長谷川潔 『白昼に神を視る』  

「不意に、一本のある樹木が、燦然たる光を放って私に語りかけてきた。「ボン・ジュール!」と。」
(長谷川潔)


長谷川潔 
『白昼に神を視る』

長谷川仁・竹本忠雄・魚津章夫 共編

白水社 
昭和57年3月18日 発行
210p
24×18.4cm 並装(フランス表紙)
貼函 函カバー
定価4,500円



日夏耿之介『転身の頌』、堀口大学『月下の一群』などの装幀を手がけ、フランスで活躍した版画家、長谷川潔の文集です。
これは初版ですが、堀口大學宛の手紙やフランス人による長谷川潔論などを増補した新装改訂版も出ているようです。
本文中図版(モノクロ)多数。


長谷川潔 白昼に神を視る 01


目次 (初出):

I 断章、折りにふれて
 1~11 (『プリントアート』 24号 1976年4月 竹本忠雄編「私は白昼に神を視る」より)
 12~23 (新稿 竹本忠雄氏のノートより)
 24~28 (『同時代』 32号 1977年9月 齋藤磯雄「長谷川潔畫伯近況」より)
 29 (『日夏耿之介全集』 第一巻月報 齋藤磯雄「長谷川潔畫伯の裝畫」より)
 30 (関川左木夫氏宛1968年10月31日付書簡より)
 31~32 (1976年11月3日放送のNHKテレビ番組「スタジオ一〇二」の録音テープより)
 33~45 (『ヴィジョン』 1977年4月号)
 46~50 (『ヴィジョン』 1977年6月号)
 51 (『読売新聞』 1958年1月30日夕刊)
 52 (『春陽帖』 39号 1962年4月 「近年の自作」より)

II 芸術論
 ラウール・デュフィの追想 (『みづゑ』 1953年12月号)
 ドガのカルトン (『春陽帖』 31号 1954年4月)
 マダム オディロン・ルドン (『春陽帖』 33号 1956年4月)
 アンケートに答える
  1 (『視る』 65号 1972年10月 「ヨーロッパの日本作家」)
  2 (『プリントアート』 16号 1974年6月 「私にとっての創作版画運動」より)
 詩集『月に吠える』の装幀に就いて (『感情』 1917年5月号)
 自作について
  《萎れた草》 (前出 『同時代』 32号 1977年9月)
  《野辺小禽》 (前出 関川左木夫氏宛1968年10月31日付書簡より)
  《サイコロ独楽と幸福の星》 (前出 関川左木夫氏宛書簡より)
  《飼い馴らされた小鳥》(草花と種子) (齋藤磯雄 『ピモダン館』 1970年7月 廣濟堂出版)
  《小鳥と魚の友愛》 (前出 齋藤磯雄 『ピモダン館』)
  《コップに挿したアンコリの花》 (前出 関川左木夫氏宛書簡より)
  《時》 (『秀作美術』 26号 1969年7月)
  《草花とアカリョム》 (『秀作美術』 26号 1969年7月)
  仏訳『竹取物語』 (『こんな本あんな本』 阪急百貨店増築一周年記念特集所収)
 私の創作技法 (『版画芸術』 2号 1973年7月)

III 回想録 (竹本忠雄編著) (『秀作美術』 26号 1969年7月 『長谷川潔回想録(1)序章 渡仏するまで』)

IV 書簡・資料・後記
 (1) 巴里着後第一信 (弟・長谷川弘氏宛1919年8月25日付書簡)
 (2) サロン・ドートンヌ会員に選出された折の手紙 (伊東仙三郎・幸子(姉)夫妻宛1926年12月21日付書簡)
 (3) 日本版画協会巴里展回顧 (『Art et métiers graphiques』 40号 1934年3月)
 (4) 巴里に於ける日本現代版画展覧会経過報告書 (日本版画協会 1934年)
 (5) レジオン・ドヌール叙勲に際しての手紙 (伊東仙三郎氏宛1936年3月20日付書簡)
 (6) 巴里第一回国際版画会議報告および講演 (日本版画協会 1937年)
 (7) 巴里通信 (『春陽帖』 41号 1964年4月)

長谷川潔の芸術と運命 (竹本忠雄)
本書成立の経過 (魚津章夫)
あとがきにかえて (長谷川仁)

初出誌一覧
参考文献 (魚津章夫 編)
作品総目録 (魚津章夫 編)
略年譜 (魚津章夫 編)



長谷川潔 白昼に神を視る 02



◆本書より◆


「断章、折りにふれて」より:

「それは、今次対戦中のことだった。ある朝、私は、いつもとおなじように籠を手に、画題に使えるような、なにか変った草、石ころはないかと、パリの近郊に散歩に出た。戦争が始まっても帰国せずにフランスに留まったままの私は、そのためにひじょうなる物心両面の苦労を日々かさねていたころのことだった。そこで、その朝も、遠くの雲を眺めたりしながら、いつも通る道を歩いていったのだったが、不意に、一本のある樹木が、燦然たる光を放って私に語りかけてきた。「ボン・ジュール!」と。私も「ボン・ジュール!」と答えた。するとその樹が、じつにすばらしいものに見えてきたのである……
 いつも通る道の、いつも見る樹が、ある日ある時間、そのように語りかけてきたのだ。立ちどまって、私は、その樹をじっと見つめた。そして、よく見ると、その樹が人間の目鼻だちと同じように意味をもっていることに気づいた。土中の諸要素が、多少のちがいだけで、他と異なるそのような顔をつくりあげたものであろう。しかし、人間とは友であり、上でも下でもないこと、要するに万物はおなじだと、気づかされたのであった。
 ラジオの受信機にしても、出来の良し悪しはあろうとも、ともかく調節すれば音が聞こえてくる。それとおなじように、波長を合わせることによって聞こえてくる万物の声というものがあるのだ。
そのとき以来、私の絵は変った。」

「音楽も、詩も、なにもないところから「すばらしいもの」を引きだしてくる。私はこのごろでは「リズム」を重視し、これが詩と絵の基本であると考えている。どこを歩いてもこのリズムが感じられる。ではどこにそれがあるかというと、結局、物理学の問題になってくる。数学にあっては数の問題になってくる。神というと人はすぐ宗教の神を思うが、どんな言葉で言ってもいいのだ。」

「私のアトリエに掛けられた、ある風景画を見て、人は一種の奇異の念を持つらしい。ところが、どこからその不思議がくるかということには、ぜんぜん気づかない。この絵に描かれた、丘の上に立ちならぶたくさんの建物――そのなかにたった一つだけ、影が逆方向につけられているのだが……。そのことに気づいた人は、ただの一人しかいなかった。」

「若いとき自分が、なぜ、ムンクやルドンに惹かれたか、その理由が、このごろになって私にはようやく判ってきた。要するに神秘の感情を彼らは表現しようとしたのだが、しかし、神秘的光景を描くことによってそれを表現しようとした。これにたいして私の態度はこうなのだ――私は白昼に神を視る、と。」



長谷川潔 白昼に神を見る 03

「横顔」


長谷川潔 白昼に神を見る 04

「再生したる林檎樹」



こちらもご参照下さい:

『京都国立近代美術館所蔵 [長谷川潔作品集]』






































































































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難破した人々の為に。

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好物: 鉱物。スカシカシパン。タコノマクラ。

将来の夢: 石ころ。

尊敬する人物: ジョゼフ・メリック、ジョゼフ・コーネル。

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