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西脇順三郎 『宝石の眠り』

「白い雲がうつむいている」
(西脇順三郎 「すもも」 より)


西脇順三郎 
『詩集 宝石の眠り』


花曜社 
昭和54年11月30日 発行
102p 口絵(カラー)i 
四六判 角背布装上製本 貼函 
定価2,700円
装幀: 吉岡実

「本詩集は、昭和三十八年筑摩書房版『西脇順三郎全詩集』に収められたものを底本としました。
 単行本としては最初のものです。」



西脇順三郎 宝石の眠り 01


帯文:
 
「諧謔と幽玄の極致

永遠の
果てしない野に
夢みる
睡蓮よ
現在に
めざめるな
宝石の限りない
眠りのように
(「宝石の眠り」)

未刊詩集
十八篇収録」



西脇順三郎 宝石の眠り 03


帯背:

「未刊詩集」


西脇順三郎 宝石の眠り 02


函裏。


西脇順三郎 宝石の眠り 04


本体表紙。草花のイラストは金箔押し。


西脇順三郎 宝石の眠り 08


見返し。


西脇順三郎 宝石の眠り 05


目次:

コップの黄昏
イタリア
イタリア紀行
ローマの休日
写真
くるみの木

きこり
茄子

まさかり
記憶のために
すもも
エピック
崖の午後
バーの瞑想
雲のふるさと
宝石の眠り



西脇順三郎 宝石の眠り 06

口絵「サン・マルコの朝」(西脇順三郎 画)。



◆本書より◆


「コップの黄昏」より:

「秋が来ればまた
どんぐりにうつる
恋人の顔が長くなる
モヂリアーニーの女のように
永遠も細長くのびてくる
またサイカチの実が食べたくなる
あの深川のおねいさんは小さい鏡を出して
あの湿地と葦もなくなつたことを
紅をつけながら嘆いている
人間はトカゲに近づいてくる
女神はやせて貝殻になる」



「イタリア紀行」:

「疲れた若い
労働者の夫婦が
窓のところへ椅子を
引き寄せて
トスカーナの野に沈む
太陽を
淋しそうに
見ていた

鉄道線路の近くに
ニレの樹の下に
薮の上を這つて
モメンヅルの花が
白く咲いていた

フィレンツェで
蘆笛をふいている
やせたパンの男根の神を
くず鉄で作つた
人形と
紺色の蔓草を描いた
灰皿と
ウフィツィーのヴィーナスの
スライドと
海水浴へ行くのに
都合のよい
藁で作つた
籠を
買つた

突然
真夏が
フィオゾレの山々へやつて来た
うす水色のドレスを着た
サランドラ夫人は
すり鉢のような
麦藁帽子を
買つた」



「ローマの休日」より:

「マッチがないが
太陽のちぢれ毛の先で
シガレットがつけられる」

「踵の感覚は
材木から大理石へ変化した
ニイチェのように眠られない
眠ることは芸術だ
芥子粒は魔術だ」

「眠られない旅人は
「悲劇の誕生」だ
人間を自由にさせても
また新しい不幸が
人間の眼を灰色に光らせる
眠られない旅人は
ねむの木のように
夜明けを恐れる」



「写真」より:

「天はトンボのようにかたむいた
記憶は無限へそれた」



「きこり」より:

「だがなすが嫌いな
さらしやの女房に
なす売りの女が叫んでいる
「あんたの家はなすが嫌いだつて
じや何を食つているんだんべ」」



「茄子」:

「私の道は九月の正午
紫の畑につきた
人間の生涯は
茄子のふくらみに写つている
すべての変化は
茄子から茄子へ移るだけだ
空間も時間もすべて
茄子の上に白く写るだけだ
アポロンよ
ネムノキよ
人糞よ
われわれの神話は
茄子の皮の上を
横切る神々の
笑いだ」



「すもも」より:

「永遠の無量は
女神の煙突のように
私の脳髄の中につき出ている
この障害のために
私は何も思われないのだ
河原で自然の女神の泉の
音を聞いた
土手の上を歩いて
記憶の汁をしやぶつて
過去は
くるみの実のように
青い渋い皮を被つて
白いすももの夢だ」



「エピック」より:

「外界と内界が
せせらぎの渦巻のように
混合する
やがてそれがかたまつて
アメスィストのように光る
その宝石で舌が切れるまで
それをなめながら
この重い光明と暗黒の世界を
担いで歩く
人間が考えられない
オブジェを発見するのだ」

「もめんづるのからむ
藪の路を
青ざめた人間が
通る
人間は果しないものへ
流れて
行く」


「崖の午後」より:

「このテーブルの木の中に
樵夫の夢がさまよう
この宝石のカフスの中に
神々が茶をすする音がきこえる」

「今日もまた
悲しまなければならない
今日もまた
見えなければならない
きこえなければならない」



「宝石の眠り」:

「永遠の
果てしない野に
夢みる
睡蓮よ
現在に
めざめるな
宝石の限りない
眠りのように」




西脇順三郎 宝石の眠り 07



こちらもご参照下さい:

葛原妙子 第四歌集 『薔薇窓』




















































































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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

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好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

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すきなことば: 「だれもいない」「ギブアウェイ」「ウポポイ」「隠密」
きらいなことば: 「人と人とのつながり」「キャリアアップ」「ほぼほぼ」「三密」

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歴史における自閉症の役割。

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