点で好きですね。
三島 ブレンターノも、アイヒェンドルフなんかも快活ですね。それがロマンティケルの一つの要素だな。
澁澤 病気になっていても快活なんですね。肺病で快活だなんていいですね。」










































































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◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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