塚本邦雄 『ほろにが菜時記』 (ウェッジ選書)

「昭和一桁代に少年少女だった世代は、まだまだ駄菓子も洋菓子も惜しみなく与えられていた。無論後者は都会っ子の特権の一つで、ローカルでは絵を見て涎を垂らしていたものだった。シュウクリームを生れてはじめて、東京の叔父がお土産にくれた時の感動は、それから七年後、岩波文庫版『ユリシーズ』五冊本を小遣いの貯金で手に入れた時の歓喜とほぼ同じだった。」
(塚本邦雄 「むかしなつ菓子」 より)


塚本邦雄 
『ほろにが菜時記』

ウェッジ選書 39 

ウェッジ 
2010年5月27日第1刷発行
241p 
18×13cm 並装 カバー 
定価1,470円(本体1,400円)
ブックデザイン: 間村俊一
カバー画: 岩崎灌園『本草図譜』より
扉画: 『本草図譜』、毛利梅園『梅園草本花譜』『梅園介譜』より



本書「編集附記」より:

「本書は、月刊誌「味覚春秋」(味覚春秋モンド刊)に、一九八五年四月号より二〇〇〇年七月号まで連載された「ほろにが菜時記」より五十五回を撰び一本に纏めたものである。」


没後出版。
新字・新かな。

本書の続編として、幻戯書房から『異国美味帖』(2013年)が刊行されています。本書と同傾向の著作に『味覚歳時記――木の実・草の実篇』(角川書店、1984年)があります。


塚本邦雄 ほろにが菜時記01


帯文:

「アボカードはアボガドではない!
四季の食材について
学名から故事来歴
味覚、調理、
詩歌に至るまで
鋭敏な感覚で
味わい尽した
究極の味覚随筆――。」



目次:

序 ポモ・ドーロ!

新年
1 屠蘇
2 小豆
3 餅
4 ななくさ


5 つくし
6 百合根
7 慈姑
8 独活
9 若布
10 蜆
11 鮒鮨
12 芹とその仲間
13 山椒
14 水菜
15 菠薐草
16 蕗


17 茗荷
18 蓼
19 茄子
20 ローズマリー
21 蓮
22 菖蒲
23 辣韮
24 薄荷
25 そらまめ
26 鮎
27 荀
28 杏


29 目箒
30 菊
31 茘枝
32 石榴
33 梔子
34 鰯
35 無花果
36 茴香
37 落花生
38 柿
39 郁子
40 梨


41 沢庵
42 蒟蒻
43 蕪菁
44 鱈
45 葱
46 豆腐
47 大根
48 仏手柑
49 牡蠣
50 味噌


51 麩
52 チェリモヤ
53 エスプレッソ
54 むかしなつ菓子

跋 苦渋辛酸のお祓い (塚本靑史)



塚本邦雄 ほろにが菜時記03



◆本書より◆


「蓼」より:

「世に「蓼食う虫も好き好き」という言葉があって、誰でも一応はうなずいてしまう。わかっているつもりだが、このことわざのニュアンスは、わりあい複雑である。単に「いかもの食い」とも異なる。(中略)むしろ対人関係の特殊な好みの比喩に用いられているのが目立つ。人間は香辛料の中の一つとして、なかんずく鮎を食べる時は、不可欠のものとしているが、あの辛みの激しい蓼を、好き好んで食う虫の気がしれないという。だが辛いのは蓼にかぎらない。鷹の爪などを代表とする、あの唐辛子にしろ、ちゃんとあれだけを餌にして生きている昆虫が存在する。面形天蛾(めんがたすずめ)などもその一種で、辛みなど何とも想っていないようだ。(中略)どうやら虫共は味より香・臭に反応を示すようだ。
 蓼食う虫、これがまた多士済々で、蓼小夜蛾(たでこやが)・蓼蚜虫(たでありまき)等数種いて、栽培蓼の大敵である。人間がスパイスに使う植物を常食にするとは、なかなか粋な虫、そのせいか、諺にも、必ずしも軽侮の気持はこめられていない。むしろ、つきあうのに骨が折れる変り者風の、要敬遠人物を指すことが多かろう。
 あるいはまた奇特なことだと、ややあきれ加減に見ている趣も加わる。その好みの中に、醜悪でグロテスクな傾向が加わる時は、「蓼食う虫」のたぐいではなくて、あの「いかもの食い」になるようだ。」



塚本青史氏による「跋」より:

「ある一定期間、憑かれたように買い漁った食品(食材)というのもあった。即席饂飩(うどん)の「どん兵衛」、濃い葡萄ジュース、(略)いずれも食べ尽くして堪能すると、もう見向きもせぬようになった。ただ、ひとつ飽きもせず賞味しつづけたのは、エスプレッソ珈琲だけだった。」


塚本邦雄 ほろにが菜時記02

































































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難破した人々の為に。

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