Virginia Woolf / Edward Gorey 『Freshwater』

「Facts? Damn facts. Facts are the death of poetry.」
「Damn facts. That is what I have always said. Plato has said it. Radakrishna has said it. Spinoza has said it. Confucius has said it.」

Virginia Woolf "Freshwater"


Virginia Woolf
『Freshwater, a Comedy』
Drawings by Edward Gorey

Edited with a Preface by Lucio P. Ruotolo

Harvest Books/Harcourt, Inc. 1985
ix, 86pp, 21.7x14cm, paperback



ヴァージニア・ウルフ(1882-1941)唯一の戯曲『フレッシュウォーター』(喜劇)の、エドワード・ゴーリーによる挿絵入り版。ゴーリーは表紙と扉絵、本文イラスト、計14点を描いています。
戯曲「フレッシュウォーター」は、ブルームズベリー・グループの集まりの出し物として1935年に上演されました。本書に図版が掲載されている作者自筆の配役表によると主演はヴァネッサ・ベル(ヴァージニアの姉)とレナード・ウルフ(ヴァージニアの夫)。補遺として1923年頃に書かれた初稿が収録されています。


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表紙。
詩人テニソンの膝にのるミューズに扮した女優エレン・テリーと、それを撮影する写真家ジュリア・マーガレット・キャメロン。
そしてコウモリ。


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扉ページ。


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イルカに要らなくなった結婚指輪を投げ与えるエレン・テリー。


本戯曲の主要な登場人物は英国ヴィクトリア朝の著名人たちで、写真家のジュリア・マーガレット・キャメロン、その夫で哲学者のチャールズ、女優のエレン・テリー、その夫で画家のジョージ・フレデリック・ワッツ、詩人のアルフレッド・テニソン、そしてヴィクトリア女王。「フレッシュウォーター」は地名で、テニソン、キャメロン夫妻の住居があったワイト島の海岸。作者のヴァージニア・ウルフはジュリア・マーガレット・キャメロンの姪の娘。
どの人物も戯画化して描かれていて、セリフにキーツの詩句(「美は真なり、真は美なり」)を紛れ込ませたり、テニソンが詩人ジョークを連発したり(お下劣ジョーク「Life is a dream」「Rather a wet one」もあります)、インテレクチュアルで軽妙な座興劇です。しかしながら、棺桶の話が出てきたり、主要プロットはエレン・テリーの浮気と駆け落ちなのですが、浮気現場を目撃したワッツが「(恋に)溺れたエレンは(自分にとって)死んだ(も同然だ)」と告げると、エレンが溺死したと早とちりしたテニソンがさっそく「溺死体で見つかった(found drowned)エレン・テリーに捧げるオード」を書いたりするのが、ちょっと気になります。本作上演から6年後の1941年4月、重篤な鬱状態だったヴァージニア・ウルフは、コートのポケットに石ころをたくさん詰めて川に入って、数週間後に溺死体で発見されているからです。


ブルームズベリー・グループについては、橋口稔『ブルームズベリー・グループ――ヴァネッサ、ヴァージニア姉妹とエリートたち』(中公新書、1989年)から引用しておきます:
 
「ブルームズベリー・グループというのは、二〇世紀の初頭に、ゴードン・スクエアを初めとして、この地区(ロンドン中心部のブルームズベリー地区)に住んで生活した、知識人たちの集まりである。それは(中略)自然発生的に生れた集まりであって、友情や愛情によって、少しずつグループを形づくるようになったものである。だいたい同じ年頃の、同じ階級、同じ階層の人たちの集まりであって、その特徴は、一言で言うならば、ある共通の生き方をしようとしたところにあったと言えよう。共通のものの考え方や感じ方をしたところに、グループをグループたらしめるものがあったということになる。」
「ここには、文学者と呼ばれるのがふさわしい人は三人か四人しかいない。画家がおり、美術評論家がおり、学者がおり、外交官がいた。この人たちを結びつけていたのは、まず第一に友情であり、さらに同性愛を含む恋愛感情であり、夫婦関係であり、親戚関係であった。(中略)クェンティン・ベルの本は、ブルームズベリー・グループが文学運動のためのものなどではなくて、一つの私的なグループであったことを、はっきり証言していた。」
「このグループのメンバーが所属していた階級は、イギリスの上流階級である、ジェントリー階級であった。(中略)かれらは、エリートだったのである。」
「かれらの生き方がどういうものであったかを簡単に説明することはむずかしいが、強いて手短かに言えば、自分たち自身の感情や思考を大切にして、それを頼りに、世間の批判を恐れずに、あくまで自分たちがよいと考える生き方をしようとした、というふうに言えよう。
 第一次世界大戦の時に、メンバーの多くが、良心にしたがって徴兵を忌避したのも、その生き方の表われの一つであった。
 既成の概念にとらわれずに、ものごとに対して、理性的に、ある場合には懐疑的に、またある場合にはシニカルに対応した。」



Virginia_Woolf_in_Dreadnought_Hoax (wikipedia)


ヴァージニア・ウルフも一枚噛んだ「ドレッドノート号事件」一行の写真。そのままゴーリーの絵本に出てきそうです。
「ドレッドノート号事件」は、ブルームズベリー・グループの一員であるエイドリアン・スティーヴンが、友人ホレス・コールと組んで、オペラの衣裳で仮装して「エチオピア皇帝一行」に成りすまし、海軍軍艦ドレッドノート号を「表敬訪問」した悪ふざけ(プラクティカル・ジョーク)事件です。


こちらもご参照下さい:

橋口稔 『ブルームズベリー・グループ』 (中公新書)
Graham Ovenden (Ed.) 『Pre-Raphaelite Photography』
ヴァージニア・ウルフ 『オーランドー』 (杉山洋子 訳)
































































































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