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E・T・A・ホフマン 『くるみ割り人形とねずみの王様』 種村季弘 訳 (河出文庫)

「ドロッセルマイヤーはすくなからず愕然(がくぜん)としましたが、やがて自分の技術と運を信じて、さっそく効能ありと思われる最初の作業に取りかかりました。ドロッセルマイヤーはピルリパート姫を器用にバラバラに分解し、手足のネジを外して内部構造をのぞいて見ました。ところが残念ながらそこで分かったのは、姫は大きくなればなるほど不格好になるだろうということで、どうしたらいいのかすっかり途方に暮れてしまいました。ドロッセルマイヤーはまた姫の身体をひとまとめにすると、(中略)揺り籠のかたわらでしょんぼり打ち沈みました。」
(ホフマン 「くるみ割り人形とねずみの王様」 より)


E・T・A・ホフマン 
『くるみ割り人形と
ねずみの王様』
種村季弘 訳

河出文庫 ホ-3-2 


河出書房新社 
1995年12月25日 初版印刷
1996年1月9日 初版発行
264p 
文庫判 並装 カバー 
定価640円(本体621円)
カバー写真: 山本成夫
カバーデザイン: 中島かほる
フォーマット: 粟津潔



種村季弘によるホフマン童話の新訳。「大晦日の夜の冒険」は『澁澤龍彦文学館 綺想の箱』(筑摩書房)に収録されたものの改訳です。



ホフマン くるみ割り人形とねずみの王様



カバー裏文:

「チャイコフスキーのバレエで有名な「くるみ割り人形」の知られざる原作が、今、新しい訳でよみがえる!!
こっけいで不気味、気が良くて残酷、美しくて醜悪、エレガントでうさんくさい―ホフマンの描き出す世界を見事に体現した表題作のほか、幻想味あふれる「見知らぬ子ども」「大晦日の夜の冒険」を併録した、待望のメルヘン集成。」



目次:

くるみ割り人形とねずみの王様
見知らぬ子ども
大晦日の夜の冒険

訳者解説




◆感想◆


創土社版『ホフマン全集』所収の「くるみ割り人形」の訳文が、ひらがなばかりで読みにくく、途中で挫折して、そのままになっていたので、種村訳を購入してみました。
矢川澄子の『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』(新潮文庫)もそうでしたが、種村季弘のホフマン童話の訳も、たぶん訳者自身が子供の頃に読んだり聞いたりしたのであろう決まり文句を交えながら、くだけた口調で訳していますが、そのせいで、むしろわかりにくい訳になっているような気がします。たとえば、作中に登場する少年少女が「そりゃ、とっくに承知之介でございだよ」とか「いざ鎌倉というときには」などと口にするのですが、いまどきの子どもにはちんぷんかんぷん、唐人の寝言なのではないでしょうか。

表題作は、玩具の国とねずみの国の戦いの物語です。話のなかの話として語られる、ねずみの王妃によってくるみ割り人形に変身させられてしまったドロッセルマイヤー青年の「物語」の世界が、「現実」の世界になだれ込んで来ます。危機を救えるのは、現実と物語の間に区別をつけない「空想家」の少女マリーだけです。

「マリーちゃん、きみは私より、私たちみんなよりずっとお利口さんだな。(中略)だって私じゃなくて――きみなんだ、きみだけが彼をすくえるんだよ。しっかりして、あくまでも忠誠を守りたまえ。」

そう言うのはクリスマスのプレゼントとしてくるみ割り人形を持参した上級裁判所顧問官ドロッセルマイヤー(人形に変えられてしまったドロッセルマイヤー青年の伯父)で、作者ホフマン自身を思わせるような、とらえどころのない不気味な人物ですが、

「子どもは美しいだけの人、気の良いだけの人より、自分たちのやんちゃ、つまり汚れのない野生につき合ってくれる、ドロッセルマイヤーのようにどこまでひろがっていくかわからない、まるごとの人、善悪や美醜以前でもあれば、善悪や美醜のかなたでもあるような人が大好きなのです」

という「訳者解説」中のことばは、そのまま種村季弘本人に捧げたい気がします。

「ホフマンのメルヘンが、洗練されているだけにひ弱なデカダンス趣味と遠いのは、(中略)「見知らぬ子ども」を見てもわかります。フォン・ブラケル家の子どもたちは、(中略)高尚な学問や高級な玩具とは無縁な、野生の自然を相手に遊んでいます。そして借り物めいた高級玩具をすべてかなぐり捨ててしまったところから、はじめて見知らぬ子どもと彼がやってきたすばらしい王国が見えてきます。そういえば、(中略)「くるみ割り人形」のマリーも、ねずみの大群にお菓子やお人形さんをみんな食べられてなくしてしまってから、くるみ割り人形の王子のお菓子の王国へ招待されたのでしたね。見た目においしそうなもの、きらびやかなものを、まずすべて失ってしまうことが、この世にありうべくもない夢の世界に招かれる条件なのですね。」
(「訳者解説」より)

















































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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

すきなことば: 「だれもいない」「ギブアウェイ」「ウポポイ」「隠密」
きらいなことば: 「人と人とのつながり」「キャリアアップ」「ほぼほぼ」「三密」

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