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『マラルメ詩集』 渡辺守章 訳 (岩波文庫)

「なかんずく、行くなよ、友よ、絶対に、パンなど買いには。」
(ステファヌ・マラルメ 「施し物」 より)


『マラルメ詩集』 
渡辺守章 訳
 
岩波文庫 赤/32-548-1 


岩波書店 
2014年11月14日 第1刷発行
2019年4月24日 第8刷発行
579p
文庫判 並装 カバー
定価1,260円+税
カバー: 中野達彦
カバー図版: フェリシアン・ロップスによる『ステファヌ・マラルメ詩集』(ブリュッセル、エドモン・ドマン、一八九九年)の口絵「竪琴」



本書「底本について」より:

「本書には、大別して三種類のテクストが収録されている。
 第Ⅰ部には、マラルメ唯一の個人詩集であり、しかし生前には刊行を見なかった、ベルギーの書肆エドモン・ドマン刊の『ステファヌ・マラルメ詩集』(一八九九年二月二十日印刷)を収めた。
 第Ⅱ部には、ドマン版『詩集』には採られなかったものを「拾遺詩篇」として収めた。」
「本書では、それに加えて第Ⅲ部として、二系列の重要な未定稿を補遺に加えた。ドマン版『詩集』の中央に、その頂点をなすかのように配された「エロディアード――舞台」と「半獣神の午後」に関わる未定稿である。」



「年譜」は二段組。「解題」に図版(モノクロ)2点。各章扉(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ)にマラルメのイニシャル。
たいへん詳細な注解付きです(本文207頁、注解268頁)。



マラルメ詩集



カバーそで文:

「〈絶対の書物〉を書くことの不可能性を逆手に取り、定型韻文・散文詩・批評詩と、超絶的な言語態を極限まで操り〈不可能性の怪獣(キマイラ)〉に立ち向かった詩人マラルメ。その究極の〈劇場〉の一つ、ドマン版『詩集』により、詩の言語を読み解き、耳を澄まし、思考する。新訳


目次:

底本について

Ⅰ 『ステファヌ・マラルメ詩集』(ドマン版)
  祝盃
  不遇の魔
  あらわれ
  あだな願い
  道化懲戒
  窓
  花々
  再び春に
  不安
  〔苦い休息にも 飽きて……〕
  鐘つき男
  夏の悲しみ
  蒼穹
  海のそよ風
  ためいき
  施し物
  詩の贈り物
  エロディアード――舞台
  半獣神の午後
  〔髪の毛は 炎となって翔び……〕
  聖女
  喪の乾盃
  続誦(デ・ゼサントのために)
  扇 マラルメ夫人の
  もう一面の扇 マラルメ嬢の
  アルバムの一葉
  ベルギーの友たちの想い出
  下世話の唄Ⅰ(靴直し)
  下世話の唄Ⅱ(香草売り)
  短信
  小曲Ⅰ
  小曲Ⅱ
 ソネをまとめて
  〔闇が 宿命の掟によって……〕
  〔処女にして、生気あふれ……〕
  〔勝ち誇って 遁れたり……〕
  〔浄らかなその爪は……〕
  エドガー・ポーの墓
  シャルル・ボードレールの墓
  墓
  頌
  頌
  〔ひたすらに 船を進める……〕
  三つ折りのソネⅠ〔傲慢は挙げて 煙と化す……〕
  三つ折りのソネⅡ〔躍り出た、膨らみと……〕
  三つ折りのソネⅢ〔レース編みの カーテンの……〕
  〔時の香に染みた いかなる絹も……〕
  〔君の物語に 踏み込むとは……〕
  〔圧し懸かる 密雲の下……〕
  〔読み継いだ本も パフォス の名に閉じて……〕
  書誌

Ⅱ 拾遺詩篇
  〔黒人女が一人、悪霊に 衝き動かされ……〕
  〔お目覚めの時には その跡もなし……〕
  〔夫人よ……〕
  〔愛し合おうと お望みならば……〕
  〔魂のすべてを 要約して……〕
  ソネ〔人も通わぬ 森の上に……〕
  〔おお 遠くにありても かく愛おしく……〕
  扇 メリー・ローランの

Ⅲ 半獣神変容/エロディアード詩群
  半獣神、古代英雄詩風幕間劇――半獣神独白
  半獣神即興
  エロディアード――古序曲
  『エロディアードの婚姻――聖史劇』

注解
年譜
【解題】書物を演出する――ドマン版『マラルメ詩集』の成立
参考文献
あとがき




◆本書より◆


「〔ひたすらに 船を進める……〕」:

「ひたすらに 船を進める その決断に
輝かしくも 混沌たる インドをも超えて
――この挨拶こそは 時間の使者
君の船尾が 今超えた 岬の地点

いずれか 低く 傾く帆桁(ほげた)は
広大なる 帆もろともに 沈み込み
波浪 揺れ騒ぐ様(さま) つねに変わらず
一羽の鳥の 新たなる 報せを告げて

繰り返し 単調な ひたすらに叫び続ける
されど 舵取りの向きは 変わらず
海図の示す 位置などは 無用
夜と 絶望と かつはまた 宝石と

かの鳥の告げる 歌声こそは その映る影
蒼ざめた ヴァスコの 微笑の上までも。」



「注解」より:

「ドマン版『詩集』中、時期的には最も後期の作品。」
「この八音節エリザベス朝風ソネは、ジュリエット・アダンの依頼で、ヴァスコ・ダ・ガマによるアフリカ南端経由インド航路発見の四百周年記念アルバムのために書かれた。十六世紀ポルトガルの航海士・探検家への讃歌であると同時に、本書冒頭の「祝盃」と同じく、〈詩人の冒険〉への讃歌でもある。一二行目の――
  Nuit, désespoir et pierrerie
  (夜と 絶望と かつはまた 宝石と)
は、「祝盃」の同じく一二行目(二一頁)――
  Solitude, récif, étoile
  (孤独 暗礁 天なる星)
を思い起こさせずにはおかない。時間的に言えば、マラルメ最後の詩篇の一つであり、〈絶対の書物〉への思考を深めると同時に、「植字法的詩篇」(クローデル)の実験である『賽の一振り』の校正の最中であり、さらに『エロディアードの婚姻』(二一二頁)に本格的に取りかかっていた時期にも当たるから、ヴァスコの前人未踏の冒険に、自身の「賭け」を重ねていると読むのは自然であろう。
 一一行目の "Un inutile gisement" の "gisement" は、通常は「地下の資源や宝石」を指すが、航海用語としては「海岸に対する船舶の位置」を意味する。(中略)ヴァスコは金銀を求めて東洋を目指したのではないので、ここでは「海岸の位置(海図の示す位置)」の解に従う。」








こちらもご参照ください:

『マラルメ 詩と散文』 松室三郎 訳 (筑摩叢書)
Stéphane Mallarmé 『Autobiographie: Lettre à Verlaine』
『ホフマンスタール詩集』 川村二郎 訳 (岩波文庫)
『李商隠詩選』 川合康三 選訳 (岩波文庫)


































































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