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石原吉郎 『足利』

「ある日のうつくしさをそのままに
ちがう入口を通るなら
それが礼節ということだ」

(石原吉郎 「うつくしい日に」 より)


石原吉郎 
『足利』


花神社 
1977年12月1日 初版第1刷
93p 石原吉郎著書目録1p 
A5判 
丸背布装上製本 機械函 
定価1,600円
装画: 新井豊美



著者は1977年11月14日逝去。本書収録作品は1975年から1977年にかけて発表されたものです。翌1978年2月には思潮社より、本書とほぼ同時期の作品からなる遺稿詩集『満月をしも』が刊行されています。


石原吉郎 足利 01


目次:

足利
私の自由において

完全な廃墟
はじまる
死者の理由
訂正
あおざめる
こはぜ
その折
目じるし
入水
北鎌倉壽福寺

レストランの片隅で
恐怖
生きなさい
風と花

一期
潮が引くように
相対
亀裂
黄金分割
航海
無辜
不幸

黒門町
切れ目
日没
うつくしい日に
野いちご
輪郭
書く
あなたがねむるとき
風景

ちがう
詩人

初出一覧



石原吉郎 足利 02


「打ちあげて華麗なものの降(くだ)りつぐ」



◆本書より◆


「足利」:
 
「 足利の里をよぎり いちまいの傘が空をわ
たった 渡るべくもなく空の紺青を渡り 会
釈のような影をまるく地へおとした ひとび
とはかたみに足をとどめ 大路の土がそのひ
とところだけ まるく濡れて行くさまを ひ
っそりとながめつづけた」

 
 
「はじまる」:
 
「重大なものが終るとき
さらに重大なものが
はじまることに
私はほとんどうかつであった
生の終りがそのままに
死のはじまりであることに
死もまた持続する
過程であることに
死もまた
末来をもつことに」

 
 
「こはぜ」:
 
「ひっそりと白く
両手を重ねただけなのに
殺意と見たてて
柄(つか)をひきよせたが
下(さ)げ緒をたぐる
気配をみてとって
相手はひっそりと
のみ終えた茶器へ
足袋のこはぜを
おとして立った」

 
 
「入水(じゅすい)」:
 
「水に入(はい)るひとの決意を
想ってもみただろうか
くるぶしから 腰へ
腰から胸元へと
ひたして行く水の
ひっそりとした気配を
それは決意の持続ではない
決意そのものの
茫然たる手放しでもあったはずだ
決意をさらに呼ぶはずの
決意は
そのままひっそりと
水底(みなそこ)へ沈みおちた」

 
 
「レストランの片隅で」:
 
「つらい食事もしたし
うっとりと食事も終えた
おなじ片隅で
ひっそりと今日も
食事をとる
生き死にのその
証しのような
もう生きなくても
すむような」

 
 
「恐怖」:
 
「まぎれもなく健康であることは
たぶん巨きな恐怖だから
きみはなるべく
病気でいるがいい
ドアが正常に開き
通行を保障されるのは
たぶん巨きな恐怖だから
きみはすみやかに
拘禁さるべきだ
二人の男が向きあって
なにごともなく
対話がつづくのは
たぶん巨きな恐怖だから
一人は 即座に
射殺せねばならぬ」

 
 
「一期(いちご)」:
 
「一期にして
ついに会わず
膝を置き
手を置き
目礼して ついに
会わざるもの」

 
 
「相対(あいたい)」:
 
「おのおのうなずきあった
それぞれのひだりへ
切先を押しあてた
おんなの胸は厚く
おとこは早く果てた
その手をとっておんなは
一と刻(とき)あとに刺したがえた
ひと刻の そのすれちがいが
そのままに
双つの世界へふたりを向かわせた」

 
 
「亀裂」:
 
「北の大路の
いちずなやすらぎを
かきのけるようにして
ものの気配が
一文字にはしりぬけた
馬背の物の怪(け)が
一気にはしりぬけた
物の怪ばかりが
一気にかけぬけた
事が起るということへ
一途に賭けた
足うらばかりが見える下を
かならず起るといいたげにして
ひとすじの亀裂が
さらにかけぬけた」













































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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Away with the Fairies

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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