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P. F. Neumeyer (ed.)  『Floating Worlds: The Letters of Edward Gorey and Peter F. Neumeyer』

『Floating Worlds:
The Letters of Edward Gorey
and Peter F. Neumeyer』
Edited by Peter F. Neumeyer


Pomegranate Communications, Inc., 2011
256pp, 23x18cm, hardcover, dust jacket



「ドナルド」シリーズ絵本その他をエドワード・ゴーリーと共作したピーター・F・ニューメイヤーが編集した、ゴーリー/ニューメイヤー往復書簡集。二人が共作した三冊の絵本の成立事情などもわかって興味深いです。共作絵本についての意見交換、本や映画の話が中心になっていますが、ゴーリーの自作へのコメントや自己分析などもあって貴重です。

角背紙装上製本、カバー。本文中図版多数。


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教育関係の仕事をしていたニューメイヤーの家に教科書の打ち合わせで来た編集者が、ニューメイヤーが息子のために書いた手製の絵本を読んで興味を持ち、出版を計画してゴーリーに絵を依頼。ゴーリーは最初なかなか打ち解けなかったものの、ボルヘスの話などで意気投合し、一時は「君ほど私のことを理解している人はいない」「「ドナルド」シリーズをずっと続けたい」と言うほどニューメイヤーになついて、自身の全著作や自分が好きな本を山のように送りつけたりしたが、そのうち懐疑的(自分は相手に迷惑をかけているのではないか)になり、手紙を書けない(「コミュニケーション」ができない)罪悪感に苦しむようになり、生来の隠者(禅)モードに戻って、引きこもってしまいます(I am in one of my more extreme Japanese phases, and have given up thinking, acting, and having opinions.)。文通期間は1968年9月から1971年9月までですが、実質的には1969年10月までの丸一年ほど手紙のやりとりがあった後で自然消滅してしまったようです。

「手紙を書けないことへの罪悪感は日に日につのっていって、絶えずひっきりなしにそのことばかり思いわずらっている。僕の本来の状態であるコミュニケーション不能の麻痺状態がずっと続いているんだ。」
(1969年8月22日付ゴーリーの手紙より。ゴーリーからの返信が途絶えたことに不審を抱いたニューメイヤーの「自分が何か気に障るようなことをしたんだったら教えてくれ」という内容の手紙への返信。)


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タイトルの「Floating Worlds」は日本語の「浮世」の英訳です。本書収録書簡で、ゴーリーはひんぱんに日本文学(源氏物語、枕草子、平家物語、ノーベル賞を受賞した川端康成、等)や禅、易経や老子などの東洋思想に言及しています(※)。

※ニューメイヤーはゴーリーとの文通が短期間で終焉を迎えたことに関して、徒然草の第百三十一段を引用しつつ、理解を示しています。
「おのが分を知りて、及ばざる時は速かに止むを智といふべし。許さざらんは、人の誤りなり。分を知らずして強ひて励むは、おのれが誤りなり」。


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左はニューメイヤー家で子供たちと遊ぶゴーリー(中央)。右はニューメイヤーが描いた『Donald and the ...』のハエ。


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龍安寺の石庭は旅行嫌いのゴーリーが行ってみたいと思っていた数少ない場所の一つでした。


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本書にはゴーリーがニューメイヤー宛の手紙の封筒に描いたイラストがカラー図版で収録されているので、画集としても貴重であります。プライベートなものですが手を抜かずに絵本と同じクオリティで描き、彩色までしています。このへんにゴーリーの人づきあいにおける不器用さと誠実さがうかがわれるのではないでしょうか。


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『Donald Has a Difficulty』にも登場する謎の動物(本書カバーにも赤いマフラー姿で登場しています)。「ペット(the pet)」と呼ばれ、封筒アートにも頻繁に登場する「二人の文通のエンブレム的存在」(ニューメイヤー)でもある。
このイラストではたぶん「ヨリック」のしゃれこうべを前に物思いにふけるハムレットを演じているのだと思います。


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失語状態に陥ったゴーリーから送られて来たポストカード。本の引用文が書かれていたり、セロテープでヒモの切れ端を貼り付けただけのものもあったようです。「何か書くことを思いついたら書きます」と書かれているハガキもあります。

ゴーリーはニューメイヤー宛の手紙で「じぶんは本当は存在していないような気がする」と書いています。だから、自分が何か言って、そのことに対して誰かがまじめに返事をしたりすると動揺する、と。
やるべきことのリストを作るとしたら、まず「自殺」と書くとも言っています(もちろん冗談めかしてではありますが)。
ケヴィン・マクダーモット(Kevin McDermott) の『Elephant House』によると、晩年のゴーリーの家のソファ脇のテーブルには、ファンからの手紙を入れた箱がいくつか置かれていて、なかには開封されぬままのものも沢山あったようです。ゴーリーは手紙をくれたファンに送るために「You've written me to no avail, because I never read my mail(手紙をくれても無駄なこと、郵便物は読まぬから)」という詩の形のメッセージと絵(壺と猫)を印刷したハガキを作ったりしたようですが、それすら出すことは稀だった("However, even a postcard reply from Edward was rare.")とのことです。
アレクサンダー・セロー(Alexander Theroux)の『The Strange Case of Edward Gorey』によると、有名になって得たものは、送られてくる手紙に返事を書かないことへの罪悪感だ、と語っていたそうです。


Contents:

Acknowledgments
Introduction
Editorial Notes
the Letters
Epilogue
Index



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ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
 
うまれたときからひとでなし
なぜならわたしはねこだから
 
◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

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難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル、尾形亀之助、森田童子。

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