野溝七生子 『眉輪』

「思ひ出といふものは、そのやうなものではなくって? その中では、いつも私達は子供でゐるんですもの。」
(野溝七生子 『眉輪』 より)


野溝七生子 
『眉輪』


展望社 
平成12年2月12日初版第1刷発行
333p 編集附記・著者紹介1p 
四六判 丸背布装上製本 貼函 
定価3,200円+税



本書「編集附記」:

「本書は、著者自筆の原稿に依り、表記は旧仮名遣、新字体とし、なおその際、明らかなる誤字の類は訂正した。」


野溝七生子 眉輪


帯文:

「起稿七十余年、著者畢生の歴史小説、待望の刊行」


「MARC」データベースより:

「仁徳天皇の皇子・大草香皇子の子、眉輪王を中心に、古代の人々が至上の愛の調べ、醜悪な欲望の不協和音、血なまぐさい殺戮、覚めることのない夢幻の世界を繰り広げる。大正14年に執筆された歴史長編を初の単行本化。」


目次:
 
眉輪
 序の詞
 押木之玉縵
 邂逅。別れ
 ちまたの塵
 朝倉の宮
 葛城、日下
 石上にて
 廃墟
 地軸に触った手――異説ハムレツト――
 はらから
 あらし
 百尺の塵
 帰去来
 銘
 蚊屋野
 こしかた

奇蹟の書「眉輪」 (久世光彦)




◆本書より◆

「もう、さうなのだ。みどりの揺籃の中からすでにその額には、凶悪な宿世の星の光芒凄じく、きらきらと象嵌されてゐたのだ。今生のこの王の子は先の世如何なる者なりし。この者が時代の覇者となれば、彼の天才はその一世を黒雲の暗黒に蔽ってしまふであらう。――作者はここではこの天才といふ言葉を Genie の意語と解する、天資、稟質、性格などといふ――
私の友よ、わが竪琴に聴くか、これは千古の伝説に残る私達の遠い祖先の物語。」




◆感想◆

本書は、古事記にでてくる目弱王(まよわおう)の記述をもとに、ラファエル前派あるいはベルギー象徴派ふうの歴史絵巻に仕立て上げています。「眉輪」というのは日本書紀の表記ですが、たぶんそっちのほうがかっこいいから「眉輪」にしたのでしょうが、「目弱」という名前は、生きたまま穴に埋められた白日子王の目玉が飛び出したというエピソードや、目弱王をかくまった「ツブラオミ」の名前とも微妙に交感しあっていて説話的には捨てがたいです。本書は格調高い悲劇ですが、しかしわたしとしてはチュツオーラやマルケスのような魔術的リアリズムで小説化してほしいところです。



こちらもご参照下さい:

西郷信綱 『古事記注釈 第四巻』








































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