加藤郁乎 『エトセトラ』

「人間が人間に三行半を突きつけたことはごまんとあっても、にっこりしながら人間離れしていったケースはそうざらにありませんね。」
(加藤郁乎 『エトセトラ』 より)


加藤郁乎 
『エトセトラ』


薔薇十字社 
1973年1月29日 初版発行
237p 後書3p 
A5判 角背紙装上製本 貼函 
定価1,600円
装幀: 斎藤和雄



「後書」より:

「この小説は「海」の昭和四十六年七月号、十二月号、四十七年の六月号に発表された。」


加藤郁乎 エトセトラ 01


加藤郁乎 エトセトラ 02


目次:

エトセトラ
 1
 2
 3

後書



加藤郁乎 エトセトラ 04



◆本書より◆

 
「あらゆる日々のなかで最も無駄になった日は、
われわれが笑うことのなかった日である。
          シャンフォール」



「現実に先立ってゆく思い出のなかを、尾を頭にして進む渡り鳥のひと群れが眺められた。彼女たちは明らかに末来方向から立ち戻ってきて、いま、過去的現在の罠の方へ逆進化しつつあるのだ。そして、はるかな連峰の果てに沈んだ筈の太陽がまたしても姿を現わしてきて、あたり一帯を芝居気たっぷりな明るさのアンコールで湧き返らそうと企んでいる。この土地では太陽でさえもが素直に沈み兼ねて、万物流転の約束をおもちゃ扱いにしているのだった。未練がましく、しかも魅力たっぷりに追いかけてきながら別れを呪う地平線を振り切ろうとして、私はコンパートメントの窓の覆いを下ろした。ひとつの晴れがましい表面との境界が断ち切られたと思ったのも束の間、私のなかで新たな思い出を横切ろうとするエディプスが見えない眼をさましたのだった。そのとき、汽車はかなりな勾配の坂道を登りはじめていたらしく、私はといえば、女たちの背中のような勾配を持った間道の方へくだっていったのである……
 物語向きの堂々めぐり的な語り手の私と、自己滅却的な読み手である私とがするりと入れ替ったりして、私という狂言廻しが曖昧な何者かになったりするのはままあることだが、できることなら、私と前後する私に一向に無関心な世界の原っぱはないものだろうかと思いながら、眠りに落ちた。」



加藤郁乎 エトセトラ 03






















































関連記事
スポンサーサイト
プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

最近の記事
カテゴリー
ブログ内検索
リンク
フリーエリア
netakiri nekotaroの最近読んだ本