John Cage "X: Writings '79-'82"

John Cage 
『X: Writings '79-'82』


Wesleyan University Press, 1983
187p, 23.5x19.5cm, paperback



Wesleyan University Press のジョン・ケージ著作集シリーズ五冊目。
1983年は初版刊行年です。わたしが買ったのは2000年代に入ってからの増刷だとおもいます。

シリーズ内容は:
Silence: Lectures and Writings
A Year from Monday: New Lectures and Writings
M: Writings '67-'72
Empty Words: Writings '73-'78
X: Writings '79-'82

だんだん余白が多くなっていきます。


john cage - x 1


「互いに争うだけしか能が無い「国家」などとっくに終わっている。われわれが生きる場所に制限などあってはならないのだということを実行してみせるために、われわれは巨大産業のやり方を慎重に学ばなくてはなるまい。愛国心? そんなものは宇宙空間にでも持っていけばよろしい。」
(「序文」より)
 
「本書のタイトル(「X」)は、「M」と同様、チャンス・オペレーションによって得られた。それが意味するのは未知のなにか。詩が生きる場所、額縁に入っているのもそうでないのも見るもの全てがアートである場所、レコードからきこえるのもそうでないのも全てが音楽である場所。」
(「序文」より)


CONTENTS:

Foreword
Writing for the Fourth Time through Finnegans Wake
"There is not much difference between the two." (Suzuki Daisetz)
Toyama 1982
James Joyce, Marcel Duchamp, Erik Satie: An Alphabet
Another Song
Writing through the Cantos
(untitled)
B. W. 1916-1979
Composition in Retrospect
for the first exhibition with love
Diary: How to Improve the World (You Will Only Make Matters Worse) Continued 1973-1982
Wishful Thinking
Muoyce (Writing for the Fifth Time through Finnegans Wake)



john cage - x 2


本文中の12点の挿入図版(Weather-ed I-XII)は、ケージの要請によってポール・バートン(Paul Barton)が作成した、ニューヨークのシーゲル・クーパー・デパートの写真の風化したイメージ。

おなじみの「日記 Diary: How to Improve the World (You Will Only Make Matters Worse)」と、実験的散文「MUOYCE (Writing for the Fifth Time through Finnegans Wake)」(「MUOYCE」は「Music」と「Joyce」のかばん語)の他は、ほぼ全て「メゾスティック(mesostic)」(アクロスティックの変形で、縦書きにされた人名(DUCHAMP、JOYCE、SATIE 等)を柱に文章が生成されていく)の方法で書かれています。
瀧口修造のメゾスティックもあります。

「iT
is A long time
i don't Know how long
sInce
we were in a room toGether now i hear
that yoU are dead but when i think of
you as now i have the Clear impression
tHat
tenderly smIling you're alive as ever」

(ふりが
どうせしてから
つきひはめって
どのくらいたましたか
あなたがんだと きいて
おもいだすのは しじ
おだやかな ほほえみをかべている
あなたの えい
いまでも いきているよに)
 
*
 
「deaTh is
At all times
liKe
lIfe
now that you are a Ghost
yoU are as you were
a Center among centers
world-Honored
world-honorIng
 
late yeSterday evening
tHe moon in los angeles
low in the east not fUll
do you see suZuki daisetz
give him my lOve」
 
(あなは ゆうれいになっても かわらない
ているのも しんでいるのも おなじこと
せかいに ことほがれ せかいを ことほ
ゅう

の なかの ちうしん
きのの よる つきは ひがしに
まんげつではなく ―どう つたえてください
むこで ダイセツにあったら よろしくと)


john cage - x 3


「ある日、デュシャンの死後のことだが、奥さんのティーニーに連れられて、そのころまだフィラデルフィアに移される前でニューヨークにあった「遺作」を、見に行ったことがあった。十番街を並んで歩きながら、私は、思い切って言ってみた。
 「ティーニー、実はね、ぼくにはマルセルの作品がわからないんだ」
 彼女は言った。
 「わたしもよ」
 本人が生きているあいだに、聞いてみることもできたのに、私は聞かなかった。ただそばにいるだけでよかったのだ。私は彼が好きだったし、今世紀の他のどんなアーティストにも増して、私の生き方を変えたのは彼だった。1950年代のある日、ヴェネツィアで彼に会った。私は笑って言った。
 「ぼくが生まれた年に(ケージは1912年生まれ)、あなたはすでに、今ぼくがやっていることをやっていました――チャンス・オペレーションをね」
 デュシャンは微笑んで言った。
 「わたしは時代を五十年は先取りしていたはずなんだがね」」
(「ジェイムズ・ジョイス、マルセル・デュシャン、エリック・サティ: アルファベット」序文より)


ところで、本書の表紙の「X」の文字の下に、長方形のシール剥がし跡みたいなのが二つ並んで印刷されています。これは何なのかと疑問に思っていたら、初版のカバーデザイン(下の画像)を単色にして使い回したせいでこうなってしまったようです。


john cage x 1st ed















































































関連記事
スポンサーサイト
プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

最近の記事
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
フリーエリア
netakiri nekotaroの最近読んだ本