アンリ・ミショー 『みじめな奇蹟』 (小海永二 訳)

「突然、一本のナイフが、突然千のナイフが、稲妻を嵌めこみ光線を閃めかせた千の大鎌、いくつかの森を一気に全部刈りとれるほどに巨大な大鎌が、恐ろしい勢いで、驚くべきスピードで、空間を上から下まで切断しに飛びこんでくる。」
(アンリ・ミショー 『みじめな奇蹟』 より)


アンリ・ミショー 
『みじめな奇蹟』
小海永二 訳


国文社 
1969年5月20日 初版第1刷
1976年3月15日 第3刷
242p 
A5判 角背クロス装上製本 貼函 
定価1,600円
装幀: 蛭間重夫



本書「訳者あとがき」より:

「本書は Henri Michaux 『Misérable Miracle』(Edition du Rocher, Monaco, 1956)の全訳であり、ミショーのメスカリンの記録の最初の日本語訳である。」
 

本文中図版(ミショーによるデッサン)49点。


ミショー みじめな奇蹟 01


目次:

第一章 序文
第二章 メスカリンとともに
第三章 メスカリンの諸特徴
第四章 インド大麻(たいま)――二つの幻覚因子間の比較に役立たせるためのノート
第五章 精神分裂病の実験
反省的考察
後記

訳者あとがき



ミショー みじめな奇蹟 02



◆本書より◆


「第二章 メスカリンとともに」より:

「突然、だが、先駆者としての一つのことば、伝令としての一つのことば、人間に先んじて地震を感じる猿のように、行為に先んじて警報を受けとるわたしの言語中枢から、発せられた一つのことば、《眩しく目をくらませる》ということばにすぐ続いて、突然、一本のナイフが、突然千のナイフが、稲妻を嵌めこみ光線を閃めかせた千の大鎌、いくつかの森を一気に全部刈りとれるほどに巨大な大鎌が、恐ろしい勢いで、驚くべきスピードで、空間を上から下まで切断しに飛びこんでくる。わたしは内心ひそかに苦悩しながら、それらのナイフや大鎌と同じ速度の耐え難いスピードに自分を合わせ、益々激しくバラバラに裂け、解体し、狂気へと陥ってゆきながら、ある時はそれらナイフや大鎌と同じく途方もない高さにまで、それから忽ち、すぐ次の瞬間には、それらと同じく深海の深さにまで、ついてゆくことを強いられる……それにしても、一体これはいつ終わりになるのだろうか……それがいつかは終わりになるとして?
 終わった。遂に終わった。」

「それから《白色》が出現する。完全な白色だ。あらゆる白さという白さを超えた白色。白色の出現の何という白さ。白以外の色とは全く妥協の余地のない、白以外の色をいっさい排除し、完全に根こぎにした白色。興奮し、激昂し、白さで絶叫している白色だ。熱狂的で、猛り狂い、網膜を突き刺して、無数の穴をあける白色。残忍で、執念深く、人殺しの、電流のように素早い白色。白色の疾風のような白色。《白色》の神。否、神なんかじゃない。わめき立てる猿だ。(わたしの細胞が破壊せずにすめばよいのだが。)
 白色が停止する。わたしは、白色というものはわたしにとっては何かしら過激なものだという印象を、長いこと持ち続けるだろうと感じる。」



ミショー みじめな奇蹟 03




















































































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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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