三木宮彦 『ベルイマンを読む』

「あらゆることが起こる。起こり得る。
時間も空間も存在せぬ。
浅薄な現実を土台にして、
空想が新しい模様をつむぎ出してゆく。」

(ストリンドベルイ 『夢の曲』)


三木宮彦 
『ベルイマンを読む』

Book Cinémathèque 8

フィルムアート社 
1986年3月3日第1刷発行
344p 
21.8×15.3cm 並装 カバー 
定価2,000円
ブック・デザイン: 中垣信夫・早瀬芳文
編集: 成瀬輝美



『人間の精神の冬を視つめる人――ベルイマンを読む』。
イングマール・ベルイマン(Ernst Ingmar Bergman)の全映画のデータ、ストーリー、解説等を収録した便利な本です。


ベルイマンを読む 01


カバー文:

「人間の精神の冬を視つめる人
スウェーデン、フォール島に孤立して
降誕した神々の病をいやす人
やがて、夏の夜が微笑むとき
罪の叫びと愛欲のささやきに耳を傾け
崩壊する形而上の深くへ
物を言わぬカメラを向ける人
ベルイマンを読む」



目次:

謝辞
まえがき

パズルの世界 Ingmar Bergman biography

イングマール・ベルイマン全映画 1944-1985
 危機
 われらの恋に雨が降る
 インド行きの船
 闇の中の音楽
 愛欲の港
 牢獄
 渇望
 歓喜に向って
 それはここでは起こらない
 夏の遊び
 女たちの期待
 不良少女モニカ
 道化師の夜
 愛のレッスン
 女たちの夢
 夏の夜は三たび微笑む
 第七の封印
 野いちご
 女はそれを待っている
 魔術師
 処女の泉
 悪魔の眼
 鏡の中にある如く
 冬の光
 沈黙
 この女たちのすべてを語らないために
 ペルソナ
 ダニエル
 狼の時刻
 恥
 夜の儀式 (テレビ作品)
 情熱
 フォール島の記録I (テレビ作品)
 ザ・タッチ
 叫びとささやき
 ある結婚の風景
 魔笛
 鏡の中の女
 蛇の卵
 秋のソナタ
 フォール島の記録II
 操り人形の人生から
 ファニーとアレクサンデル
 リハーサルの後で (テレビ作品)
脚本のみの作品
 もだえ
 顔のない女
 エヴァ
 都会が眠る時
 離婚
 最後のカップル外へ
 快楽の園

ベルイマン・イコノロジー
 夢
 北欧
 時計
 神
 愛
 言霊

演劇人としてのベルイマン

Data
 ベルイマンの戯曲
 おもなベルイマン演出演劇作品
 《ベルイマン一家》の人たち
  ●俳優たち
  ●カメラマンたち
  ●音楽家たち
  ●美術・衣裳家たち
  ●製作者および監督たち

ベルイマン関係資料案内
 北欧史
 スウェーデン映画総記
 スウェーデン映画史
 スウェーデン演劇史
 ベルイマン関係文献

人名索引



ベルイマンを読む 02



◆本書より◆


「第七の封印」より:

「ベルイマンの《これ一本》と言えば、これか『野いちご』を挙げる人が多いだろう。とにかく、彼の代表作の一つであるだけでなく、世界映画史上でもっとも異色の存在であることは疑いがあるまい。
 ベルイマンの父はストックホルムの上級聖職者で、いくつかの教会を管理する地位にあった。父が教区を巡回する時、幼いベルイマンもたいていつれて行かれて途中で花や星の名を教わった。だが、いちばん印象に残ったのは、古い教会の壁に描かれた素朴な壁画だった。この映画の中のモティーフの多く――例えば《死神とチェスをする男》や《自分が登っている木を死神に切り倒される男》などのいくつもの作例は、そうした時に見て忘れられなかったものである。それらは、今でも各地の教会で見ることができる。スウェーデンは、ドイツや東欧ともつながりが深いこうした民衆芸術の宝庫である。」

「★再現――騎士「懺悔をしたいのです。しかし私の心は空しい」格子窓に手をかけて、苦悩の表情で語りだす。騎士「私の心をうつす鏡には、空虚しか映りません。自分の姿をみると恐怖と嫌悪におそわれます。……私は仲間たちにかかわりあいをもたず、孤独に生きてきました。今はまったく妖怪の世界に住んでいます。夢と幻の中に閉じこめられているのです……」死神「それでもお前は死を避けているではないか」騎士「はい、避けています」死神「お前は何を求めているのだ」騎士「私は知識がほしいのです」死神「保証がほしいのだな」騎士「何とお呼びになろうとかまいません」騎士、うずくまる。格子の奥の死神。見下ろすキリスト像。騎士「人間の五官で神の存在を知ろうとすると、どうしてこのように難しいのでしょう。なぜ半分話しかけた約束や、目にみえぬ奇跡の中に身をおかくしになるのです。おのれを信じられぬ私たちの間で、どうしてお互いが信じあえるでしょう。信じることもできず、信じたいとも思わない人間はどうなるのです」死神、無言のまま格子の窓の手前で動かない。騎士「私は心の中にある神をなぜ斬り捨てることができないのでしょう。神を呪い心の中から追い出そうとしているのに、どうしていつまでも私を苦しめ辱しめながら、神は私の心のうちに残っているのでしょうか。どうして神は私にとってふりほどけない存在なのでしょう」死神「……」騎士「聴いておいでですか」死神「うん、聴いている」騎士「私は知識がほしい。誠意もいらない。想像もほしくない。ただ知識だけほしいのです。私に手をさしのべ、お姿を現わし、私に話しかけてくださる神様がほしいのです」死神「しかし、神は語らぬものだ」騎士「私は暗闇に向かって呼んでみるが何の返事もありません」死神「きっと誰もいないのであろう」騎士「それでは人生など馬鹿げたものではありませんか。すべてが無意味だと知りながら死神を道づれに生きていくなんてできません」死神「たいていの人間は死神や無意味には反応しないものだ」騎士「しかし、人間いつかは生の最期の瞬間に立って暗黒の世界に直面するものです」死神「そうだ、その時になれば……」騎士「わかります。恐怖におののきながらも心にえがくものがあります。それを私たちは神とよぶのです」」



「ベルイマン・イコノロジー 時計」より:

「ベルイマンがモティーフとしてさまざまな作品でくり返し使っているものは一つ一つ彼自身の幼少年期の思い出を代表する。」
「ベルイマンの場合、思い出と言っても単なる懐かしさではなく、心の傷に近いことが多い。」
「もっとも重要なのはなんと言っても《時計》である。時計の思い出は祖母アンナに結びつくもので、ウプサラ市ネードレ・スロッツガータンの彼女の住まいには、大小さまざまな時計がどの部屋にも必ず一つは置かれていた。その時計はキチンと時刻があっているのもいないのもあり、さまざまな音色で後から後からと鳴り立てるさまは、平凡な日常風景ではあるのだが、ふと気になり始めるとまるで夢魔の世界の現象のようにも思われるのだった。」
「もっとも印象的なのは『野いちご』の場合で、老医イーサクは冒頭の夢に針のない時計の看板を見るが、のちに老母の家で見せられたおもちゃ箱の中の懐中時計にも針がない。」
「奇妙なことに、ベルイマンの映画の中では時刻を知るために人が時計を見ることはほとんどないし、ドラマ上で時間や時刻が重要な機能を持つのは『狼の時刻』くらいなものである。(中略)時計そのものは画面に現われず、時を刻む秒音だけが効果音として使われている。」



ベルイマンを読む 03

「第七の封印」より。


ベルイマンを読む 04

「野いちご」より。



















































































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プロフィール

ひとでなしの猫

Author:ひとでなしの猫
ひ-2-改(ひとでなしの猫 2 改訂版)

◆「樽のなかのディオゲネス」から「ねこぢる」まで◆

難破した人々の為に。

分野: パタフィジック。

趣味: 図書館ごっこ。

好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

ハンス・アスペルガー・メモリアル・バーベキュー。

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