FC2ブログ

四谷シモン 『人形作家』 (講談社現代新書)

「僕にとっていい人形とは、「このお人形さん、まるで生きているみたい」と言われるような人形ではなく、息がとまって死んでいる人間に近い、凍てついた人体表現です。」
(四谷シモン 『人形作家』 より)


四谷シモン 
『人形作家』
 
講談社現代新書 1633 


講談社 
2002年11月20日 第1刷発行
200p 口絵(カラー)8p 
新書判 並装 カバー
定価880円(税別)
装幀: 杉浦康平+佐藤篤司
カバー写真: 「解剖学の少年」(1983)、「ナルシシズム」(1998)
撮影: 篠山紀信



口絵カラー図版8点。本文中にモノクロ図版21点。



四谷シモン 人形作家 01



カバー文:

「不良少年から天才人形作家へ。六〇年代の新宿を駆け抜け、唐十郎、澁澤龍彦らと出会った激動の半生と創作の舞台裏を告白。」


カバーそで文:

「細部へのこだわり――「ドイツの少年」では靴や靴下、
ガーターベルトなど、小物にも細心の注意をはらいました。
靴は靴職人に特注しました。市販の子供の靴でも代用が利くと思うでしょうが、
人間の足は意外とつま先が平たくて幅があり、恰好よくないのです。
ですから人形用に足先の細い型で靴を作ってもらいました。……
人形をガラスのケースの中に入れたのは、ショーウィンドー的な感覚からです。
たとえば、デパートのショーウィンドーを通して見る商品は、
隔離された世界のなかにあり、売り場でじかに売っているのとおなじものなのに、
それとはどこか違う標本的なものに見えます。
僕の人形も家具的なケースに押し込み、ガラスというフィルターを一枚かけて、
標本のように見せたいと考えたのです。
ガラスのひんやりした人工的な素材感が僕の好みであったということもありました。
――本書より」



目次:

シモンとは何者であるか (嵐山光三郎)

1章――人生が始まっちゃった
 いつもひとり
 夫婦喧嘩
 小学校でストリップ
 母の家出
 さびしい出発
 第一作品はしゃれこうべ
 転校続き
 今にみてろ
 布の人形を作る
 母とのすれ違い
 北池袋の父の記憶
2章――問題児の青春
 問題児と人形
 妄想する愉しみ
 母の再婚
 質屋通い
 人形作家の家
 警察のお世話に
 進路は人形
 人形を売る
 洋品店の納豆汁
3章――新宿に漕ぎ出す
 ロカビリーの世界へ
 シモンになる
 四谷婦人会
 現代人形美術展に入選
 歌手になる
 クラリネットを突き刺す人形
 爆発する人形
 ベルメールの衝撃
4章――女形・四谷シモン誕生
 職人に徹する決心
 澁澤龍彦の世界に近づく
 唐十郎、状況劇場との出会い
 状況劇場の舞台に
 四谷シモンの誕生
 張り子人形づくりを学ぶ
 父の死を知る
 パリに行く
 パリの日々
 的場のお銀
 新宿西口中央公園事件
 アングラ御用だ!
5章――ただごとじゃつまらない
 唐十郎と寺山修司
 元締め唐十郎
 芝居と酒
 発作的なアドリブ
 「太陽」にとりあげられる
 大阪万博
 資金稼ぎの歌謡ショー
 舞台装置になった人形
 被写体となる
 芝居の季節が終わる
6章――人形作家としてデビュー
 「ドイツの少年」
 凍てついた人体表現
 細部へのこだわり
 第一回個展にむけて
 「未来と過去のイヴ」
7章――人形観を模索する日々
 新しい人形の世界へ
 青木画廊
 シモンドールとアンティーク・リプロダクション
 「慎み深さのない人形」
 エコール・ド・シモン設立へ
 方向転換
 個性をつぶさない
8章――答えはない
 大忙しの一年
 瀧口さんの死
 「機械仕掛の少年」
 エコール・ド・シモン展と大病
 ふたたび役者に
 大河ドラマ
 久世光彦さんのドラマ
 作品集刊行
 澁澤さんの死
 浮遊感にとらわれて
 自分で出した答え
 「人形愛」展を開催
 ナルシシズム

あとがき




◆本書より◆


「1章」より:

「小さいときの僕は、いつもひとりだったという記憶があります。
 小学校四年生までいた雪谷(ゆきがや)の家の縁側にすわって、紙皿にクレヨンで絵を描いていた記憶、父が土産(みやげ)に買ってきた人形たちを集めて、ひとつの家族のようにして遊んでいた記憶。そんなとき僕はいつもひとりでした。」

「僕は根津小学校から数矢小学校に転校します。しかし転校ばかりしていると友達ができません。唯一の友達は、深川の大きな料亭の男の子でした。
 その友達の家に遊びにいったときのこと。二階の座敷の窓をあけると外はもう真っ暗です。しばらくすると、三味線の音が聞こえてきて、男の声で「ちょっと、お二階さん」と呼びかけられました。するとその子は、手馴れた風にポーンとおひねりを窓の外に投げました。僕はあっけにとられるばかりでした。」

「笠井さんにボカーンと殴られた僕は、野原に跳ね飛ばされました。(中略)夕暮れのなか、川向こうに深川東映の青いネオンが見えました。(中略)青い光を睨みつけながら、「今にみてろ」と腹の底からわきあがる怒りを感じていました。」
「このとき僕は、笠井さんという個人を超えて、社会とか世間とかいうもの全体に対して「今にみてろ」と感じたのです。」

「よく人形を作るきっかけをたずねられるのですが、はっきりとしたきっかけがあったのかどうか思い出せません。」
「気がつくと、ふーっと人形作りに染まっていました。」

「僕は、自分の一生懸命さを理解してもらえない、伝わらないという悲しさでとてもつらい思いをしました。「この子、ちょっと変わっているわ」ということも気づいてもらえない、母はわかっていないなという感覚がありました。」



「2章」より:

「勉強することをやめた僕は、教師をてこずらせる問題児として残りの小学校生活を送りました。」
「中学生になっても、僕はひとりで遊ぶのが好きでした。」

「金ちゃんというあだ名の国語の先生に「お前、高校だけはでておけよ」と勧められましたが、僕の進路は進学でも就職でもなく、人形を作ることだとすでに決意していました。」



「4章」より:

「この年(引用者注: 昭和44年)の状況劇場は、騒乱続きでした。
 新宿に次いで十二月に渋谷の金王八幡宮で「少女都市」という芝居をしたときのことです。天井桟敷を主宰していた寺山修司さんが初日の祝いにお葬式用の白黒の大きな花輪を送ってくれました。それは、寺山さん流のユーモアだとみなわかっていて、かっこいいねえと喜んでいました。そして芝居の打ち上げに誰かが大量の日本酒を差し入れてくれ、みんなで冷酒をどんどんあおっているうちに寺山さんのところにお礼にいこうということになり、全員で寺山さんの所へむかったのです。天井桟敷の稽古場は神社からすぐそばの並木橋にあります。僕たちは、ほんとうに感謝の気持ちを伝えに挨拶にいったのでした。
 ところが、応対にでた天井桟敷の人に「寺山さんにお礼の挨拶にきました」と言ったところ、先方は「お礼」「挨拶」ということばをまったく取り違って解釈してしまい、僕たちが殴りこみに来たのだと思ってしまったのです。そして家のなかから天井桟敷の劇団員が飛び出してきて、わけがわからぬうちに乱闘が始まっていました。
 寺山さんは「唐、話せばわかるから、な、話せばわかるから」といいつつ、僕の頭をボカンと殴りました。腹をたてた僕は「なんだ寺山、ばかやろう」と近くにあったコカコーラの看板を寺山さんが経営している喫茶店に放り込み、表のガラスがバラーッと砕けました。するとガラスの奥のほうで、寺山さんのお母さんがジーッとこちらを見ているのがわかりました。
 僕は一緒にいた不破万作に「万ちゃん、これはヤバいから逃げよう」と声をかけて、道路を渡って逃げようとしました。そのうち揉みあっている連中からも渋谷署がどうとかこうとかと言う声が聞こえてきて、僕は芝居の化粧のまま不破と一緒に逃げ出しました。
 通りへ出るとちょうどよくタクシーが来て、ここで逃げちゃえばばれやしないだろうと手をあげたら、それはタクシーではなくパトカーだったのです。
 パトカーは僕たちの前でぴたりと止まりました。パトカーのなかから寺山さんのお母さんが僕を指差し、「この人です」。僕たちはそのまま渋谷署に連行されることになったのでした。」



「6章」より:

「死んだ人間も人形に近いなと思います。僕にとっていい人形とは、「このお人形さん、まるで生きているみたい」と言われるような人形ではなく、息がとまって死んでいる人間に近い、凍てついた人体表現です。そして人形は動かずにずっと佇んでいるのがいいと思っています。」


「8章」より:

「亡くなる前、澁澤さんは「この世は夢で、玉ねぎの皮をむいていくと最後はなにもなくなるような、そんなものなんだよ」と言っていました。そんな言葉を思い出して、澁澤さんが亡くなった直後は、「眠っているときだけでなく目覚めている現在が夢ではないという根拠はどこにもなく、すべてが夢で、たった今も底なしなんだ」といった、自分がプカプカと浮いているような浮遊感がありました。」

「長い時間をかけて悩んだ末、「この世のすべては最初から解決しているのであって、これといった決まった答えはないな」と自分のなかで悟りました。
 答えはない。だから問いただすことそのものに意味はないかもしれないが、それでも問いつづけていくしかない生き物が人間なのだろうという答えにたどり着いたのです。そしてまた、もし僕にとってこの問題に対する仮の答えがあるとするならば、それは、作るということだ、もし僕に哲学的・宗教的なものがあるとしたら、それは人形を作ることでしかあらわせない、これが自分で自然に導き出した答えでした。」




四谷シモン 人形作家 02



























































関連記事
スポンサーサイト



プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

Koro-pok-Guru
Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。
歴史における自閉症の役割。

最近の記事
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
フリーエリア
netakiri nekotaroの最近読んだ本