パティ・スミス 『バベル』 山形浩生・中上哲夫・梅沢葉子 訳

「からだ
果てしない砂丘
輝く岩塩」

(パティ・スミス 「復活祭」 より)


パティ・スミス 
『バベル』

山形浩生・中上哲夫・梅沢葉子 訳

思潮社 
1994年1月15日 発行
318p 巻末図版(モノクロ)2葉 
四六判 並装 カバー 
定価2,600円(本体2,524円)
装訂: 芦澤泰偉



パティ・スミスの詩集『バベル』(1978年)の日本語版です。歌詞集ではないです。
著者による序文(1991年)付。巻末に原文(原書第2刷の影印の縮刷)が掲載されています。
本文中図版(モノクロ)多数。


パティスミス バベル 01


帯文:

「この本を末来に
捧げます
――パティ・スミス

幻の詩集ついに本邦刊行!
パティからの日本版への
特別メッセージ入り。原文つき。

比類なき声と詞で人々を戦慄させ、熱狂させ、人々の人生に刻印を残してきた、
パンクそしてロックの伝説パティ・スミスの詩集!
これは、ブレイク、ボードレール、ランボー、ジュネ、バロウズetc多くの文学を呼吸してきた、
パティ自身の声、パティの鼓動、パティの創る神話である。

*パティの声のように情感あふれる中上訳、ヴィジュアルな梅沢訳、原文の言葉遊びを日本語で再現する山形訳、どこからでもお好きな作品からお読み下さい。」



帯背:

「ロックの神話
パティの文学」



パティスミス バベル 03


目次:

序文(日本版へのパティ・スミスからのメッセージ) [山形浩生訳]

Ⅰ ラジオ・エチオピア [山形浩生訳]
 通告
 イタリア(ラウンド)
 樹液採集者の抽出物
 グラント
 死んだランボー
 ソール
 新少年
 犬の夢
 ランボオの夢
 ドクター愛

Ⅱ 異邦人には異邦人 [中上哲夫訳]
 ミュンヒェン
 反抗でハイになって
 不思議ね
 レイプ
 スペース・モンキー

Ⅲ シスター・モルヒネ [中上哲夫訳]
 通告2
 ジュディス
 ジョージア・オキーフ
 得体の知れない火
 イーディ・セジウィック
 マリアンヌ・フェイスフル
 シスター・モルヒネ

Ⅳ パイプ・ドリーム [梅沢葉子訳]
 パン
 本物の森
 草むら
 スカンクドッグの世にも不思議な物語
 はぐれ三太夫
 コンテ
 鳥のサバ(復讐)

Ⅴ モハメディア [山形浩生訳]
 アルジェからきた羊飼い女
 ロベール・ブレッソン
 カーニバル! カーニバル!
 k.o.d.a.k
 気狂いフワナ
 ロック救済

Ⅵ 飛行機の死骸 [山形浩生訳]
 飛行機の死骸
 ジャンヌ・ダルク
 ジェニー
 健康灯
 賛歌
 鹿の編隊
 復活祭

Ⅶ バベル [山形浩生訳]
 バベル
 コミック戦士
 バベローグ
 幽谷
 バベルの戦場
 ツーク島

訳者あとがき (中上哲夫/梅沢葉子)
英語版原文
略歴



パティスミス バベル 02



◆本書より◆


「ジョージア・オキーフ georgia o'keefe」:

「great lady painter
what she do now
she goes out with a stick
and kills snakes

georgia o'keefe
all life still
cow skull
bull skull
no bull shit
pyrite pyrite
shes no fool
started out pretty
pretty pretty girl

georgia o'keefe
until she had her fill
painted desert
flower cactus
hawk and head mule
choral water color
red coral reef
been around forever
georgia o'keefe

great lady painter
what she do now
go and beat the desert
stir dust bowl
go and beat the desert
snake skin skull
go and beat the desert
all lilfe still」

「偉大な女性画家の
彼女がいましていること
彼女はステッキを手に散歩に出ては
蛇を殺すのだ
 
ジョージア・オキーフ
静かな全生涯
牝牛の頭蓋骨
雄牛の頭蓋骨
牛の糞は見当たらない
黄鉄鉱、黄鉄鉱
彼女はばかではない
人生を始めた、美しい
美しい、美しい少女として
 
ジョージア・オキーフ
心ゆくまで
砂漠を描いた
花サボテンを
鷲とラバを
賛美歌(コーラル)のような水彩画
赤い珊瑚礁(レッド コーラル・リーフ)
たえず歩き回ってきた
ジョージア・オキーフ
 
偉大な女性画家の
彼女がいましていること
砂漠に出かけていって歩き回る
埃の鉢をかき回す
砂漠に出かけていって歩き回る
蛇の皮(スネーク スキン)、頭蓋骨(スカル)
砂漠に出かけていって歩き回る
静かな全生涯」



「シスター・モルヒネ sister morphine」より:

「one must return and retain the power of concentration. in order to reclaim the known and savored system of discipline one must focus. where there is no energy there is carcass. pure waste. nothing exists, it's a stretch of meat. the music on the radio sucks and is pulling me down through the carpet. i got to get up and put a record on but its so fucking hard to move. i do it. i like this record marianne faithfull. she sings sister marshall. once, a long time ago, i checked into the alton house with my friend, in pain. his nerve was exposed and he laid for several days on the bumpy rusting cot draining and weeping. from the room next to ours came the moans of a willow bending in rhythum to the watershed of my friend. one night, in desperation, ia called on the voice. i had never seen him but i had slept on the fire escape breathing through the morning in term with his wailing, his tolling, his haunting songs of wind.」

「ひとはもどって集中力を取りもどさなければならない。訓練という周知の味わい深いシステムを取り返すためには集中しなければならない。エネルギーのない場所にあるのは屍だ。まったくの徒労だ。そこにはなにもない。単なる肉のひろがりだ。ラジオの音楽は吸い込みカーペットじゅうわたしを押し倒している始末だ。わたしは起き上がってレコードをかけなければならなかったのだけど体を動かすのがくそつらかった。わたしはそれを行なう。わたしはこのレコード、マリアンヌ・フェイスフルが好きなのだ。彼女はシスター・マーシャルを歌う。かつて、ずうっと昔、わたしは怪我をした友だちとオールトン・ハウスに泊った。神経が露出していて彼はがたがたの錆びた折りたたみベッドに数日間血と涙を流しながら横になっていた。わたしたちの部屋の隣室から友だちの生死の分岐点にリズムを合わせて身をよじる柳の木のうめき声が聞こえてきた。ある夜、絶望的になって、わたしはその声の主を尋ねた。それまで彼を一度も見たことがなかったがわたしは彼が泣き叫びうめき風の悩ましい歌に合わせて呼吸しながら午前中ずうっと非常階段で寝た。」



「ロベール・ブレッソン robert bresson」より:

「i awoke w/new strength.
les enfants terribles was on the screen. since my illness i have installed in my sight a small screen and projection booth. there are three films running continuously - terrible children, mademoiselle and thomas the imposter. all blonde films. for awhile there was only one film - au hazard balthazar. i saw it several hundred times under mild sedation. for a time my mind was a notebook of stills, annotations and the art of this century.

specific, black and white. the enamel on canvas of pollock. we are all children of jackson pollock. we are all chaotic mutants - an extension of his action. from his mad wrist spun us. just as we manifested our own assault upon hymn via the vocal chords and kind of little richard and james brown or mick jagger.」

「新たな力強さとともに目覚める。
恐るべき子供たちがスクリーンにかかっている。病気になって以来、わたしは視界に小さなスクリーンと映写室を設置した。三本の映画が繰り返しかかっている――恐るべき子供たち、マドモワゼル、山師トマ。みんなブロンドの映画。しばらくは一本しか映画がなかった。バルタザールどこへ行く、だ。少し鎮静剤を飲まされて何百回となくこの映画を見た。一時、わたしの精神は、スチールや注釈と、今世紀の芸術のノートと化していた。

鮮明な、黒と白。ポロックのカンバスのエナメル。わたしたちはみなジャクソン・ポロックの子供だ。みんな混沌としたミュータント――かれのアクションの延長なのだ。かれの狂った手首からわたしたちが紡がれた。ちょうどわたしたちがリトル・リチャードやジェイムズ・ブラウンやミック・ジャガーの声帯なんかを経由して、自分自身の賛歌への突撃を主張したように。」

「there is oil on the road.
this oil is the cause of the car going out of control.
what we want to find out is who put the oil there
and what the motive was.」

「道にオイルが
このオイルのせいで車は制御がきかなくなった
知りたいのはだれがこのオイルをそこにまいたか
そしてその動機。」

「who put this oil here?
i did.
motive
art.
who was your teacher?
robert bresson」

「ここにオイルをまいたのは?
わたしだ。
動機
芸術。
おまえの教師は?
ロベール・ブレッソン」



「鹿の編隊 a fleet of deer」より:

「but what is one rebelled? one jagged edge pulling itself from the mire of melody up into the tube and choosing to scrape and puncture the open eye of a predictable merger. what if one refused and another and still another one until we all came to grips with this wonder of true love? of rock and roll? there is nothing but dream. nothing save the real truce with light. the flash and flood light on the root of the true interior. life is a dream? life is life. dream on the other hand is somewhere else. the state of purity on which we have once collided.」

「でも、もし反抗したら? ぎざぎざのかけらが調和のぬかるみから身をひきはがして、管のなかへと駆けのぼり、期待される合併者の開いた目を引っかき貫こうとする。もし一人が拒んでまた一人拒んでさらに一人拒んで、やがてわたしたち全員がこの真実の愛の不思議と取り組むようになったら? ロックの不思議と取り組むようになったら? 夢しかない。光との真の休戦以外は。真の内面の根元に閃光と光の洪水。人生は夢? 人生は人生。夢は一方でどこかほかにある。かつてわたしたちが遭遇した純粋な状態。」

「i am reckless. i never do anything according to the rules. there is a kink in me as regulated as the clock on the stove.」

「わたしは無謀だ。規則通りにはけっしてやらない。わたしには、暖炉の上の時計みたいに規則正しい気まぐれがある。」



「序文(日本版へのパティ・スミスからのメッセージ)」より:

「One must take in account that these writings grew from the climate of the seventies. And the fields we ran thru, in art and dream, were free of guilt and suffering. May you enter these fields in the same spirit. In art and dream may you proceed with abandon. And may you proceed in life with the clarity and courage of a soldier crossing a mine field, with balance and care. For nothing is more precious than the life force and may the love of that force guide you as you go.」

「この作品が、七〇年代という情勢下で生まれたことは考慮する必要があります。わたしたちがアートと夢において駆け抜けた戦場は、罪悪感や苦悶とは無縁のものでした。あなたも、同じ精神をもってこの戦場に足を踏みいれてくれますように。アートと夢において、献身とともに進んでくれますように。そして生においても、地雷原を横切る兵士の明晰さと勇気をもって、バランスをとりつつ慎重に進まれますように。生命力より貴重なものなどないのですから。そして進むあなたを、その生命力への愛が導いてくれますように」





こちらもご参照ください:

Robert Bresson 『Notes on the Cinematograph』 tr. by Jonathan Griffin























































































関連記事
スポンサーサイト
プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

最近の記事
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
フリーエリア
netakiri nekotaroの最近読んだ本