レーモン・ウルセル 『中世の巡礼者たち』 田辺保 訳

レーモン・ウルセル 
『中世の巡礼者たち
― 人と道と聖堂と』
田辺保 訳


みすず書房 
1987年11月10日 印刷
1987年11月20日 発行
iii 318p 別丁図版(モノクロ)32p 
四六判 丸背紙装上製本 カバー 
定価3,000円



本書「訳者あとがき」より:

「本書の底本となったのは、次の書物である。
 Raymond Oursel ; Pèlerins du Moyen Age, Les hommes, les chemins, les sanctuaires, Fayard (collection: Résurrection du passé), 1963 (réed. 1978).」



本文中地図5点。


ウルセル 中世の巡礼者たち 01


カバー裏文:

「「中世において、人はだれしも地上に流された異邦人であった。それはコスモポリタニスムともインターナショナリズムとも少しの関係もない。それは人間が自由に行動しうることを示す一つの形である」(森有正)
 中世の人びとはなぜ、どういう思いで巡礼の旅に出たのか。本書は、この地上において、もっとも純粋で無垢の在り方と生き方を、すなわち人間であることのあかしを体現しつくした「神の旅人たち」の真の姿を、文書や口伝えや土に刻まれた数々の証言を丹念にひろい集めながら、著者が自らの足で辿り、生々と再現したものである。聖地や聖人の史的由来にはじまり、出発から帰着までの実際の巡礼行の組織、巡礼者たちの日常の振舞い、かれらを動かし、日々の辛苦をたえさせてきた「意味」への問いがたずねられ、ついには、ある日、まさにこの路上を歩んでいた人びとの、よろこびと苦しみが、著者のたぐいなき共感能力によって汲みだされ、内的震えをこめた言葉を通じて伝えられる。野の道を一歩一歩たどる孤独な巡礼者、荒涼のオーブラック高原の霧の中に響く鐘の音、ようやく行きついた大聖堂の華やかな内陣の金色、香の雲の中にわきあがるホザンナの大合唱……この書の叙述を通じて感じとれる中世の巡礼者の純な心情は、著者ウルセルの奇跡的な想像力と文章の力によって、はるかな過去からよみがえった、ありのままの中世へのよき導きの書であり、独自のパースペクティヴからロマネスク世界に光明をあたえる書であろう。」



目次:

1 キリスト教における初期の巡礼
 キリスト教的巡礼のふたつの目的――聖地と神の証人たちの崇拝
 殉教者の血
 聖遺物の崇拝
 聖遺物の保存
 「巡礼路の教会」

2 中世における巡礼の社会的・宗教的状況
 ロマネスク文明の目ざめ
 中世人たちの感情の激しさ
 ロマネスクの時代からゴチック・フランボワイヤンの時代へ
 巡礼の誓い
 他のすべてにまさる名、エルサレム
 十字軍とその結果
 ローマへの巡礼
 コンポステーラの輝き
 使徒伝来のもの
 癒やしを与えてくれる人々
 聖ミカエル、高き所の大天使
 シャルトルと聖母マリアへの巡礼
 山岳巡礼の一例、ユテル
 ル・ピュイ

3 道
 巡礼者の衣裳と記章
 出発
 旅の霊性
 福者ポールの話
 宿泊地
 中世の道路事情
 通り越さねばならぬ地点、峠
 橋
 道路標識――十字架像
 十字架像
 休息地としての、コース上の大小の礼拝堂
 守護聖人たち、嘆きの聖母
 巡礼路の救護所
 グラン=サン=ベルナール救護所
 アスプの峠のサント=クリスティーヌ
 ロンスヴォー、名声を負った名
 オーブラック救護所
 巡礼路沿いの他の救護所
 聖アントニウス救護修道会
 サンティヤゴへの道で

4 巡礼者の祈りと振舞い
 聖人の足跡をしたって
 旅中での三つの儀式
 聖人たちの聖所へのささげ物
 聖フォワの尊厳像
 巡礼者のロザリオ
 モンジョワー
 売店と関連の商売
 記念の品、帆立て貝(聖ヤコブの貝)

5 荒々しくも力強い作品――『サンティヤゴ巡礼の案内』
 サンティヤゴ、使徒ヤコブのよき町
 ローマか、コンポステーラか
 聖ヤコブさまの伝説
 十二世紀の観光案内書なのか
 「フランス人の道」に沿って
 住民たち、土地のさま、見るべきもの
 聖なる遺体
 『サンティヤゴ巡礼の案内』の作者はだれか

6 『案内』と巡礼の組織
 スペインのキリスト教徒諸王と聖ヤコブの墓
 クリュニーがコンポステーラ巡礼を「作り出した」のか
 スペインにおける改革者、建設者としてのクリュニー
 クリュニーの友であり、後援者であったカスティーリアの諸王
 サンティヤゴ巡礼の協力者、また貢献者としてのクリュニー修道院

7 スペインとフランスの道
 『巡礼の案内』の示すコース……、その他のコース
 フランスの四つのルート、心おどらせる、壮大なまぼろし
 別なルート、連絡道
 ガスコーニュ、この密集地
 「すべての道は、サンティヤゴへ通じる」

8 詩的ともいうべき学説――「巡礼路の教会」について
 建築と詩
 コンク
 トゥルーズのサン=セルナン
 コンポステーラ大聖堂
 華麗な装飾計画
 消え失せたふたつの傑作
 トゥールのサン=マルタン
 列の先頭に立つのか
 ランスのサン=レミの場合
 反響と浸透

9 ロマネスク巡礼の他の聖堂
 「巡礼路の教会」、構造上の均整の問題
 オーヴェルニュの大教会
 オーヴェルニュ巡礼
 両側面階上廊を持つ、リムーザンの教会
 ヌヴェールのサン=テティエンヌとローヌ河畔のシャンパーニュ
 ル・ピュイのノートル・ダムとポワティエのサン=ティレール
 アキテーヌにおけるドームを並べた諸教会。ペリグーのサン=フロン
 ヴェズレーのマドレーヌ教会
 ヴェズレーの原型
 建設年代をめぐる論争
 サン=ジル=デュ=ガール
 ロマネスクの創造物の豊かさと自由と
 伝わる道のあったためか、人間関係によるのか

10 つねに巡礼者
 数字は何を語るか
 地にては旅人である神の国
 聖母マリアへの熱心な信仰の開花
 悔悛の道の果ての、マグダラのマリア
 十字架のもとで、聖人たちはこの世のために執り成しをする
 ブルターニュの巡礼
 ロレーヌの偉大な聖人ニコラ
 鉄の時代のための聖なる場所
 道の果てに

参考文献の概要

訳者あとがき



ウルセル 中世の巡礼者たち 02



◆本書より◆


「巡礼者の祈りと振舞い」より:

「巡礼者は、残る生涯の日々、(中略)心の奥深く、おのが霊的復活の日の朝の光の思い出を秘めて生きることとなる。そして「旅路をたどり終えた今、冷たい冬の寒さも、泥道のぬかるみも、嵐も、峠も、山のけもの道も、妖気のただよう峡谷も、はるか遠いものと」なったにせよ、心にははや、多少漠然とながら、ささやく声がある。おまえはこれから、親しい人々の中で余生を送ることになるのだが、おまえの魂に溢れている感動の数々は人々にはついに伝えきれぬものであり、おまえは、近親たちにとって異邦人、不在の者、この世では永遠に旅人のままであるだろうと。」




こちらもご参照ください:

渡邊昌美 『巡礼の道 ― 西南ヨーロッパの歴史景観』 (中公新書)












































































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